53.幽霊の住処
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・勇者の子供を産んでくれ 邪神と相討ちになった勇者は子孫を残せと女神に復活させられる
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・蒼雷の退魔師 妖怪と陰陽師ばかりの国だけど神の子だから余裕で生きるし女も抱く
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・彼女の浮気現場を目撃したら斬り殺されました。黄泉の神様の手先になって復活したら彼女が戻ってこいと言っているがもう知らない。
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束の間の入浴タイムを終えて、ダンジョン攻略を再開させた。
上の階層に繋がっている扉を前にして、いまだ拗ねた様子のシエルを振り返る。
「…………」
「いい加減、むくれるなよ。俺が悪いわけでもないだろうが」
「……わかってるわよ」
攻略を再開してから、ずっとシエルが俺のことを睨んできていた。
おそらく、さっきの不慮の事故によって裸を見てしまったことを根に持っているのだろう。
「それじゃあ、攻略再開だ。次の階層はレイスの巣だから気をつけろ」
「レイスですか……!」
エアリスがスウッと目を細める。
神官であるエアリスは、アンデッドやゴーストを浄化することを自分の使命のように感じているのだ。
レイスというのは上位のゴーストモンスターであり、並の光魔法では浄化できないほどの力を持っている。
いかにエアリスが強力な神官であるとはいえ、数を相手にすれば苦戦することだろう。
「だったら、アンデッドに有効な召喚獣を出しますわ」
エレクトラが召喚魔法を発動させた。
すると、足元に魔方陣が出現して、光の中から白い翼を広げた天使の姿が現れた。
白い衣に鎧を付けた天使は中性的で美しい顔立ちをしている。
性別は不明だが、グラフィックデザイナーの気合の入りようがよくわかる姿だった。
「へえ、アークエンジェルか。それを呼び出すことができたんだな」
俺は少しだけ意外に思って、瞬きを繰り返す。
ゲームのエレクトラは、仲間になった時点ではこの召喚獣を呼び出すことはできなかった。
もちろん、もはやゲームのシナリオは全然違う方向に向かっている。
エレクトラが俺がっているよりも成長していたとしても、おかしくはない。
「綺麗……」
「天使様……神々しいですね」
シエルとエアリスも現れた天使に見入っている。
「彼女ならば、そこらの幽霊など一刀両断にできるはず。この子を前衛として前に進みましょうか」
「あ、その天使って女性なんだ?」
「さあ、知りませんわ。でも殿方というよりも淑女のように見えるでしょう?」
「そうなの……」
シエルが苦笑して、扉に目を向けた。
「私も準備は良いわ。ゴースト対策の魔法くらい覚えているから頼りにして頂戴」
「ならば良し。さっさと行くか」
俺が先頭に立って扉を開いた。
石造りの壁と柱、床が並んだ通路が現れる。
下の階層とは異なっており、その通路はやけに寒々しい。
壁の色も青く塗られていて、全体的に薄暗かった。
「お、さっそく出てきたな」
通路の端から、人間とよく似たシルエットが出現する。
ボロボロな服をまとったそれはぼんやりと、おぼつかない足取りで歩いていた。
人間のように見えなくもないのだが、顔は土気色。生気というものが少しも感じられない。
『おおお……おおおおおおオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアッ!?』
「お?」
「ひきゃうっ!?」
その何か……レイスがこちらに気がつくや、一瞬で距離を詰めて飛びかかってきた。
まるで海外のホラー映画に登場するお化けのような動きだ。
これまでいくつものモンスターや怪物を目にしてきたが、それらとは別種の恐ろしさがある。
「ミッキー、やりなさい!」
『…………』
エレクトラが鋭く叫ぶと、召喚されたアークエンジェルがレイスに剣を突き刺した。
光り輝く刃に貫かれたレイスは、串刺しになりながらも絶命することなくバタバタともがいている。
すでに死んでいるレイスに『絶命』という言葉を使うのもおかしな話だが。
「ターンアンデッド」
エアリスが浄化の魔法を発動させる。
串刺しになったレイスが白い光に包まれ、今度こそ跡形もなく消滅する。
「アンデッドに特効のある天使の攻撃でも即死しないんだから、この階層のレイスはやはり強いな……って、何やってんだ?」
「べ、別に何でもないわよっ!」
振り返ると、シエルが尻もちをついていた。
俺が尋ねると、顔を真っ赤にしてワタワタと立ち上がる。
「び、ビックリして転んだりしてないんだからね! 勘違いしないでよね!」
「いや、ツンデレの使い方がおかしいだろ。つまりビビッてこけたわけか」
確かに、あの飛びかかり方は驚かされる。
貞子が全力疾走してきたような衝撃。事前情報で知っていた俺だってわりと驚いた。
「まあ、最初だから仕方がないだろう。気にするな」
「うう……優しくされるとかえって辛いんだけど……」
「まあ、『頼りにして』とか偉そうなことを言って、あの体たらくはかなり面白いけどな。レオンパーティーでもお笑い担当だったのか?」
今のところ、エレクトラほどの活躍が見えなかった。
エロい目に遭ったり、笑えることになったり……そういう担当であるとしか思えない。
「そんなわけないでしょ! 絶対に活躍してやるんだから覚えてなさいよね!」
シエルはプリプリと怒りながらも、俺や天使の背後に隠れて恐々と前に進む。
どうやら、お化けが苦手なようだ。
試験の際、アンデッドの巣窟である谷に入ったはずだが……これでよく足手纏いにならなかったものである。
「……ゾンビは良いのよ。でも、お化けの怖さは別物でしょう?」
「ああ……それはわかる気がするな」
ゾンビ映画とホラー映画は似て非なるものだ。
前者が平気でも、後者が苦手ということもあるだろう。
「ンアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?」
「キャアアアアアアアアアアアアアッ!?」
曲がり角から出てきたレイスに、シエルが恐怖の絶叫を上げる。
シエルの悲鳴をBGMにして、俺達は第6階層を攻略していくのであった。
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