46.前夜
「失礼します!この度王都より援軍として参りました中央軍所属ダベルグ・サクラと申すもの、ハミルトン・エレシア様とお見受けしますが……」
すると髪は蒼髪で肩まで伸びたセミロング、そして黒いナポレオン時代の軍人が着そうな煌びやかな軍服を身に着け、大きく出た胸とくびれがはっきりとしている女性が待っていたとばかりに口を開く。
「助力感謝する、リメリアの使者達であったか、この私がこの城の城主でハミルトン領領主のエレシアだ」
「遠路はるばるご苦労様でした、わたくしはハミルトン領内のガレア城主ガレア・アナスタシアと申します。以後お見知りおきを」
隣の、金髪のポニーテールでいかにも姫様が着そうな白いドレスを着て、特に女性の象徴が大きいアナスタシアもエレシアの言葉に続き挨拶をする。
「お初お目にかかります。エレシア閣下!アナスタシア伯!、リメリア中将閣下より書状を預かっているのでどうかお受け取りください」
「そうかご苦労、それでそやつは誰だ?まさかとは思うが……」
エレシアはサクラから書状を受け取ると、訪問してきたサクラ達の一部に違和感を覚え、問う。
(これってまさか俺のこと?……ですよねぇ、みんなこっち見てますもんねぇ)
「んんっ!お初お目にかかります、わたくしワ――」
「お、思い出しました、ご、ご挨拶遅れ申し訳ありませんワタ陛下」
言い終わる前にエレシアは焦ったように腰を90度曲げ最敬礼をする。
「へっ?どうしたんですかエレシアさん?」
「取り乱してしまいました、わたくしのことはエレシアとお呼びください。あなたは今後この国の命運に左右するはずのお方なのですから」
「確かにメリアは『あなたは王になる!』なんて言っていたけど実際本当なの?急すぎて実感がわかないよ……まぁメリアがお嫁さんていうのはとてもありがたい話だし、正直言って好みだし……」
「残念ながら今のこの国の状態からして、あなたがこの国の王となるのは不可避です。現状は国王は存在していない状況なのですから、ですから陛下にはこの国をまとめていただきたいのです。そしてどうかこの国をお救いください、そのためなら陛下に忠誠を誓いこの身は陛下に捧げましょう」
そういってエレシアは跪き誓いをたてた。
「そこまで言うならわかったよ、俺はこの国を守る、そして敵を討つ、そうして平和をつくっていこう!それまでみんな付いてきてくれ!」
(本当にこんなのでいいのか?)
やけくそになった俺はそう宣言すると、エレザやミレイユ達もエレシアと同じように跪いた。
「「「私たちも陛下に忠誠を今ここで誓います!!」」」
「このガレア・アナスタシア、平和が訪れるその時とは言わず永遠の忠誠をここに」
こうして誓いが行われた(急だけど)。あと皆はすぐに作戦会議を始めるため居館内の会議室へと集まった。
皆で大きな机に座り、入り口近くに立っていたものが報告を始める。
味方の偵察兵によると帝国軍の一隊はここから5㎞の地点に退避し、すでにでも進軍できるように準備をしているとのことだった。さらに帝国軍はこの地点だけではなく国境付近にも陣を敷いていて、そこの場所でも動く気配があるとのことだ。
「以上のことより遅くとも明日明朝、早ければ今夜襲撃があると思われます」
そう自信たっぷりに話すのはエレシア直属の参謀の女性士官だ、この女性士官は最近までは偵察隊の部隊長だったたたき上げの軍人だ、その経験からくるものは他の士官よりも上だ。
「俺的には今夜来てもおかしくないと思う、俺でもこういう状況になったら夜襲をかけるね」
「さすがワタ殿お目が高い、シルヴィアも賛同いたします」
左隣りにいたシルヴィアは身を乗り出し賛成の意を伝えてくる、身を乗り出したおかげで胸が見えそうになる。
「私も陛下の意見に賛成だね……また新しい武器が出てくるのだろう?」
「お姉さんがそういうなら……いいけど」
右隣にいたエレシアが首を可愛く傾げながら聞いてくる。
「では陛下、今回はどうなされるのですか?また“銃”なるもので戦うのですか?」
「いやエレシア、今回はちょっと……いや違ったものでやろうと思う。今回は――」
おもむろにポケットからLiSMを取り出し、その兵器を探し始める。
今夜は“ショー”が始まる――――




