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ショートショート6月〜3回目

花占い

作者: たかさば

 好き、嫌い、好き、嫌い。


 花びらをむしりながら、あの人の気持ちをさぐる。


 好き、嫌い、好き、嫌い。


 花びらは、きっと私に、あの人の気持ちを教えてくれる。


 好き、嫌い、好き、嫌い。


 好きだと、良いな。


 好き、嫌い、好き、嫌い。


 嫌いだったら、やだな。


 好き、嫌い、好き、嫌い。


 嫌いだったら、無かったことにしよう。


 好き、嫌い、好き、嫌い。


 好きだったら、告白してくれるのを待とう。


 好き、嫌い、好き、嫌い。


 全然、終わんない。


 好き、嫌い、好き、嫌い。


 こんなにむしってるのに、まだ半分も減ってない。


 好き、嫌い、好き、嫌い。


 コスモスでやれば良かった。


 好き、嫌い、好き、嫌い。


 でも、花びらが8枚だから、嫌いになっちゃうんだよね。


 好き、嫌い、好き、嫌い。


 マリーゴールドがあれば良かった、あれは13枚だから。


 好き、嫌い、好き、嫌い。


 マーガレットでも良かったけど、今どっちも咲いてないんだよね。


 好き、嫌い、好き、嫌い。


 ああ、なんか、疲れてきた。


 好き、嫌い、好き、きら……。


「やだ!ちょっと!アンタおばあちゃんのダリヤむしってなにしてんの?!それ、明後日ブーケにするって言ってたよ?!」

「え?!うそ!…でもまだ他にもたくさん咲いてるし…」


「全部使うって言ってたから、千切ったこと知られたら…誕生日ケーキもスカートもなくなると思うけど!?」

「そうなの?!それは困る!お母さん、どうしよう…!」


「ダメダメ、そんなところに捨てたらバレバレじゃないの!ほうきで集めて、早く片付けなさい!」

「わ、わかった…!」


 花占いは、結局最後までできなくて。

 好きか、嫌いか、わからなかったんだよね。


 だから、なにも変わらない毎日を、ずっと過ごしていたんだ。ごく普通におしゃべりして、笑いあって、たまにケンカして。


 そうこうしていたら、誕生日がきて。

 無事、おばあちゃんのケーキも手作りスカートもゲットして。


 ウキウキして庭に出たら、となりのクラスのぼんやりした男子に…誕生日プレゼントをもらって。


 花占いをしなくても、気持ちを知ることができたんだよね。


「おばあちゃん、ここのお花、どれかひとつ、もらっても良い?」

「ああ、いいよ。…恋占いでもするのかい?」


 プレゼントは、花の種だったんだ。植木鉢に植えたら、きれいに咲いて。種を取って、また蒔いて。また花が咲いて。


 ……何度も花占いをしたっけな。


 花びらは五枚だから、毎回、好き、嫌い、好き、嫌い、好きってなるんだよね。


 本人が目の前にいるのにって、いつも笑われたなあ……。


 ……ふふ、なつかしい。


「…ッ!ち、ちがうよぅ、その、き、きれいだから?もらうだけ!!」

「そうかい?じゃあ…このおじいちゃんの白いお花をあげようね。」


 私は、孫に、大好きな白いスミレの花を一輪、差し出して……。


 空の彼方にいる、大好きだった人を思い出しながら、にっこりと……笑ったのだった。

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