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46.帰宅

 国王および王女殿下との話し合いを終えた俺達であったが、その日はバスカヴィル侯爵家の屋敷に帰宅することになった。

『永久図書館』への立ち入り許可を得たものの、相手は最難関のダンジョンの一つ。探索の前に十分な準備が必要となる。

 出立は後日ということにしておいて、今日のところはお開きになったのだ。


「あ、お帰りなさいませ。ゼノン坊ちゃま、エアリスさんも」


「ああ」


「ただいま戻りました、レヴィエナさん」


 帰宅した俺とエアリスをメイドのレヴィエナが出迎えてくれた。

 彼女はいつものようにメイド服を身につけており、穏やかな笑みを浮かべて俺達を出迎えてくれる。


「随分と遅かったですね? 何かありましたか?」


「……まあ、色々とな。いつも通りの面倒ごとだよ」


「それはそれはお疲れ様です。夕食の準備ができるまで少し時間がありますが……先にお風呂にされますか?」


「飯が先でいい……食わなきゃやってられない気分だからな」


 俺は忌々しげに吐き捨てて、上着を脱いでレヴィエナに預けた。


 予定していた通りに『永久図書館』への立ち入り許可を得たのは良いのだが、余計なおまけまでついてきた。

 王女であるエレクトラ・スレイヤーズを同行させることになってしまったのである。


 エレクトラはゲームでも仲間にすることができるサブキャラだった。

 実力はそれなりに強く、『高位呪術師(ドルイド)』という珍しい職業だったこともあり、重宝する仲間キャラのはずである。

『高位呪術師』は『呪術師(シャーマン)』、『召喚師(サモナー)』からクラスアップすることができる上位職であり、召喚魔法と補助魔法を得意としている魔法使いだった。

 精霊や魔獣を召喚して補助魔法によって強化、さらに敵にデバフをかけて弱体化させるというのがこの『高位呪術師』の戦い方であり、パーティーメンバーに入れていると色々と役に立つ場面が多い。


 本来であれば色々とイベントを起こさなくては仲間にできないエレクトラを仲間にできたのは、ある意味では幸運といえなくもない。

 だが……素直に喜ぶことができないのは、彼女が王族であり、仲間にすることで連鎖的にサブイベントが進行してしまうからである。

『王家の三姉妹』というサブイベントはメインシナリオの攻略と直接関係はないものの、難易度だけならば魔王城攻略並みに面倒臭いものだった。

 普段であればまだしも、レオンが闇墜ちしたり面倒事を抱えている状態でこのイベントを進めたくはない。


「……部屋で休む。夕飯ができたら教えてくれ」


「私も着替えてきます。夕食の手伝いをさせてもらいますね?」


「畏まりました。どうぞ、ごゆるりとお休みください」


 恭しく頭を下げるレヴィエナに見送られて、俺は自室に入った。エアリスもまた自分の部屋に戻っていく。

 普段から女性陣が入りびたりになっている部屋には、中央にキングサイズの巨大なベッドが置かれている。

 少なくとも五人が横になれるサイズがあった。具体的に誰が眠るのかは口にしないが、アラブの石油王が使っていそうな豪勢なベッドである。


「ハア……怠い……」


 俺は倒れるようにしてベッドに横になった。

 さほど体力は使っていないものの、やはり王様と謁見した精神的な疲労は大きい。

 貴族としての振る舞いにはそれなりに慣れてきたつもりだが……所詮は日本のしがないサラリーマンということだろうか。王様なんて殿上人と会うのはやはり緊張してしまう。


「王様だの王女様だの、まともに相手をしてられるかよ……RPGの主人公ってのは肝が据わってるよな」


 どうして、ゲームの主人公は平然と王侯貴族と話をすることができるのだ。

 やはり世界を救う主人公というのは性根が違う。俺のような紛い物とは違うということか。


「……少し、寝るか」


 横になると、途端に眠気が出てきた。

 夕食ができるまで少し時間があるとのことだし、仮眠でも取らせてもらうとしようか。

 俺は瞳を閉じて、つかの間の安息に意識をゆだねたのであった。


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