53.再出撃!
テントに戻った俺は起きてきていたシルヴィア達に出迎えられた。
「ワタはどうやらエレシアと一緒に朝ご飯を楽しんでいたようだな?にしてもなんだその浮かない顔は?」
エレザは俺に会うなり俺の肩に腕を乗せ妙にフランクな口調で話しかけてくる。
エレザだけは俺に対する態度を最初にあった時から変えようとしない、それはそれで気が楽なので俺的には別に気にしていないのだが、シルヴィアはどうやら俺に対するエレザの言動のことが気に障ったらしく、エレザを俺から引きはがしにかかる。
「こら!エレザ!陛下になんという口の利き方をしているのだ!」
「む~、別に嫌がってないからいいじゃないか、なぁ?」
「なっ!陛下は何とも思わないのですか?」
困ったシルヴィアは俺に同意を求めてくるが、俺は何も言わずにそんなシルヴィアの頬になんとなく手を添えてみた。
「そ、そ……」
そのままシルヴィアは固まって動かなくなってしまったが、シルヴィアはうれしそうな顔だ。
(よし、なんか知らんけどうまくいった!)
俺はそんなことを内心思う、なんだかんだあってこの状況にも慣れてきた。
当のエレザは俺とシルヴィアのやり取りを見た後、興味がないとでもいうようにそそくさとその場からいなくなってしまった。
そのあとエレザの愛銃?(HK416)のメンテナンスをミレイユと一緒にし始めた。
そんな二人を尻目に、俺は昨夜の取り逃がしてしまった残存兵の捕縛または殲滅の為の機動力と防御力のある新たな兵器をLiSMで探していた。
今まで使っていたハンヴィーでもいいのだが、前に城へと向かっていた時とは違い、今回の場合は敵地のど真ん中へと突き進むので、取り囲まれてしまった時の攻撃を想定し、矢はもちろんのこと今回の戦闘でも散見された魔法による攻撃に耐えうる装甲を持ち(どこまでの魔法があるかは定かではないが、エレザ曰くあの帝国では迫撃砲を少し強くした程度のものまでだろうとのことだった)、どんな地形でも動きやすい車両でないと危険だと思ったので思い切ってここで新たに車両を新調しようと思った。
召喚するものは陸上自衛隊で採用されている89式装甲戦闘車にした、この89式戦闘装甲車は乗員9名で、装甲車の中では強力な90口径35mm機関砲を備えており、発射速度は毎分200発と遅めで、最大射程は5000mにも及ぶ、ほかにも副武装の74式7.62㎜車載機関銃・79式対舟艇対戦車ミサイル二基などを備えている。
そもそも装甲戦闘車と呼ばれるものは戦車ほどの装甲ではないが、重機関銃(ものによっては小銃程度までのものも)や近くで爆発したものの破片等に耐えうる強度の装甲を持ち、戦車と共に部隊を構成することがあるので、それに追従していく為の無限軌道、所謂キャタピラーによる不整地走行能力と速度がある。
車内には操縦する3名の兵員を除いて6人か7人ぐらいの兵員(半個分隊ないし一個分隊)を輸送することができ、その乗車する兵員は必要な場面において下車し近接戦闘を行う、その際に装甲車の武装で直接火力支援を行う。
また、敵の戦車もしくは同等の車両などに対して、軽装甲の車両には機関砲を用いて攻撃し、戦車には対戦車ミサイルで攻撃し撃破することができる。
この89式装甲戦闘車(以下89式)も他の兵たちにも教えて戦力強化を図ろうと思ったが、今回は時間が惜しいため、この作戦が終わったらある程度の数を召喚してこの世界初の機甲部隊を編成しようと思う。
こんなものを、兵しかいない町の広場のテント周辺とはいえ急に出しては後が面倒なので、“彼女ら”を城外へと連れ出し召喚したものを見せる。
みんなはこの状況にはもう慣れたようで、召喚するときの淡い光を見ても、驚くことがなかった。
しかし今回の召喚は今までのものと違った“もの”を出したので、皆は違う驚きがあったようだ。
「陛下、こ、これは何ですか?まるで城を小さくしたかのような物体ですね?上についている長いものはひょっとして銃ですか?」
ミントは珍しく質問してきた、この89式にずいぶんと興味を示してくれたようだ、というよりハンヴィーの時もそうだがどうやらミントは車両系によく興味を持つようだ。
「いいやミント、これは今までの機関銃とは違って機関“砲”っていうものだよ、しかもこれは城と違ってそこまで強固な防御力はもってないけど、矢だったり爆発魔法は防げるし動き回ることも可能なんだ、さらにこれは後ろから兵を出し入れすることも出来るものだよ」
わざわざ俺がミントに機関銃ではなく機関砲だと訂正したのは、この機関砲と機関銃の区別は大体の国が、口径20mm以上が機関砲、20mm未満のものが機関銃となっているためだ。
ただ、それだけのことだが。




