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圭天 不老少女の憂鬱  作者: 吉田深一
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多胡羊介の離婚⑩ 彷徨

現状を打破する為に洋介も弁護士を探すことにした。


離婚のことはぼんやりと考えていたのだが、それでも美紀さんと裁判で争うなんて、考えたこともなかった。


それでも何もしなければ現実的に裁判に持ち込まれるし、羊介一人であの浜尾弁護士と条件交渉なんてできるわけがない。


身ぐるみ剥がされた上、やってもいない浮気も認定されかねない。

そして美紀さんには誤解されたまま、子供たちとも一生会えなくなる。


考えただけで恐怖に身がすくむ。

文字通り人生がかかっている。

しかし弁護士のつてなど羊介にはない。


恥を忍んで上司にある程度誤魔化しながら事情を言い、上司の知り合いの弁護士を紹介してもらうが、その弁護士はあきらかにやる気がなかった。


話もろくに聞いてもらえなかったし、美紀の代理人弁護士浜尾沙織の名前を言った途端、あきらかに腰が引けていたように見えた。


とても自分の人生を託すような気にならない。

羊介の方から丁重に断る。

弁護士は心なしかほっとしたような顔をしていた。


その後にもあらゆるつてを頼って、三人の弁護士に会った。


どの弁護士にも事情を話してみるが、あきらかに面倒臭がっているのが雰囲気でわかる。


羊介の頼もしい味方になって浜尾弁護士と戦ってくれそうな人などいない。

しかしこれだけの弁護士に会えば、羊介にもわかることがある。


夫側についた離婚案件など弁護士にとって面倒くさいだけで金にならず、できるなら避けたい仕事であること。


そして美紀側についた代理人の浜尾沙織弁護士は、弁護士の間でもかなり名が通っていて、できることなら敵に回したくない弁護士だということだ。


羊介も弁護士に会う度に心が疲弊していく。


最後に会った中年の弁護士など半笑いで、本当は浮気してたんじゃあないの、なんてからかうようなことを言うものだから、羊介らしくもなく軽く口論になってしまった。


しかし羊介が弁護士相手に口論しても感情をぶつけるくらいしかできない。

程よくあしらわれて、追い出されてしまった。


羊介は絶望しながら、わざわざ弁護士に会う為に来た土地勘のない町をあてもなく彷徨さまよう。


少し涙も出てきた。


自分は一生女を抱くこともできないし、家族も失いかけている。


浜尾弁護士の言う通りの条件で離婚したら、慰謝料と養育費を支払うだけの寂しい人生になってしまうだろう。


しかし浜尾弁護士に言われた期日も、もう一週間を切っていて、時間もない。


もうどうなってもいいか、なるようになれと半ば自暴自棄になって繁華街の方に足を運ぶ。


やけ酒でも飲んで一瞬でも辛い現実を忘れようかと考える。


さてどこの店で飲もうかと付近を見渡していた時、ある看板が目に止まった。


”浦持真太郎法律事務所”


こんなところにも弁護士事務所があるのかと足を止める。


まだ日も高い。


紹介もなしにいきなり飛び込みで入ってきた客なんて弁護士がまともに相手してくれるわけがない。どうせここの弁護士も今まで会ってきた弁護士たちと同じだろうとも思うのだが、何故か気になり、ここに来てしまったのも縁だろうと思い、弁護士事務所の扉を開けた。


どの道羊介に失うものなどない。

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