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70.頭の悪い海上戦

「GYAOOOOOOOOOOOOOOOOO!」


 テセウスの船に降り立った俺達に向かって、リヴァイアサンが高々と吼える。

 咆哮と共に放たれた強烈な水鉄砲が船に向かって撃ちつけられた。


「キャアッ!」


「大丈夫だ。エアリス」


 悲鳴を上げる仲間に、俺は冷静に告げる。

 敵の攻撃をまともに喰らったはずなのに……俺にも仲間達にも、目立った怪我はない。

 代わりに、船のマストや船体にわずかにヒビが入っていた。


「俺達が受けたダメージは船が肩代わりしてくれる。だから、攻撃に専念しろ」


 それがこの船の仕様である。

 テセウスの船にもHPがあり、敵の攻撃のダメージはまず船に入る。

 船のHPが蓄積したら破壊。船から投げ出され、海に投げ落とされた状態での戦闘になってしまう。


「船には治癒魔法も補助魔法も効かないが……素材さえあれば、破損ダメージはいくらでも修復することができる。とりあえずは問題ないから、落ち着いて攻撃するんだ」


 俺はアイテムボックスから取り出した船の素材をデッキに並べていく。

 すると、素材が船に吸い込まれて消えて、リヴァイアサンの水鉄砲によるダメージが修復されていった。


「べ、便利なのね……こんな船、どこから見つけたのよ」


「さあな」


 シエルが怪訝に訊ねてきたので、肩をすくめて返しておく。

 しかし……エレクトラが首を傾げて不思議そうな表情になって、「うーん」と考え込む。


「そういえば……隣国の王家が魔法の船を所有していると聞いたことがありますわ。その船は生きていて、破損を自力で治すことができると。確か、名前はてせう……」


「そんなことよりも、敵に集中しろ! 肩の力を抜いてる場合じゃないぞ!」


 最後までは言わせない。

 これが王家が持っているはずの魔法の船だと、言えるわけがない。

 考えるのも怖いことだが……ここにその船があるということは、隣国の王家が所有している船はどうなっているのだろう。

 二隻あるのならば良いが、消えていて盗難されたことになっていたら面倒である。


「シャドウランス!」


「フレイムストライク!」


 俺が率先して魔法攻撃を放つと、シエルも真剣な表情になって攻撃に加わる。

 強力な闇魔法と火魔法がリヴァイアサンに命中した。


「ホワイトドラゴン、ブレスを撃ちなさい!」


「マジックアップ!」


 エレクトラも召喚獣に命じて攻撃させて、エアリスが補助魔法で援護をする。


「GYAOOOOOOOOOOOOOOOOO!」


 リヴァイアサンが怒りに吼えながら巨大な尾を振るって、船体に叩きつけてきた。


「ん!」


 船を衝撃が襲うが……次の瞬間、ミュラがデスサイズの大鎌を振って尾を斬り裂いた。


「良いぞ! よくやった!」


「ん、後でご褒美」


「コイツに勝ったら頭を撫でてやるよ!」


「ムウ……子供扱い」


 ミュラが無表情のまま唇を尖らせる。

 それはそうとして……俺達は船から攻撃を続けていく。

 ダメージを船が肩代わりしてくれるため、ひたすら攻撃だけに専念できるのが有り難い。


「だが……いつまでも悠長なことは言ってられないか……」


 素材の消耗が思っていた以上に激しい。

 デッキに出した素材がどんどん減っていき、慌てて追加する。


「やはり、運転スキルを持っている仲間がいないと厳しいか……」


 実際の海上戦では、仲間の一人が船を運転して、敵の攻撃を回避しながら戦うことになる。

 ただし……俺は船の操縦技能は持っていないし、他の仲間達も持ってはいない。

 そのため、船は同じ場所に停泊した状態で攻撃を浴び放題になっていた。


「素材が尽きたら……今度こそ、ヤバいかもな」


「GYAOOOOOOOOOOOOOOOOO!」


 リヴァイアサンが水鉄砲を浴びせてくる。

 俺と仲間達が応戦して、相手にダメージを与えていく。

 完全な消耗戦。お互いにノーガード戦法でひたすら攻撃を撃ち合う応酬。


「……頭の悪い戦い方だな。本当に嫌になるぜ」


 俺はボヤキながら、闇魔法を放って敵を攻撃するのであった。


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