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68.海竜の怒り

「海竜リヴァイアサン……改めて、デカいな……!」


 圧倒されるほどの巨体である。

 これまで幾度となく巨大な魔物とは戦ってきたが……サイズだけならば、トップかもしれない。


「ゼノン様、アレはまさか……神話の怪物ですか?」


「まあ、そんなところだな……まったく、よりにもよってコイツに当たるとはな」


 エアリスの震える声に、俺は苦笑いで返す。


 リヴァイアサンは『ダンブレ』に登場するモンスターの中でも最大サイズの敵キャラだ。

 もしもここがMMORPGだったのなら、レイドボスに指定されていたことだろう。


 リヴァイアサンが出現するポイントは二カ所。

 一つ目はこの『永久図書館』。特殊な魔法によって生み出された海に出現する。

 二つ目は……本物の海。有料の追加シナリオに海に出るストーリーがあり、そこの終盤に登場する中ボスだった。


「中ボスでありながら、コイツ、最後の敵よりも強いじゃん……とか言われてたな。海の上ではほとんど無敵だもんな」


「ちょっとバスカヴィル! こんな奴どうやって倒せばいいのよ!?」


 ホワイトドラゴンの背中から、シエルが大声で叫んでくる。

 俺に言われてもと返したいところだが……眼下にいるのは理不尽を具現化したような怪物だ。

 八つ当たりに叫びたくなる気持ちはわかる。


「そうだな……俺から言えることは、とりあえず……」


「GRYUUUUUUUUUUUU……!」


「あのモーションをしたら、全力で走れ! 絶対にその場にとどまるな!」


 リヴァイアサンが大きな口を開き、こちらに向けてくる。

 三人を乗せたホワイトドラゴンが、俺を抱えたミュラが即座にその場を離れた。


「GYAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」


 そして、次の瞬間。

 リヴァイアサンの口から、レーザー光線のように海水が放たれた。

 大型船を呑み込むほどの鉄砲水が先ほどまで俺達がいた場所に浴びせられ、あわや撃墜の危機である。


「キャアアアアアアアアアアアアアアアッ!」


「ヒャアアアアアアアアアアアアアアアッ!」


 女性陣の悲鳴が青い空に向かって放たれる。

 遅れて、空に向かって撃たれた海水が雨となって降りそそいできた。


「リヴァイアサンの『海竜の怒り』……実際に見ると絶望的な威力だな……」


 ミュラに抱えられながら、俺は半分なげやりな気持ちで顔を引きつらせる。

『海竜の怒り』は御覧の通り、海水を一気に射出して空中の敵を打ち落とす技だった。

 アレをまともに喰らえば、上位ジョブに就いているキャラクターであっても、HPの大部分を削られかねない。


「おまけに、海に落ちたところで『呑み込み』か『絞めつけ』、あるいは『尻尾ビンタ』が来るんだよな……ガチで殺しにかかってやがる」


『2』が発売した時にも思ったが、このゲームの制作陣はプレイヤーに恨みでもあるのだろうか?

 匿名で批判されたり、星1つ評価をされたりした恨みを晴らしているのではないかと、疑いたくなってしまう。


「ゼノン様! これから、どうするのですか!?」


「まずはアイツらの注意を引け! 魔法で攻撃だ!」


 エアリス達に向かって叫ぶ。


「さっきの海水の大砲にだけ注意すれば、飛んでいる限りは殺されることはない! 決して近づかずに、遠距離攻撃だけで戦うんだ!」


「言われなくても近寄らないわよ……でも」


「この巨体……こっちの攻撃が効いているのかしら?」


 シエルが雷の魔法で、エレクトラが召喚したホワイトドラゴンのブレスによって、リヴァイアサンを攻撃する。

 エアリスは補助魔法で二人を支援しつつ、召喚によって消耗してしまった魔力を補わせるため、エレクトラにマジックポーションを飲ませていた。


「GYAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」


 リヴァイアサンは隠れることもなく、こちらの攻撃を真っ向から受けている。

 しかし……『蟷螂の斧』というのはこういうことを言うのだろう。

 遠距離攻撃はまるで効いているようには見えなかった。


「止める?」


 その様子に心配になったのか、俺を抱え込んでいるミュラが訊ねてきた。

 時間を止めようかと聞いているのだろうが……俺は首を横に振る。

 召喚悪魔であるミュラは、俺の魔力を削って魔法を使う。

 時間停止はとんでもなく魔力を消耗してしまうのだ。


「この状況で魔力切れになったら、真っ逆さまにボチャンだぞ……それは勘弁だぞ」


「だったら……どう?」


「どうするか? まあ、やれるだけのことは殺らせてもらうってことで」


 このまま空からチクチクと攻撃していても、リヴァイアサンには大ダメージを与えることはできない。

 空を飛びながらではできることも限られている。絶えず魔力を消耗しており、いつまで続くかわかったものではない。


「なあ、ミュラ」


「ん?」


「お前は……『テセウスの船』という言葉を知っているか?」


 問いかけながら……俺はアイテムバッグに手を突っ込んだ。


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