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チャンバラディストピア!!  作者: 藤夏燦
血で染まる大気圏
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二つの結末

 すべては一瞬のうちの出来事だった。メカドとデスは飛び上がり、お互い空中で剣を振り下ろす。しかしデスの方が少し早く、メカドはその毒のある剣で切り裂かれそうになる。間に合わない! メカドは咄嗟に右手から剣を離し、デス目掛けて放り投げる。


「ぐっ、ううぅ……」


 静かで鈍い声が格納庫を包んだ。デスの剣がメカドの目の前で止まり、青紫色の毒が一滴ずつ垂れ始めている。メカドの剣はデスの頭に垂直に突き刺さり、顔中に貼られたお札が深紅の血で染まっていく。すぐにデスは口から大量の血を吐くと、そのままメカドと一緒に床面へ落下した。メカドは体を仰向けにして横になる。デスはもう動かない。戦いそのものを楽しむ残忍な殺人鬼のあまりのもあっけない最後だった。


「終わった……」


 メカドは満足げに天井を見つめた。これで家族の元へ行ける。隊長としては部下に後を託して、結末を見届けられないという複雑な思いはあったが、それでもただ今は静かに目を瞑って家族や部下たちに思いを馳せた。共存軍の軍人として平和のために精一杯戦ったのだ。唯一の心残りがあるとしたら、レッドをはじめとした部下たちの未来とシラスナの今後だろうか。部下たちのことはもう心配いらないかもしれない。とても立派に育ってくれた。亡くなったアークとフダカも含めて、最後の一言を伝えられなかったのは残念だが。それにシラスナのことも水と油のメカドが何を言っても変わらなかったかもしれない。

 軍人になった時、メカドは私怨を捨てろと教えられた。家族の復讐のために共存軍に入り、皇帝軍を同じ目に遭わせてやろうと考えていたメカドには思いもよらない教えだった。戦争なんてお互いの恨みや憎しみから士気が高まり、勝利を引き寄せるものだと思っていたからだ。しかしそれは間違いだとメカドは気づかされた。当時の上官からこう言われたのだ。


「誰を倒すために戦うかより、誰を守るために戦うかを考えなさい」


 その言葉はメカドの胸に深く突き刺さった。敵よりも味方のことをまず考える。誰を守るために戦うのか。それは未来に生きるものたちであると。メカドがずっと大切にしてきた考え方であった。

 メカドはゆっくりと心臓の鼓動に意識を傾ける。遠くの戦闘の音がぼんやりと響く。その音の中に、どこからか懐かしい声が混じって聞こえてきた。甲高く、甘く温かい。この声は息子で自分を迎えに来てくれたのだ。メカドは確信した。ああ、やっと、この長い戦いから解放される――。


☆☆☆


 最強の一斬りを手に入れた剣。ラークスはシャドゥーにむけてそれを構えながら攻撃のチャンスを伺っていた。『ストレスレベル―120超』、それは今まで剣に溜まっていた力を一気に放出し、どんな強者であろうとも一瞬でたたき切る凄まじい一撃になる。ただもちろんそれをシャドゥーに当てなければならない。ラークスは頭の中でいくつかの戦闘パターンを考えながら、シャドゥーと距離をとって浮遊していた。

 その時だ、ラークスはとても嫌な感じを胸のあたりにおぼえた。一つの命が消えたような。するとシャドゥーが言った。


「デスが死んだみたいだ。どうやら誰かと相討ちらしい」


 まるで他人事のようにシャドゥーは言った。相討ち、皇帝の旗艦へ向かったメカドやシラスナたちの誰かと刺し違えたのだろうか。それはすなわち仲間の誰かの死を意味していた。きっと嫌な感じもそこからだ。


「私たちも決着をつけましょう」


 ラークスはシャドゥーに言い放った。シャドゥーも冷静に答える。


「いいだろう」


 ラークスは手元の柄にあるストッパーをこっそりと外す。次の一斬りに120のストレスが込められることになる。


「行くぞ!」


 ラークスは再びジェットパックを最高出力にし、シャドゥーへと飛び掛かった。


「これで終わりだ!」


 威勢のいいその声は空中の戦域すべてに響き渡り、ラークスの剣はエネルギーで光と高熱を帯びている。シャドゥーは鉤爪で受け止めようとしているが、ラークスの剣の前では無意味となるだろう。数秒後にはシャドゥーは鉤爪ごとバラバラに砕け散り、はるか下の地面へと真っ逆さまに落ちていく。ラークスはそう思っていた。


「甘いな」


 ラークスは凍り付いた。シャドゥーは腰から黒い剣を抜き、ラークスの最強の一撃を受け止めていたのだ。


「お前の剣は知っている、私は地獄樹海の一の名刀マニアだからな」


 ラークスは柄を両手で握り、シャドゥーを剣で押し切ろうと力を籠めるがびくともしない。まるで子供と大人のようだ。


「なっ、なぜだ?」

「私の剣は『無』でね。個性や特徴がない代わりに相手の剣の力をなぜか無効化してしまう。どうだ、鍔迫り合いをしている感覚はないだろう」


 シャドゥーの言葉通り、剣自体や腕の力がみるみるうちに吸い取られていく。ラークスは恐怖と驚きで手が震え始めた。


「こ、こんな能力だったら、なぜ初めから使わなかった?」

「こんな能力だからこそ、はじめに見せてしまってはつまらないだろう。それだけのことだ」


 シャドゥーが頑なに鉤爪しか使わなかった理由。それは戦いを楽しむためだけではもちろんない。彼は邪気の王が皇帝を暗殺する時間を作るため、共存軍を足止めしておかなければならなかった。だからあえて時間を使い、ラークスと『遊んで』いたのだ。そんな相手にラークスが敵うはずがなかった。

 戦意喪失し、無防備になったラークスをシャドゥーが鉤爪で下から上に引っ搔き、そのまま足で地上へと蹴り飛ばした。ラークスの体は無様に宙を舞うと、下にある皇帝の旗艦に激突し、回転しながらバラバラになって雲の切れ間へと消えていった。

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