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45.続・クリア報酬


 虫型の悪魔――マルマルトスが倒れて消滅するのと同時に、部屋の中央に宝箱が出現した。20階層のクリア報酬である。


「さて……それじゃあ、報酬の確認といこうか。リューナ、宝箱を開けてもいいぞ」


「わ、私ですか?」


「20階層のクリア報酬も何が出るかはランダムだ。何となくではあるが……このメンツの中でお前が1番運が良さそうな気がする」


「そうね、私も賛成よ。開けてちょうだい」


「……おかしなものが出ても怒らないでくださいね?」


 姉のシャクナにまで勧められ、リューナが渋々といったふうに宝箱に近づく。

 シャクナが盲目の妹の手を引いて宝箱の前まで連れていくと……リューナは緊張した面持ちで宝箱に触れる。


「えいっ!」


 覚悟を決めたのか、勢いよく宝箱を開くと……中には掌に収まるほどの宝珠が治められていた。

 リューナが手探りで虹色に輝く宝珠を手に取り、不思議そうに首を傾げる。


「これは……何でしょう? 玉……宝石ですか?」


「へえ……ランダムオーブか。なかなか面白いものを引くじゃないか」


「ランダムオーブ……ですか?」


『ランダムオーブ』はスキルオーブの一種であり、ユニークスキルを名前の通りランダムで修得することができるというものだった。

 特定のジョブにしか覚えられないスキル、魔族やモンスターでなければ使うことができないスキルすら、ランダムオーブを使うことで修得できる可能性があるのだ。

 もちろん、使い道もないハズレのスキルが出ることもあるのだが……運試しとして、プレイヤーの間ではそれなりに楽しまれていた。


 俺もゲームをプレイした際には【エラ呼吸】とか【ハサミ攻撃】とか明らかに人間の技じゃないスキルを修得してしまい、苦笑いさせられたものである。


「へえ、使ってみるまで何が出るかわからないってことね。面白いじゃない」


 俺の説明を聞いて、シャクナが愉快そうに両手を合わせた。


「それじゃあ……リューナ、使ってみてちょうだい。何を覚えることができたのか教えてね?」


「わ、私が使うのですか!? お姉様やバスカヴィル様が使った方が戦闘の役に立てると思いますけど……」


「リューナが出したアイテムなのだから、リューナが使った方が良いでしょう? 私はそういうクジ運が良くないもの。リューナに使って欲しいわ」


「確かに運は悪そうだな。さっきエロトラップにも引っかかったばかりだし」


「そこ、うるさいわよ! 姉妹の会話に入ってこないの!」


 ぼそりと水を差した俺を叱り飛ばし、シャクナはリューナにニッコリと微笑みかける。


「リューナが強くなれば、私達にとっても助かるわ。貴女はこのパーティーで唯一の後方支援役なんだから」


「お姉様……」


「俺もそれで構わない。どうせスキルスロットはいっぱいだし……ハディスもそれでいいよな?」


「…………」


 壁際に立っていた神官騎士が無言で頷く。

 全員の了承を得て、リューナが「そういうことでしたら……」と両手に包んだ七色の宝珠に唇を近づけていく。

 すると、オーブから空気に溶けるようにして消滅し、七色の光のモヤがリューナの口の中に吸い込まれていく。


「あ……」


「どうだ? 何のスキルが修得できた?」


「ひえっ!? えっと……これは、その……!」


 尋ねると、何故かリューナが慌てたようにあたふたとする。

 突然の挙動不審。よほどおかしなスキルでも引いたというのか……リューナは姉の背中の後ろに隠れてしまった。


「……お前、本当に何を覚えたんだよ。そのリアクションは気になるのだが?」


「き、聞かないでくださいっ! いやらしいですっ!」


「いやらしいのかよ!?」


「バスカヴィル様のエッチ! スケベです!」


「そうね。あの男はスケベね。覗きの犯罪者。リューナに近づかないでちょうだい」


 シャクナまでもが謎の援護射撃をしてくる。

 いや、俺が何をしたというのだ。どんなスキルを覚えたのか訊いただけだろうが!


「風評被害が物凄いな!? いや、本気で気になるから何を引いたのかだけ教えてくれ! 別に使ってみろとか言わないから!」


「無理です、恥ずかしくて死んでしまいますっ! 結婚するまでお預けです!」


「結婚するのか!? え、俺とリューナが!?」


 顔を真っ赤にして首を振るリューナ。

 結局、彼女はその後もランダムオーブで何を修得したのか明かすことはなく、モヤモヤとした気分のまま20階層の攻略を終えたのであった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です! [気になる点] >どんなスキルを覚えたのか リューナはもともと相手の心をある程度読めたはずだから……その能力が更に強化されたか、それとも未来予知系か。 [一言] 続き…
[良い点] いや、話したくないならしつこく聞くべきじゃないと思いますよ。 しかし、よっぽどエロいスキルでしょうか?(笑)
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