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64.勇者との邂逅

 何故、レオンとシエルがここにいるのだ。

 今日は休日。学園も休みなのでクラスメイトとニアミスしてもおかしくはないが……よりにもよってコイツらと出くわしてしまうとは。


「いや……別にいても不自然ではないのか?」


 俺はレオンと横に並んでいるシエルを交互に見る。

 レオンは長袖のシャツに黒いズボンという簡素な格好だが、シエルは鮮やかな赤いワンピースを纏っており、明らかにデートの最中といった服装だった。

 2人の距離は妙に近いというか、最後に学園で会ったときよりも親密そうな空気が感じられる。


 考えても見れば――ヒロイン三巨頭のうちエアリスとナギサは何故か俺と行動を共にしており、レオンを主人公とした物語から脱落していた。

 最後の1人であるシエルがレオンの愛情を独占し、こうして休日デートにこぎつけているのも自然な流れなのかもしれない。


「どうしてバスカヴィルがここに……それにそっちは……」


 レオンが驚きを込めた眼差しで俺を見る。その視線が、横にいる女子2人に向けられる。


「奴隷の女の子と…………セイカイさん!? 何でバスカヴィルと一緒にいるんだ!?」


「ん……? ああ、お前はブレイブか。奇遇だな」


 レオンの声にナギサが目を覚ます。怪訝な目でレオンを見やり、首を傾げる。


「ウラヌスもいたのだな。2人とも、今日はデートか?」


「そうだけど……まさか、セイカイさんは……」


「ああ、私達もデートをしている最中だ。見てわからないか?」


「デートって……どうしてセイカイさんが!?」


 レオンが信じられないとばかりに、愕然とした顔になる。

 どうやら、一時的とはいえ自分とパーティーを組んでいたナギサが、俺と一緒にいることを受け入れられないようだ。

 困惑に揺れるレオンの眼差しに、俺は深々と溜息をついた。


「……とりあえず、さっさと出るか。ここにいても他の客の邪魔になるだけだからな」


「もぐもぐ、もぐもぐ……ふあっ!」


 俺は突然、現れたレオンを睨みながら食事を続けているウルザの頭を小突いた。


「行くぞ、2人とも。舞台はとっくに終わっている」


「ああ、行こうか」


「はいですの! 帰りにご飯を食べていきますの!」


「まだ食うのかよ……流石にカロリー過多だって」


 談笑しながら劇場の出入口に向かう俺に、ウルザとナギサがついてくる。


「お、おい! 待てよ!」


 慌てたような声を上げて、何故かレオンが俺の背中に続いてきた。

 俺は鬱陶しそうに表情をしかめて背後を一瞥する。


「……何の用だよ。俺は別に、お前に話なんてないぞ?」


「それは……えっと……」


 俺の詰問に、レオンが口ごもった。

 言いたいことがあるのに、それが上手く口から出てこないような――そんな迷いのある表情で唇を噛んでいる。

 そんなレオンの様子に、俺は怪訝に眉根を寄せた。


「…………?」


 学園では敵意を剥き出しにして俺を睨んでいたレオンであったが、今日はいつもより敵意が薄い気がする。

 気まずそうに、何かを言いたげに口ごもっている姿は、まるでケンカ中の友人と町でばったり会ってしまったような顔をしていた。


「チッ……鬱陶しいな」


 とはいえ、ウルザの『玉蹴り事件』以降、レオンとは全く関わりがなく、噂などもほとんど聞いていない。

 ナギサのヒロイン化にも失敗したようだし、主人公であるはずのこの男の現状について、探りを入れておいてもいいかもしれない。


「まあいい……ちょっと付き合えよ。お前の方から声をかけてきたんだ。文句はないだろう?」


「あ、ああ……」


 俺が仕方なしに言ってやると、レオンは主導権を握られることにやや不満げな表情を浮かべながら、それでも言われた通りについてくる。


 とりあえず、落ち着いて話ができる場所に移動するべきだろう。

 俺は劇場の外に出て、すぐ近くにある公園へと足を向けるのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] >「チッ……鬱陶しいな」 レオン大好き人間だった頃の面影がなくなって すっかりゼノン役が板についてきたな
[一言] うーん、どんな会話するか楽しみ! ゲーム感覚を抜きにしたら今のレオンは薄っぺらい正義感をかざす勇者気取りですから。 喝入れたらまた悪役扱いして逆恨みするか、それとも技量不足を認識して自分磨…
[良い点] 今話もありがとうございます! [気になる点] ……ほほう。何を話すのかな? [一言] 続きも楽しみにしています!
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