30.田舎の朝
「ふあ……おはようございます、ゼノンお兄さん……」
翌朝、部屋まで俺を起こしにきたのはモニカだった。
淡いグリーンのパジャマに身を包んだモニカであったが、パジャマの上着は乱れており、肩やらヘソやら露出してしまっている。
「おはよう。どうした、えらく眠そうだな?」
「うう……よく眠れなかったの。頭がガンガンするよう……」
「ああ……なるほどな」
モニカは母親からのプロレス技を喰らい、気絶するようにして眠っていた。
あんな眠り方をしたのだから、翌日まで不調を残してしまうのも当然である。
「母の愛は偉大ってことだろ。家出した自分が悪いんだから自業自得だな」
「うう……イジワルなこと言わないでよう。これじゃあ、お兄さんについて行きたいとか言えないよう……」
モニカはこれから母親にお願いして、俺達に同行して王都に行くことに同意をもらわなければいけない。
レオンを探すために必要なことなのだが……昨日の様子を見る限り、許可をもらうのは難しそうである。
「お兄さんが代わりにお願いしてくれたら助かっちゃうんだけど……」
「逆効果だろ。異国に売り飛ばすつもりじゃないかとか思われるぞ?」
俺の悪人顔が見えないのだろうか。
こんな顔でお宅の幼女をうちに下さいとか言えるものか。官憲を呼ばれてしまうだろう。
「まあ、すぐに言い出す必要もないだろう。俺はしばらくこの村に滞在するつもりだからな」
「あれ? そんなにレオンお兄ちゃんの部屋が気に入ったの?」
「……キモイことを言うんじゃねえよ。済ませる用事がいくつかあるだけだ」
コラッジョ村には消化して起きたいサブイベントがいくつかある。
それを済ませるまではここに……はいくら何でも迷惑だろうから、村にある宿か馬車の中で寝泊まりするつもりだ。
「俺のことは気にしなくてもいいから、母親のことをちゃんと説得しろよ」
「うん……がんばる」
「頑張れ……ところで、他の連中はどうした? 姿が見えないようだが?」
「エアリスさんとシエルさんはお母さんと一緒に朝ごはんの準備をしているよ。ナギサさんとウルザちゃんは森に狩りに行ったみたい。メーリアさんは畑でお野菜を取ってるよ」
「へえ……田舎ライフを満喫してるじゃないか」
「ご飯はもうちょっとでできるから、お兄さんはまだ寝てても良いよ」
「了解。適当に寛いでおこう……お前もさっさと着替えてこい。パンツ見えてるぞ」
「え……ひゃあっ!?」
モニカが慌ててずり下がったズボンを直す。
履き古したパジャマのズボンはゴムが緩くなっていたらしい。ピンクの下着が見えていた。
「お兄さんのエッチ! レオンお兄ちゃんみたいなことしないでよね!」
「レオンにも下着を見られてるのか……いや、ラッキースケベは主人公の特権だけどな」
ゲームの中でも、転んだ拍子にヒロインのスカートの中に顔を突っ込んだりしていたものだ。
ああいうラッキースケベはどんな確率で起こるのか謎である。
「さて……さっさと着替えるか」
プリプリと怒ったモニカが部屋を出ていくのを見送り、俺はさっさと着替えることにした。
寝間着の代わりにしていたシャツと短パンを脱ぎ捨て、いつもの装備に着替えていく。
普段は裸で寝ることも多いのだが、さすがに人の家ということもあって、ちゃんと服を着ていたのである。
今日の予定であるが……コラッジョ村の周辺で起こるサブイベントを回収して回ろうと思う。
本来であればレオンの仕事なのだが、あの男は学園入学から故郷に一度も帰っておらず、放置したままになっているようだ。
昨晩のように貴重なアイテムを回収できるかもしれないし、放置しておけば後々厄介なことになるイベントもある。
せっかくの機会だから、ここで済ませてしまうとしよう。
「ん……そういえば、何かを忘れているような……?」
思い出せないということは、それほど重要なことではないのだろう。
気にしないことにして、黒の上着を肩に羽織るのであった。




