表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
137/266

36.サロモンの王墓

 サロモンの王墓。

 それは追加シナリオ『翡翠の墓標』に登場するEX(エクストラ)ダンジョン。

 攻略難易度マックスの鬼レベルダンジョンである。


 構成は全100階層。

 魔術王と呼ばれた古代の王サロモンが眠っている場所であり、サロモンが生前に地獄から召還した悪魔系モンスターが内部を守っている。


 これはいわゆる腕試しのためのダンジョンであり、シナリオとは全く関わりはない。仮に攻略することなくスルーしたとしても、物語には一切、支障は生じない。


 モンスターの強さは階層深くに潜るほど強くなっていき、80階層以下になると、ラスボス討伐後のパーティーであっても苦戦するような強敵がゾロゾロ出現してくる。

 最下層にいるダンジョンボス『キング・サロモン』にいたっては魔王以上の強さであり……【霊体】、【対魔障壁】というスキルの効力により、物理攻撃無効、魔法ダメージ10分の1という理不尽極まりない設定になっていた。


 そんな裏ボスが潜んでいる『王墓』であったが、危険な場所だけあってダンジョンを攻略するメリットは大きい。


『王墓』には10階層ごとに中ボスが待ちかまえており、彼らを倒すことで『サロモンの秘宝』を手に入れることができるのだ。


 聖剣に匹敵する攻撃力の武器だったり、あらゆる攻撃を無効化する防具だったり、魔法反射効果のあるアクセサリーだったり……全ての魔を解くアイテムである『オシリスの王笏』もそんな秘宝の1つ。50階層を攻略することで手に入る秘宝だった。


「なるほど……確かに、王笏があったら、導師とやらにかけられた呪いを解除することができるだろうな」


 ハディスが語った説明に、俺はうんうんと頷いた。


 オシリスの王笏はあらゆる状態異常、デバフなどの魔法効果を解除することができるアイテムだった。

 地味な効果のように思えるかもしれないが……ポーションのように使用したら消費してなくなってしまうこともなく、治癒魔法のように魔力を消費することもない。

 おまけに、1度でパーティー全体に異常回復の効果をもたらすことができるのだから、役に立つ場面はかなり多い。


 王が導師にかけられた『洗脳』が状態異常の一種であるとすれば、王笏を手に入れれば全て解決することになる。


「王笏か。俺の手持ちにあればよかったんだがな……」


 俺もゲームでは『サロモンの王墓』を攻略したことがあるが、オシリスの王笏は手持ちがない。パーティー全体に異常回復という便利な効果のあるこのアイテムだったが、使用時に1パーセントの確率で壊れてしまうのだ。

 俺がゲームで手に入れた王笏は壊れてしまっており、『成金の部屋』で回収した周回アイテムの中にも入っていなかった。


「『王墓』を攻略して王笏を手に入れるのは構わないが……ふむ?」


 だが……俺の脳裏に浮かぶ疑問があった。

 王笏によって事態が解決するならば……どうして『翡翠の墓標』のシナリオ開始時点でリューナが命を落としており、王がなおも暴君として君臨していたのだろうか?


 ひょっとしたら、これからシャクナ達が挑むことになる『王墓』探索は失敗してしまうのかもしれない。

 王を導師の洗脳から救い出すためにEX難易度のダンジョンに挑んだ結果、失敗してリューナは命を落としてしまう。

 王笏を手に入れることもできず、洗脳を解くこともできず、結果的にこの国は内乱に発展したのではないだろうか?


 頭の中で考えを纏めて……俺は改めて、2人の王女へと目を向ける。


「『王墓』の難易度は階層によって大きく異なる。出てくるモンスターの強さも、トラップの悪辣さもピンキリだ。50階層ともなれば、並の冒険者じゃ悪魔の餌にしかならないだろう。この中の何人が生きてお天道様の下に出てこれるかわかったものじゃない……それを覚悟の上で、まだ王墓に挑戦するつもりか?」


「もちろんよ! 当然じゃない!」


「はい、それで父を救えるのならば」


 姉妹の王女は同時に答えた。

 ツリ目の鋭い瞳と、タレ目の柔和な瞳。

 正反対の眼であったが……そこに宿っている光は同じ。揺るぎない意思が浮かんでいる。


「やめろと説得しても聞かないだろうな。是非もなし……いいだろう。同行させてもらう」


 俺は肩をすくめて、姉妹の提案を受け入れることを決めた。


 俺が同行することでリューナの命が救われ、将来的に起こるであろう内乱を回避することができるのなら安いものだろう。


「君らは放っておいたらすぐに死んでしまいそうだからな。か弱い乙女が悪魔のオモチャにならないよう、子守りでもさせてもらおう」


「ムウ……いちいち、嫌みな男なのね。貴方は」


「さすがはバスカヴィル様です。頼りにさせていただきますね?」


 シャクナが不満そうに腕を組み、リューナが両手を合わせて華やいだ声を上げた。

 どこまでも対照的な姉妹に、俺は改めて二人を死なせてなるものかと決意を深める。


 かくして、次の目的地が決まった。

 向かう先はEXダンジョン――『サロモンの王墓』

 王都で仲間と合流するよりも先に、魔術王が眠る悪魔の巣窟へ向かうことになったのである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミカライズも連載中!
i000000


☆書籍第1巻発売中!☆
↓画像をクリックしてみてください↓
i000000
― 新着の感想 ―
[一言] 仲間無しで行くのか…… 辛たん(>人<;)
[良い点] 更新お疲れ様です! [気になる点] >だが……俺の脳裏に浮かぶ疑問があった。 >王笏によって事態が解決するならば……どうして『翡翠の墓標』のシナリオ開始時点でリューナが命を落としており、王…
[一言] 何と言うか、方法としてはアリですが、レアダンジョンなら攻略失敗の可能性も普通に有るぽい。中々リスク有りの解決策ですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ