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圭天 不老少女の憂鬱  作者: 吉田深一
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多胡羊介の離婚⑤ 懊悩

それからの羊介も決してあきらめた訳ではない。


夫婦の愛情、家族の絆などを取り戻すために必死に奔走した。


最初の美紀との話し合いこそ、これ以上ない大失敗だったのだが、そもそもあれは美紀の誤解からくる暴走から始まっている。


誤解させるようなことをした自分も悪かったと反省し、羊介が浮気をしているなどという、とんでもない誤解を解くことから始めなければいけない。


まず、美紀に昨夜謝罪したのは妻を思いやれなかったことに対しての謝罪で、浮気をしたことについての謝罪ではない、と伝える。

美紀の反応は、その話はまた今度にしましょう、などというそっけないものだったのだが、とりあえず言うべきことは言った。


そして、最初に圭だと診断された診療所を探す。

診療所は容易に見つかった。立花診療所という診療所だ。


早速医者に話をつけ、妻の実家に子供たちを預かってもらい、しぶがる美紀を頼み込むようにして連れて行った。


医者は親切にも、もう一度、妻の前で圭について説明してくれた。


なぜか医者は私には愛想良くしてくれる。

看護婦さんに会うのも二回目だ。

目が合った時、少し微笑んでくれた。大変ですね、という意味だろう。

羊介も会釈を返した。よく見ると可愛らしい娘だ。


美紀も医者の説明に途中で質問をはさんだり、熱心に聞いていて、理解してくれたように見える。


これで誤解も解けて、元のような仲の良い家族に戻れる筈だ。


羊介はそう信じていたのだが、なぜか医者に連れて行ってからも美紀の態度はそれほど変わらなかった。


帰ってきた頃こそ笑顔を見せたり、羊介の体を心配してくれたりしたのだが、すぐに元に戻ってしまった。


浮気をしているとの誤解は解けた筈なのだが、不信感は完全に払拭されてないようだ。

浮気とか関係なく、つまらないことでの夫婦間の衝突が多くなった。


そしてその日も、ささいな言い争いからの美紀の暴言により羊介は思わず手を上げてしまった。


羊介もストレスが相当溜まっていたようだ。


羊介は我に返り必死で謝ったのだが、美紀は決して許してくれず、子供たちを連れて実家に帰ってしまった。


美紀に手を上げたのはもちろん初めてだ。


美紀の実家には何回も美紀を迎えに行くのだが、美紀にも子供たちにも会わせてくれず、義母に追い返され、謝罪すらさせてくれない日々が続いている。


そして久しぶりの美紀の訪問。


とうとう離婚を言い渡されてしまった。


子供たちに会いたい。もう一度美紀さんの笑顔が見たい。


しかし正式に離婚を言い渡されてしまった羊介には再度妻の実家に行く気力がない。


現状を冷静に俯瞰ふかんして見てみると、確かに浮気こそしていないが、性行為ができないのは事実だし、それもできるようになる見込みもない。


美紀さんからしてみたら、一生自分に触れようともしてこない旦那と一緒にいるのは、女性として耐えられないことなのかもしれない。


性行為ができないことなど、夫婦間の愛情さえあればささいな問題だと思い、今まで頑張ってきたのだが、それは自分のわがままで、考えが甘かったのかもしれない。


やはり美紀さんの為にも離婚した方がいいのだろうか? 


でも、やはり、美紀さんと美香と洋一と、家族で笑いあいながら仲良く暮らしていた、かつての日々を思い出し、涙を浮かべる。


もう本当に取り戻せないのか。


一人で思い悩みながら寂しく過ごしていたら、日曜日、家に訪問客があった。

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