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74.ヴァーテ・エレンの苦悩

 首脳陣やその取り巻きが会議室から出て行ったあと、私は一人、会議室で頭を抱えていた。

 今回のエンペリア王国との軍事援助に関する会談、女王陛下と王女殿下の拉致、王宮の警備力の見直し……などなど問題が一気に山積してしまった。


 ただ、今や総参謀本部長を務めている以上、この問題をいち早く解決に向けて取り組まなくてはならず、そのために各部署とのやり取りも即座に始めなければならない。


 (どうしよう、軍の増員は今や望めないし、かといって国王陛下にあんまり頼るわけにもいかないし……しかもエンペリア王国からの正式な援軍を頼まないと……)


 ひょっと出の国王陛下を信用していないわけではないが、生まれながらの軍人として、私は一般市民と同じように育ってきたようなお方に軍事作戦を指揮してもらうことに少しばかり抵抗を感じている。


 しかし、あの“お方”がLiSMと呼ばれる物体によって召喚される“銃”というものによって、軍の上層部の考えを変えたのも確かだし、一部で使い始めた兵士たちの戦闘方法も大きく変わった、そしてそれを巧みに扱い、エルベ村でのリザードマンとの戦闘やそこの村の村長の娘を救い出した能力は目を見張るものがあった。


 (やはりここは国王を補佐する一人である私が背中を押していくべきなのだろうか?)


 そんな悩めるエレンの生家であるヴァーテ家は、以前より補佐官などとして代々王家に仕えてきており、普段から王家に一番近い存在だったため他の重臣たちより何かと重宝される傾向にある。


 しかし、エレンは今や総参謀本部のトップに躍り出たが、前任の父が先の大戦で戦死したので、その後釜としてその娘であるエレンが半ば強引に配置されただけで、本人は一応父からは参謀になれるように教育は受けてきたが、参謀職の実戦経験はあまりなく、普段からは剣技や魔法の鍛錬を毎日のように行っていた武闘派で、作戦を立案するより前線で戦っていたほうが性に合っているようだ。


 そんなエレンだが、任された職務に対してはどんなことであろうとも必死にこなしていく性格なので、今や軍部の中では一番信頼度が高い。

 しかしエレンは、ここまでそつなく参謀職をこなしてきたが、今や人生で最大の壁にぶち当たってしまい心が押しつぶれてしまいそうになっていた。


 コンコン


 考え事で脳みそがいっぱいになり、頭を抱えたまま机に突っ伏していたエレンだが、ドアを叩く音が聞こえたので平然を装って返事を返す。


「し、失礼しますエレン閣下!こ、国王陛下が御出でです」

「失礼しますよ?」


 ドアを開けて入ってきたのは、先ほど帰ったばかりのワタ国王陛下と陸軍情報部のポーラだった。


「どうされましたか?国王陛下?」

「いやね、作戦に参加する“メランオピス”のことで気になっていたことがあってね、その部隊はこの王国内でも結構特殊性のあるところだって、今さっきポーラから聞いたんだけど、どうやらポーラはそのことについて知らされていないようなんだけど……」


「ああ、そのことですね、丁度そのお話をしようかと思っていたところでして……」


 “メランオピス”とは現代でいうところの特殊部隊のことで、国内での対暗殺・対篭絡・要人救出・ゲリラ対策として設立され、任務の上で必要とあらば国外作戦をも展開する。全隊員を設立当初より女性で構成していて、全員が狭い場所での戦闘訓練や攻撃魔法と剣術などを会得している、そのため屋内や町中などの狭い場所での近接戦闘に限れば陸軍内で一番の実力を持つ。


 銃はこの部隊のためだけではなかったが、ある一定の量を召喚し渡している。それも王宮に初めて訪れたときに王宮内にいた官僚たちに銃のことに関して説明した時に「ものによって射程距離と連射速度は魔法や弓より優れ、一兵卒でも訓練すれば歴戦の剣士にも勝る」と高評価であったため、良ければと思い試験的に一部部隊に配備してみるように言ってみた。


 すると、今や国の近衛軍(国王直属)の兵の一部、王国衛視隊(準軍治安組織)の王宮担当部門なども積極的に配備しはじめ、現在ではアルダート城内の駐屯地に射撃場を設置し定期的に訓練を行っているので銃の有用性をはっきりと認識してくれているようだ。


 今、使われている武器はSIG516、SIG716、SIGP226で、遠距離戦闘が多い歩兵隊はSIG716を近接戦闘が多い衛視隊はSIG516を装備している。


 ポーラが話している間に、持ってきたのであろう紅茶をすすりながら、陛下は私の説明に耳を傾けてくれていた。


「その部隊に参加してもらえるのは心強くて助かるね」

「ハイ、しかしこの部隊が表に出てしまうのは少々気が引けますが、致し方ないことでしょう」

「それでね、もう一つ話があるんだけどね――」


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←いつも読んで頂きありがとうございます。
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