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66.永久図書館

 王都中心部。国立図書館。

 スレイヤーズ王国中のあらゆる本が収められているその施設はいくつかの区画に分けられており、一般区画は平民にも広く利用されている。

 本の持ち出しなどは固く禁じられているものの……ルールさえ守っていれば、ほとんどの書物を閲覧することができる。


 問題となるのは特別な許可がなければ閲覧不可能な本である。

 貴族でなければ読めない本、貴族の中でも高位の人間しか読めない本、王族にしか読めない本。

 そして……そんな書物が鎮座されている区画よりもさらに奥にそれはある。


 永久図書館


 この世界の全ての情報があるとされるその場所は、国立図書館の地下にあるダンジョンの最奥にあった。

 国王から特別な許可を与えられた人間しか足を踏み入れることが許されず、許可を得た人間でもたどり着くことは至難の業。

 場合によっては、魔王を倒すこと以上に困難極まりないダンジョンがそこにはあった。


「……と、いうわけで俺達はこれからそのダンジョンに入る。覚悟は良いよな?」


「もちろんです、ゼノン様」


 国立図書館最下層。『永久図書館』の入口にて。

 俺が発した問いに、真っ先にエアリスが頷いてくれる。


「私の心はいつもゼノン様と共に在ります。何なりとお命じくださいませ」


 穏やかな聖母の笑みで言ってのけるエアリス。

 昨晩はあんなに激しく喘いで、メロンのような胸を駆使してあんなことまでした女の言葉とは思えないほど清らかな表情をしている。


「…………フン」


 続いて、シエルが鼻を鳴らす。

 早朝、風呂場で予想外の遭遇をしたせいだろう。

 その顔はとんでもなく不機嫌であり、決して俺と目を合わせようとはしなかった。

 それでも、ここまでついてきたあたり不満はないのだろう。

 愛する男の命がかかっているのだからどんな危険だって冒すはず。


「ここが『永久図書館』……ようやく、ここに来ることができましたわ」


 緊張した面持ちで『永久図書館』の入口を見つめているのは、王女であるエレクトラだ。

 この場所に入るために自ら志願して俺のパーティーに加わったエレクトラには、もちろん異論はない様子。

 決意を固めた表情で杖を握りしめている。


「問題なさそうだな……それじゃあ、確認だ」


 俺は国立図書館の地下のさらに地下。

 一部の人間以外には存在を秘匿される部屋にて、扉に手をついた。

 その扉には青白い光で魔方陣のような物が描かれている。これが『永久図書館』の入口である。


「この扉に入ると、そこはもうダンジョンの中だ。そして……一度入ったら、最奥に到着するまで出てこられない」


 それがこのダンジョンの仕様である。

『永久図書館』は入るために国王の許可が必要。

 そして、一度入ってしまえばダンジョンをクリアしない限り、誰であっても外に出ることはできない。

 ゲームであればリセットボタンを押せば済む話だが、現実であればクリアか死ぬか(クリア・オア・ダイ)

 やり直しがきかないギャンブルである。


「もちろん、予想外のアクシデントに備えてアイテムは十分に持ってきている。回復アイテムはもちろん、食料品やテントもだ」


 俺はマジックバックを掲げた。

 収納量無限のバックの中には、あらゆる事態に対応するためのアイテムが詰め込まれている。

 もちろん、いくら備えても死ぬときは死ぬのがダンジョンだが。


「それでも……中に入って確実に出てこられる保証はない。後戻りするのならこれが最後の機会だ。本当に入っても良いんだな?」


「くどいわよ、さっさと行きましょうよ」


 間髪入れずに、シエルが口を挟む。


「危険な場所だってことは何度も聞いたわよ! アンタが用心深いのはわかったから、早く入りましょう!」


「シエルさんの言う通りですわ。私にもここに大切な用事がありますもの」


 エレクトラもまた、シエルに続く。


「むしろ、ようやく悲願がかなうのだと胸が躍っておりますわ。これ以上、我慢をさせないでくださいませ」


「……命知らずなことだな。このお嬢さん方は」


 最後にエアリスの方を見ると、ニッコリと透明感のある微笑みが返ってくる。

 こちらも今さらのようだ。俺は肩をすくめて、両手を開いた。


「結構。それじゃあ、お望みのままに入るとしようか」


 そして……魔法陣が描かれた扉、そのドアノブを握りしめる。


『永久図書館』は全部で1024の部屋から構成されており、扉を開けた途端にそのどれかに転移させられる。

 部屋の中には魔物であったり、トラップであったり、財宝であったり、謎解きであったり……様々なアクシデントが用意されていて、それを攻略することで次の部屋に移動することができる。


「部屋の中に、即死不可避の部屋だって存在する……まあ、1024分の1の確立だけどな」


 まさか、そんな場所を引くわけがない。

 俺は苦笑しつつ……ドアノブを引いて扉を開け放った。


「あ?」


「キャアアアアアアアアアアアアッ!?」


 次の瞬間、俺達は空に放り出されていた。

 重力に引かれて地面に向けて……否、海面に向けて落下していく。


「おいおい……マジか」


「GYAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」


 そして……下に広がっている海では、巨大な海竜がエサが落ちてくるのを首を長くして待ち構えている。


『永久図書館』にある1024の部屋のうち、最大にして最悪の部屋。


 初見殺しの『リヴァイアサンの間』を引き当ててしまったようである。


コミカライズが7話まで更新中です。

こちらもよろしくお願いいたします!!

https://www.123hon.com/nova/web-comic/bravesoul/

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