76.“メランオピス隊”始動!
“メランオピス”隊隊長レナに連れられ、俺はベルやリレイたちの待つ迎賓館の隣に位置する警備隊の詰め所へ向かっていった。
「先ほどは驚かせてしまい申し訳ありませんでした、これから新しい兵器もお見せしていただけるということもあったようなので、つい……」
(ん?そんな話俺したっけ?)
「そ、そうなんだ、もちろん優秀な君たちに使ってもらうためにね」
「ありがとうございます」
今案内してくれているレナは、セミロングの黒い髪をしており前髪を赤い髪留めで止めていた、特筆すべきは何といってもその髪の上に“猫耳”が乗っているということで、そのことを本人に聞いてみたらとレナは獣人族の出身でその中の猫種に該当する、それ以外の外見は目も黒くまるで日本の美少女のようだ、胸は鎧を着ていてはっきりしないが窮屈そうに横にはみ出ているのを見るとかなり大きいのであろう、全体に見てもすらっとしたスタイルだ。
少し気になってレナのことについて聞いてみたら、実はベルと同じ王立士官学校を卒業しているようでレナはベルの後輩にあたる。
一般的に士官学校は一部の富裕層や貴族、王族などが入学を許されるのだが、最近になってから一般市民も入学できるようになった、しかし、入学するには頭脳明晰で武に長け容姿もよくなくてはならず、入学条件はかなり厳しく設定されている。
ただ、この士官学校を卒業できれば、最低でも大隊長レベルまでの階級に上がることができ、最高で軍の高級官僚に名を連ねることもできる、逆を言えばここを卒業していないものはここまでは出世できないということだ。
そんな士官学校を一般市民として当初は“特例”で入学し、卒業するにも大変なこの学校をほかの有能な大貴族や大商人家を抜き“主席”で修了できたレナであるが、今や史上最速で部隊長に上りつめ、階級も大尉と大出世を遂げている。
向かっている警備隊の詰め所は、王宮内での警備に関する部門の訓練場を併設していて、隊員の宿舎も含めた敷地の総面積はハミルトン城とほぼ同規模を誇る。
ここの訓練場の地下施設内には、射撃場や俺の提案で設置してもらった“CQB(Close Quarters Battle近接戦闘)エリア”もある、そしてさらに食堂や入浴施設、仮眠室(防音対策済み)もあり、ここだけで1日が過ごせるようにもなっている(すべてを設置するまでにかかったのはわずか4日)。
しかし、ここは楽しむために整備してもらったわけではなく、元いた地球で重要視されている市街地・屋内での近接戦闘訓練を重点的に行うために作ってもらっている。
まずはその上の訓練場に入っていくとすでに“メランオピス”隊は整列し俺が来るのを待っていたようだ。
ベルやリレイが俺のことを見つけるや否やこっちに駆け寄ってくる。
「ワタ様?!何ですか?あのオンナ……」
「へ、陛下、私のことが嫌いになりましたか?」
「い、いや、ちょっと二人とも落ち着こうか?」
レナについてきたのが、また彼女らの“何か”に触れてしまいベルはまた黒い瘴気を放っている、一方のリレイはさっき抱きしめてあげてから少ししおらしくなってしまった。
そんな二人をあきれた目で見つつエレザたちもこちらに近づいてきた。




