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66.喜びの裏で

 

 時は少し戻り王都アルダート城内


 メリアはハミルトンより戻ってきた伝令から「ハミルトン城の防衛成功」「敵侵攻部隊壊滅し敗走」の報を受け、喜び半分不安半分の状態であった。


 とある日の朝、何日も帰ってこないワタのことを気に掛けながら、下から上がってきた報告書を読んでいた。

 (ワタは北での作戦を着々と成功させているようだけど、ほかの戦線がこのまま持ちこたえてくれなさそう……となるとこの後もワタに戦地を次々に転戦させてしまうことになってしまう、何とかしてそれを防がないと)


 今も東部・西部方面の城や要塞では局地的な戦闘が起きており、守りの薄い町や村は占領されてしまっていた。

 特に東部では王国軍兵士たちから“空飛ぶ船”と恐れられているものによって文字通り“空襲”を受けていた。それに加えて帝国軍には“竜騎兵”と呼ばれる竜に騎士が乗った部隊も存在し、それらは上空から竜による火炎ブレスや竜騎士による槍の投擲によって空からほぼ一方的な攻撃を加えていた。

 それに対して有効な攻撃手段を持っていない王国軍は弓や弩で応戦するも躱されるかあたっても竜なら弾かれ船ならびくともしない。


 南部の沿岸では王国より装備の勝る敵海軍による艦砲射撃や海賊行為が行われてしまっている、また一部の敵兵士による上陸作戦により灯台や町の一部を占拠されてしまっている。

 対する王国軍は今も善戦はしているものの、物量に任せ迫りくる帝国軍に押され気味のようだ。


 こんな状況ではあるが、王国にはまだワタを含める2つの救いの手がある、そのもう一つというのが、同盟国である王国から見て南西に位置する隣国エンペリア王国による救援である。

 エンペリア王国は大陸内ではコンダート王国に次ぐ第二位の経済大国であり三番目の広さの領土持つ、軍隊はコンダート王国軍の半分ぐらいの兵数ではあるが、全員青の装具で身を固めエンペリア王国第一王女自らが率いている、通称“青の騎士団”という帝国軍も恐れをなして戦わず逃げ出す程の名の知れた精強な兵士たちが存在する。


 それを率いるエンペリア王国の第一王女エンペリリア・ローザは、元はエンペリア王国の中でも剣術の名家として3本の指に入るほどの実力を持つ大貴族家生まれであったが、ローザ自身がオッドアイを持っていたのと常人ではありえないほどの魔力量を持っていたので忌み子として捨てられそうになっていたのを子供がいない今の女王が引き取り今に至る。


 自身が両親から捨てられたことを後になって知らされたが、女王を母と思い生きてきた彼女にとってそれは足かせになることもなく、すくすくと育っていった。

 大きくなるにつれローザは生まれたころより持っていた膨大な魔力と類い稀な魔法特性用いて全属性の魔法を覚え、当時通っていた騎士団養成学校で習った自分なりに剣術を磨き上げ、ついには王国内最強の名を手にすることになる。

 そうして今は立派に成長し王女として、“青の騎士団”の団長として絶大な人気を誇っている。


 話は戻り、現在エンペリア王国側も帝国軍による攻撃を受けているがどれも中規模部隊での挑発などが多く軽くあしらっている程度だそうだ。

 実を言うと開戦当初からエンペリア王国から援助は受けていたが、民間による食料援助や義勇軍による帝国軍後方に対する妨害程度であった、しかしここまで困窮してきてしまった以上これからは本格的な“援助”を要請せざるを得ない状況に今はある。


 そうして今回、陸軍総司令官のヨナと首相のユリアは複数の副官とともにアルダート城内の迎賓館にてエンペリア王国の女王であるエンペリリア3世、第一王女のローザ達とそのことに関する会談をおこなっていた。

 このエンペリリア3世はユリアと同じエルフ族の中の特に長命なハイエルフ種で年齢は1400年以上にもなる、本人曰く「年齢なんてただの飾り」というほどで普通のエルフもそうなのだろうが歳のことはどうでもいいようだ。


 ちなみにユリアからしてエンペリリア3世は異母姉妹に当たり姉妹の中で一番仲のいい二人で、エンペリリア3世のことをユリアは幼名である「イリス姉様」と呼んでいる、しかし、豊満な体を持つユリアに対して自身は見劣った姿(一般人から見れば十分以上なプロポーション)を持っていると思っているのでエンペリリア3世とはそのことで言い合いになるようだ。



(ここでエンペリア王国が動いてくれれば西部戦線は何とか保てる、あとは東部ね……)


 メリアは一人書斎のような部屋にこもって、各地の苦しい現状や今後のエンペリア王国の動向などの山積した問題が書かれた書類の束を前に、重く長いため息をついていた。

 しばらくすると、いつものように侍女が呼びに来たので、そのまま連れられ妹たちが待つ王室専用の食堂へと向かい気分転換も図ろうと朝食をとることにした。


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