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14.勇者の血筋


 ポラリスが差し出した紙の束を受け取り、俺はサッと視線を滑らせた。

 分厚い書類には、諜報機関である『星読み』に依頼していた調査結果が詳細に記されている。

 俺は10分ほどかけて書類の内容を確認し……やがて重々しく口を開く。


「……ここに書いてあることは事実か?」


「もちろんだとも。盟主殿は我々の調査が信用できないかな?」


「そんなことはない。ないのだが……さすがに予想外だ。頭痛がしてきたよ」


 俺は小さく舌打ちをして額を指先で抑えた。

 書類に書かれているのは、かつて魔王を封印して世界を救った勇者──その子孫の消息についてである。


 勇者が誰と結婚して子を成し、その子供がどのようにして生きたのか。孫は、曾孫は、そのさらに子孫は何処にいるのか。現代にいたるまでの勇者の血筋についての情報が事細かに記されていた。

 レオン以外の勇者の子孫を見つけ出し、魔王を封印するための戦力として確保する。そのための調査として『星読み』に勇者の血統について調べさせていたのだが……その結果は信じがたいものである。


「お前達の調査能力を疑うつもりはないが……いくらなんでも信じがたいな。魔王を封印した伝説の勇者の子孫、レオン以外の人間がここ10年でほとんど死亡しているなんて」


『ダンブレ』のゲームではレオン以外に勇者の子孫は登場することなく、レオンが魔王を倒すことができる唯一の人物であると説明されていた。

 ゲームをプレイしていた当時はそういう設定だと不自然に思わなかったが……考えても見れば奇妙なことである。

 先代勇者が魔王を倒したのは300年も昔のこと。ならば、血筋の濃い薄いは別としても、勇者の血を引く人間がもっといたとしてもおかしくはない。


「レオンの父親は事故で死んでいる。祖父や叔母、従兄妹も全滅。他の勇者の子孫もほとんどが死に絶えていて、この世に残っていない……この世界には勇者の子孫しか罹らない伝染病でも流行っているのか?」


 呪いか祟りとでも疑いたくなるような不自然な死にざまである。

 レオン以外の勇者の子孫を見つけて育てることで魔王に突き刺す刃にする──それが俺の計画だったのだが、早くも頓挫してしまったようである。


「とてもじゃないが偶然では片付けられないな……勇者の血筋を絶やそうとしている者がいると考えて間違いない。やはり魔族共の仕業だろうか?」


「おそらく、盟主殿の想像通りだろうね。事故や病気、死因は様々だけど、どれも不審なものばかりだ。何者かが裏で糸を引いているのは間違いないはず」


 ポラリスが困ったように首を傾げながら、調査結果を補足してくる。


「『自分は勇者の子孫である』──そう自称している人間はもちろん、おそらく先祖の偉業を知らなかったであろう子孫まで片っ端から死んでいる。それはもう周到に……執念深さと慎重さ、そして狂気すら感じさせられる丁寧さでキッチリと殺害している。よほど勇者が怖いんだろうね。魔族は……」


「だとすれば……どうしてレオンは生きているんだろうな。アイツの親戚連中は死んでるんだろ?」


 それは以前からあった疑問である。

 最初のダンジョンにいたガーゴイル、後に送り込まれたシンヤ・クシナダ──レオンに魔王の手先が送り込まれるようになったのはいずれも学園入学後。

 もっと早く刺客が送り込まれていれば、物語が開始することもなく主人公は死んでいたことだろう。

 ゲームの強制力的な力が働いている可能性もあるので、深く考えても意味がないかもしれないが。


「さて……問題は生き残っている勇者の子孫だな。レオンのように生き残っているものがいるといいんだが……」


 勇者一族の生き残りについては何故か資料に記載されていなかった。

 何故か……というか、おそらくポラリスが自分の口から伝えたくてわざと資料に書かなかったのだろう。

 案の定、ポラリスは「待ってました!」と言わんばかりに得意げな顔になって指をパチリと鳴らす。


「よくぞ聞いてくれました! もちろん、ちゃんと調べてあるよ。勇者一族の生き残りについてね!」


 ポラリスは制服に包まれた胸を張り、人差し指を立てて口を開いた。


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