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45.爆弾王女


「あの……エレクトラ殿下、それはどういうことでしょうか?」


 エレクトラに詰め寄られて固まっている俺に代わり、エアリスが質問を投げかける。

 ついでに俺とエレクトラの間に身体を割り込ませてきて、詰め寄られたことで押しつけられていた巨大な胸部から引き剥がす。


「あそこは国王陛下に認められた人間以外には立ち入り禁止の場所。いかに王女殿下といえど、連れていくわけにはまいりません」


「ええ、エアリス。もちろん知っているわ。だけど……許可を受けたバスカヴィル侯爵と一緒ならば問題ないはずよ」


 エアリスの問いに、エレクトラが答えた。


「私はかねてより『永久図書館』で調べたいことがあったのだけど、お父様が立ち入りの許可を出してくれなかったのよ。お父様から無理難題を突きつけられて途方に暮れていたのだけど……そんな折、バスカヴィル侯爵があの場所への立ち入り許可を得た。この機会を逃す馬鹿はいないでしょう?」


「……理屈はわかります。けれど、それはあまりにも迂闊ですわ。エレクトラ殿下」


「…………そうだな。正気を失うくらいには」


 エアリスの言葉に俺も溜息交じりに同意する。


『永久図書館』はシナリオクリア後の追加要素として入ることができるダンジョンである。

 もちろん、そこに登場してくるモンスターも尋常ではなく強い。

 すでに俺は魔王と戦えるくらいの力を身につけているものの、それでも100%安全だとは言い切れないほどの危険地帯である。

 そんな場所に王女殿下を連れていくとか、どんな冗談だ。万が一の事態があったら責任を取り切れない。


「いくら何でも、そんな場所に王女殿下を連れていけるわけがないでしょう。国王陛下が許可を出すとでも?」


 エアリスが珍しく表情を顰めて訊ねると、エレクトラが「フフン」と得意げな笑みを浮かべて胸を張った。


「あら、お父様からの許可はもう貰ってましてよ?」


「は……?」


「貴方を追いかけるよりも先に、ちゃんとお父様に話は通してあります。『バスカヴィル侯爵には十分すぎる宝物を献上してもらった。返礼を渡さねば』とのことよ」


「つまり……王女殿下が同行してくださることが返礼であると?」


「そういうことになるわね」


「…………」


 エアリスが口元をわずかに引きつらせている。


 気持ちはとてもよくわかる。

 個人的な心境としては、御礼の品を受け取ったというよりも厄介者を押しつけられたという心境であった。


「おいおい、あの国王……もしかして、また無理難題を放り込むつもりでこんな爆弾を送り込んできやがったのか……?」


「何か言ったかしら、バスカヴィル侯爵? 爆弾とか聞こえたけど……?」


「言ってませんよ……王女殿下。お話はわかりましたが、信頼できるかどうかもわからない人間についていくのは危険ではありませんか? 俺が……バスカヴィル家が社交界で何と呼ばれているのか知らないわけではないでしょう?」


「『悪の権化』、『スレイヤーズ王国の黒幕』でしょう? 心配しなくて良いわ。私は噂で人を左右するような器の小さい人間ではないから」


 エレクトラはいっそ憎らしいとすら思える爽やかな笑みを浮かべ、両手を広げる。

 先ほど、バスカヴィル侯爵家に嫁いだエアリスを必要以上に案じていたような気がしたのだが……舌の根も乾かぬうちに何をほざいているのだろう。


「こう見えても、それなりに魔法だって使えるつもりよ。私が貴方達を手伝ってあげるのだから感謝なさい!」


「「…………」」


 エレクトラの言葉に、俺とエアリスが顔を合わせて溜息をつく。


 こうして、『永久図書館』に向かう四人目のメンバーが決定した。


 相手はエレクトラ・ル・スレイヤーズ。

 スレイヤーズ王国の国王の娘。やんごとない生まれと育ちの王女殿下である。



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