20.戦乙女
今年も一年、ありがとうございました。
来年もよろしくお願いいたします。
モニカがクラスチェンジして、すぐに最初の戦闘が勃発した。
現れたのは大きなムカデのモンスター。『ポイズンチェイン』と呼ばれている虫型の怪物である。
「エイッ!」
『ギイッ!?』
モニカが振るった蛇腹剣が大ムカデの身体を切り裂いた。
固い甲殻を有した虫型のモンスターであったが、モニカの剣は節目の柔らかい部分へと的確にヒットする。
『ギッ! ギッ!』
「んっ! 遅いよっ!」
ポイズンチェインが苦し紛れに噛みついてくるが、モニカは軽やかなバックステップで回避して、また蛇腹剣を振るう。
回避。攻撃
回避。攻撃。攻撃
回避。攻撃。攻撃。攻撃。回避。からの、また攻撃。
危なげない戦いぶり。
敵が一体であれば、もはや俺やナギサが助けずとも一人で倒せるようになっていた。
もちろん、エアリスがかけた援護魔法がなければもっと苦戦していただろうが……それでも、敗北することはなかっただろう。
それくらい、余裕をもって戦うことができていた。
「……凄まじいな。元々、センスがあるとは思っていたが、クラスチェンジして動きに磨きがかかっている」
「ああ、洗練された動きだ……正直、私があの子くらいの年にあそこまで動けるかと聞かれたら難しいだろう」
俺のつぶやきにナギサも同意した。
勇者の血筋がなせる業なのか、それとも『戦乙女』という新種のジョブの効果なのだろうか……モニカは明らかに年齢からかけ離れた動きで戦闘できるようになっている。
もちろん、現時点では俺やナギサ、ウルザらには遠く及ばないものの、潜在能力だけならば上回っているかもしれない。
「まさに金の卵。猫の子が獅子に化けたようだ」
「あ、お兄さん! やっつけたよ!」
戦闘が終了した。
蛇腹剣で器用に大ムカデを解体したモニカがこちらに戻ってくる。
幼い相貌に満面の笑みを浮かべたモニカであったが、目立った傷は負っていなかった。額に汗をかいているが無傷である。
「よくやった……いや、本当に呆れるくらいに見事だったよ」
「褒められてるんだよね、やったあっ!」
モニカがピョンピョンと飛び跳ねる。
無邪気で子供っぽい仕草だ。とても愛らしい。
考えても見れば……ウルザのような年齢詐称の見た目ロリは周りにいるのだが、純粋に幼い少女とは接したのは初めてかもしれない。
クエストやイベントでモブキャラの幼女と会ったことはあるが……いずれも俺の悪人顔を見るや、逃げるか泣くかのどっちかだった。
「俺を怖がらないロリというのは貴重なのかもな……いや、だからどうしたという話ではないが」
俺はゆっくりと首を振って、バッグからいくつかのアイテムを取り出してモニカに渡した。
「……お兄さん、これは何かな?」
「スキルオーブだ。使っていいぞ」
手渡したのはスキルの習得に必要なアイテム……すなわち、スキルオーブである。
何度かモンスターと戦ってもらったことで、おおよそ『戦乙女』というジョブについて把握することができた。
その戦闘スタイルに基づいて、役に立ちそうなスキルを選別して渡しておく。
「俺は『戦乙女』というジョブを知らん。だから、どのスキルが向いているのかもわかっていない。今、渡したスキルオーブは重複して持っているやつだから無駄になっても構わない。修得しておけ」
モニカのジョブ――『戦乙女』はゲームには登場しなかった特殊なジョブ。つまり、ヘビーユーザーであった俺でさえも情報を把握していない。
どんなスキルを修得すれば役立てるのかもわからないため、どうしても育成は手さぐりになってしまう。
だが……確実に強くなれるはずである。
俺の予想が正しければ、『戦乙女』はレオンの『勇者』や俺の『夜王』にも匹敵するジョブだ。
彼女を育成すれば、魔王の心臓を射抜くことができる矢の一本になるかもしれない。
「うん! ありがとう、お兄さん!」
「む……」
モニカが抱き着いてきた。
太陽のような笑みで。少しも媚びる様子のない純粋な顔で。
「モニカね、ゼノンお兄さんのこと、レオンお兄ちゃんの次くらいに大好き!」
「……そうかよ、良かったな」
「うんっ!」
「…………」
俺はまっすぐな好意にたじろぎ、渋面になることしかできなかった。
「ねえ……皆さん、見てください。モニカさんが女の顔をしていますよ?」
「ああ、新たな敵だな。強敵になるだろうな」
「ガクブル……手強そうですの。またウルザ以外のロリが出てきましたの」
そんな俺達を見て、エアリスとナギサ、ウルザが超新星の登場を感じ取って戦慄しているのであった。




