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46.剣姫との決闘

「おい、エアリス……」


「いいじゃないですか。ゼノン様」


 勝手なことを言い出したエアリス。俺は思わず眉間にシワを寄せた。

 抗議を込めて睨みつけるが、エアリスはのほほんとした穏やかな表情をしており、コクリと愛らしく首を傾げてくる。


「このままセイカイさんを1人にしておくのも心配ですし、彼女の実力ならば足手まといにもならないと思いますよ?」


「それはその通りだが……うーん?」


 俺はどうしたものかと考え込む。

 こちらの戦力アップを考えるのであれば、ナギサ・セイカイというヒロインは非常に頼もしい。

 問題があるとすれば、またしてもレオンの仲間になるはずだったヒロインを奪ってしまうこと。

 レオンの戦力低下は避けられないが……ナギサはすでにレオンに見切りをつけているようだし、俺がもらってしまっても大差ないかもしれない。


「私は仲間になっても構わない。ただし……1つだけ条件がある」


 俺が考えをまとめるよりも先に、ナギサが返答する。

 どうやら勧誘を前向きに受け取っているらしい。凛々しい顔立ちにうっすらと笑みを浮かべて答えてきた。


「私は強くならなければいけない。君達が私と共に高みに昇ることができるのか、試させてもらいたい」


「…………」


「つまり……決闘だよ。勝負しよう」


「おいおい……本気で言ってるのかよ?」


「当然だ。バスカヴィルとは以前から戦ってみたいと思っていた。私を手に入れたいのであれば、この剣を打ち破って見せろ」


 ナギサが刀を抜いて切っ先を向けてくる。

 瞳を好戦的に燃やしており、すでに俺達と戦うことが決定事項となっているようだ。


「はあ……仕方がないな。そこまで言うのなら戦ってやろうじゃないか」


 俺はまだナギサを仲間にすると決めたわけではないのだが……ナギサはすでに臨戦態勢をとっており、言い出せる空気ではなくなってしまった。

 ナギサが仲間に加わってくれること自体は嬉しいことである。レオンには間抜けな主人公の自業自得として諦めてもらおう。


「遊んでやるよ。天狗の鼻を切り落としてやるから覚悟しろ」


「大した自信ではないか。バスカヴィル、君とは手合わせをする約束をしていたな。念願が叶って嬉しく思うぞ」


「『賢人の遊び場』でのことだな……あの約束、まだ覚えていたのか」


 俺はガーゴイルを倒した後のことを思い出す。

 確かにあの時、手合わせを申し込まれた気がする。しかし、あれからもう1ヵ月以上も経っているのだ。すでに忘れているものだとばかり思っていたのだが。


「そちらは随分と忙しそうにしていたからな。これでも遠慮したのだぞ?」


「そうかい、それはありがたいことだな。違う意味で涙が出そうだよ」


 ウルザを購入してレオンと一悶着あったり、エアリスを助けて謹慎処分を受けたり、言われてみれば私的な決闘などやっている暇がないほど忙しかった。

 どうやら、目の前のサムライ少女は貪欲に力を求めるばかりの戦闘狂というわけではなく、人並みに気遣いもできるようである。


「バスカヴィル、もしも君が勝つことができたら私の身体を好きにしても構わないぞ? 強い男が相手であれば抱かれるのも悪くはない」


「おいおい……冗談で言うようなことじゃねえぞ。本気にしちまったらどうしてくれるんだよ」


「冗談ではないさ。私は強い男が好きだからな。勝者には敗者を好きにする権利があるのは当然ではないか」


 恥じらいもなく、ナギサはとんでもないことを言い出した。

 そう言えば――R18版のナギサ・セイカイも好感度が一定以上に上がると、突然、決闘を申し込んでくるのだ。そして、その決闘に勝利すると、その場でアダルトシーンに突入するのである。


「な、ななななっ! 何てこと言うんですか!? セイカイさん!」


「そうですの! 順序がおかしいですの!」


 横で見ていたエアリスとウルザも、ナギサの爆弾発言を聞いて割って入ってきた。

 エアリスは顔を真っ赤にしており、ウルザも不満そうに目尻をつり上げている。


「私だって、まだそんなことをしてもらってないんですよ!? 後から横入りしてくるなんてズルいじゃないですか!」


「その通りですの! 順番からいって、最初にご主人様と子作りをするのはウルザですの!」


「……お前らも何言ってんだ」


「ほほう! 2人はバスカヴィルと(ねんご)ろになっているのか? 英雄色を好む、ますます気に入ったな!」


「お前も勝手に好感度を上げるんじゃない! これ以上、話をややこしくするんじゃねえよ!」


 ヒロイン達があまりにも奔放すぎる。俺は頭痛を堪えるように頭を押さえた。

 何だか、色々と悩んでいる自分が馬鹿馬鹿しくなってくる。

 魔王を倒すとか、世界を救うとか……アレコレと考えているこっちの身にもなって欲しい。


「決闘するんだろ!? さっさと始めるぞ!」


 俺は両手を叩いて話を切り上げ、さっさと戦いを始めようとする。


「そ、そんな……ゼノン様……!」


 俺の答えに、何故かエアリスがショックを受けたようにたじろいだ。

 ナギサを仲間にするように提案したのはエアリスのはずなのだが、言い出しっぺの彼女が誰よりも愕然としている。


「ぜ、ゼノン様……! まさか私よりもセイカイさんのほうが……! やはり黒髪が好きなのですか。それとも、脚が長いのがいいのですか!?」


「そういう話じゃない! 戦力アップしたいだけだ! そもそも、お前が仲間にしようと誘ったんだろうが!」


「く……! こうなったら、もっと積極的に誘惑して……! そう、前に買ったあのエッチな下着を身に着ける時が……!」


「……お前、キャラ崩壊してないか? そんな面白いキャラだったか?」


 本気で頭痛がしてきた。俺は頭を押さえて目眩を堪える。

 もはやシナリオ改変とか、そういう問題ではない気がしてきた。

 考えても見れば、俺はゲームでエアリスやナギサというヒロインのことを知った気になっていたが、ゲームに登場するのは彼女達の人生のほんの一部分でしかない。

 ひょっとすると……俺が知らなかっただけで、お淑やかなお嬢様であるエアリスにもこういう愉快な側面があったのではないだろうか。


「よし……それでは始めるとしよう!」


 そうこうしていると、ナギサが落ちている木の枝などを刀でどけて開けたスペースを作っていた。

 幸い、ここはボスモンスターが配置されていただけあって木もまばらで広い空間が開いている。すぐに決闘に必要なスペースが確保できた。


「決闘を受けてもらえて嬉しく思う……では、さっそく斬り結ぼうではないか! 心踊る果たし合いといこう!」


「いいぜ、相手になって……」


「待つですの!」


 剣に手をかけて前に出ようとする俺であったが、今度はウルザが立ちふさがった。

 小柄な白髪の少女は、平坦な胸を張って堂々と声を張り上げる。


「ご主人様と戦う前にウルザが相手になりますの! ご主人様の正妻はこのウルザであると証明してあげますの!」



ここまで読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
何キロだか何メガだか分からんが、ゲームの内部設定やテキスト、イベントを結集しても人ひとりの人格なんて推し量れるわけないよね(苦笑) 現実化すればキャラが独り歩きして当然。 まぁ各キャラ共に予想外の方向…
[良い点] >エッチな下着 kwsk
[一言] レオンの力も奪えはいいじゃない
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