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57.不完全な秘薬

コミックノヴァにて、コミカライズが連載開始いたしました!

皆様の応援に心よりの感謝を申し上げます!


https://www.123hon.com/nova/web-comic/bravesoul/

挿絵(By みてみん)

 賢人の遺産の一つである『魔杖ケーリュケイオン』を発見して、シエルにプレゼントした。

 思わぬ贈り物にシエルはとても喜んでくれて、目尻に涙すら浮かべて御礼を言ってきた。


「こちらの書物……持ち帰ってもよろしいかしら?」


 一方で、本棚を物色していたエレクトラが訊ねてくる。


「良いんじゃないか? ここに置いておいても、劣化するだけだろ?」


 本棚には無数の本が並べられている。

 いずれも古いものばかり。

 俺が知らないどこかの国の言葉、古代言語で書かれているものもあるようだ。


「それでは、持ち帰って宮廷魔術師に調べてもらいましょう。どれも百年以上は前の文献ですし、貴重な歴史的資料として役立つはずですわ!」


 エレクトラが嬉しそうに言って、本棚の本を慎重に取り出した。

 明らかに、エレクトラの両腕だけでは持ち帰ることができない量である。


「……俺のマジックバッグに入れておこう。あとで城に送ってやるよ」


 見かねて、俺は容量無制限のマジックバッグに本を入れていった。

 ここにある本に何が書かれているか、俺は知らない。

 ゲームではこの本棚は飾りであり、どんな本が入っていたかの描写はなかった。

 それでも、古い本なのだから資料として何らかの価値はあるのだろう。


「こちらには薬がありますね……何の薬でしょう?」


 エアリスが机の上にある試験管を眺めて、不思議そうに首を傾げる。

 その薬もまた、ゲームにおいてはただの背景。触ることもできないオブジェクトでしかなかった。


「ポーションに似ているが……そういえば、何の薬なんだろうな?」


 俺はふと興味を引かれて、その試験管を手に取った。

 ポーションによく似た青い液体だったが、よくよく見ると金銀の粒が浮かんでおり、上下に揺れている。

 俺には薬の知識はないが……マジックバッグに入れてみれば、そのアイテムの名称がリストに表示されるはず。


「ブフッ!」


「ゼノン様……!?」


「い、いや……何でもない……」


 思わず噴き出した俺に、エアリスが心配そうに近寄ってくる。

 手を振って何でもないということをアピールしておき、改めてリストに表示されたそのアイテムの名称に目をやった。

 アイテムバッグのリストに表示されていたのは、これまたファンタジー好きにはおなじみの単語である。


『エリクサー(不完全)』


 ファンタジー系のゲームには必ずと言っても良いほど、登場する薬である。

 死者をも蘇らせることができる秘薬として知られていた。


「…………」


 どうして、この薬がここにあるのだろう。

 エリクサーは『ダンブレ』においては登場しない。

 少なくとも、プレイヤーが使用することができるアイテムとしては。

 サブイベントでエリクサーを探している旅人が出てきたり、エリクサーを作り出そうとしている錬金術師がいたりはするものの……アイテムとしては存在しないはず。


 しかも、わざわざ()付きで不完全と表示されている。

 どうにかすれば完全になるという意味だろうか?


「この薬については、改めて調べておこう。ひょっとしたら、世紀の大発見になるかもしれないからな」


「そうなんですか? 役に立つと良いですね」


 エアリスは特に気にした様子もなく、他の場所を調べる。


 その後も最上階層をアレコレと調べていったが……さすがは賢者の研究室。

 貴重な薬や、何に使用する物かもわからない未知の品物があった。

 俺達はめぼしい物をアイテムバッグに放り込んで、『賢人の鍛錬場』を後にする。


「さて……それじゃあ、みんな。今日はお疲れさん。もう帰って良いぞ」


「ちょっとバスカヴィル……」


「心配するなよ、ウラヌス。『永久図書館』にはちゃんと連れて行ってやる。色々と準備があるからな。出発は三日後にしよう」


「三日後……それでレオンを助けられるのね?」


「保証はない。可能性があるってだけだ」


「……いいわ。十分よ」


 シエルが唇を噛んで、しっかりと頷いた。


「それじゃあ、行きましょうか。案内して頂戴」


「案内って……どこにだよ」


「貴方の家によ」


「は?」


 シエルが当然のように言った言葉に、俺は怪訝に眉をひそめる。

 そんな俺からわずかに視線を逸らし……シエルはとぼけたような様子で、爆弾を投下してきた。


「今晩、泊めてくれない? 帰る家がないのよ」


「…………」


 その言葉に唖然としたのは俺だけではない。

 エアリスやエレクトラもまた、驚きのあまり言葉を失っていたのである。


コミックノヴァにて、コミカライズが連載開始いたしました!

皆様の応援に心よりの感謝を申し上げます!


https://www.123hon.com/nova/web-comic/bravesoul/

挿絵(By みてみん)

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