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45.ハミルトン城へ

 

 時は少し遡って、帝国軍前線陣地


 ハミルトン城から北に約5㎞の位置に帝国軍は第一次侵攻部隊の前線基地を構えている。

 本隊はここから20㎞先の国境付近に陣取っており、ハミルトン城占領が成功するとそのまま本隊が王都へと侵攻する手はずとなっている。


 前線基地で待つ兵士たちは、緊張した面持ちで出陣に向けて準備をしている。

 第一次攻撃隊が出陣してから1日、部隊の将校達はもうすでに城は落ちたであろうと、楽観的であった、ただその楽観的な雰囲気もすぐに覆されることになる。

 そのきっかけは一人の伝令兵よってもたらされた。


 伝令兵が指揮官のいる天幕に入るや否や、堰を切ったような勢いで報告を始める。


「申し上げます!第一次攻城戦部隊は敵の謎の攻撃を受け敗走!約4千が死傷、帰還した兵士は1万、他は行方不明です!」


 第一次侵攻部隊を指揮するベルキア・リレイは攻城戦部隊の壊滅を知り、普段は美しい顔つきも今や焦りと怒りが入り混じった複雑な顔をしていた。

 リレイは銀色の長い髪をロールアップさせていて頭には黒い士官用の帽子をかぶっていた、着ているものも黒い軍服で、まるで某何とか帝国の親衛隊の恰好と同じだ、その厳つい服を着ていても大きく主張している胸や、くびれている腰を見れば誰もが美しいと答えるだろう。 

 当初、本人も今回の攻略は、いくら要所のハミルトン城であっても補給線が絶たれたも同然の状態であったので簡単に攻略できると思っていた。

 今近くにいた将校たちも部隊の壊滅を聞き、重苦しい顔をしている。


「報告ご苦労……下がれ」

「ハッ!失礼します!」


 伝令兵が下がるとすぐにリレイは部隊長なども集め緊急に作戦会議を開いた。


 会議が始まるとまずひと際目立つ緑色の髪をした一人の女性士官がトレードマークの黒縁のメガネを人差し指でいじりながらリレイに許可なしで話し始めた。


「僭越ながら申し上げますと、この後早急に再度攻勢に出て相手の戦力を削るべきかと……」


 静かだかしっかりとした口調でそう進言したのは、リレイの副官を務めるユリーシャ少佐という一見大人しそうに見える“メガネっ娘”だ。士官学校を卒業して1年もたたないうちに頭角を現し始め、持ち前の頭脳と謀略によって数多の将軍につき、自らの策を進言しその策によって帝国近くの他の戦線で次々と勝利を重ねていった言わば“名参謀”だ、その名声故に少々鼻が伸びている部分があるが確かな実績と信頼からリレイに対してもこのように言ってのけることができる。


「……うむ」


 ただ、今回だけはそんなユリーシャの進言など頭に入らないほどリレイは焦っていた


(なぜこんなことに……このままでは奴に先を越されてしまう!)


 帝国軍はもしもの為に第二次攻撃隊も用意しており、今は本隊と同じ場所に待機している。

 しかし、リレイはその二次攻撃隊の指揮官と仲が悪く、いつもおいしいところ(武勲、領地、地位)をその人によってをもっていかれてしまっていた、今回リレイがいつも以上に焦っているのは、これに勝てば初の帝国領土以外の領地を手にすることもでき、これまで取られてきた以上の名声も手に入れることができるのである。


(今回こそは絶対に成し遂げて見せる!)


 ユリーシャの後も意見がパラパラと出る中、リレイは一つの考えに思い至った。


「作戦は今夜、やりたくはなかったが夜襲をかけるぞ!」

「「「了解!」」」


 こうしてひそかに攻撃隊は動き出した。




 所戻ってハミルトン城


 城壁の門から入って少し進むとそこには巨大な一本道が整備されていて、道を歩いていくと多くの店や宿などが並んでいる。この大通りから枝分かれした道も大通りほど大きくはないが見通しが利きやすく、道の途中には道路標識のような看板がおいてあり、そこに主要施設の方向が書かれているので初めてきても歩きやすい街づくりだ、ただ今は戦時の為、住民が迷わない程度の表示しかなく他は看板ごと外されているか布のようなもので隠されている。


 そんな街の中を女性兵士に先導され領主が住む居館へと向かうと、その門前に野戦病院のようなテントが張られていて、そこには負傷兵が寝かされていた。


 テントの中では看護兵か住民の有志、宗教団体なのかは定かではないが、皆せわしなく軽傷者には包帯を巻いていたり少数の医学のようなものと魔法の知識を心得ている人は魔法を使って重傷者にたいして治療を始めているものがいる、居館内からひっきりなしにテントに物資を運び入れている人たちもいて戦いの後を色濃く表している。


 先ほどの親衛隊隊長に現況を聞いてみたところ、味方の人員損害は死者は無く、負傷兵が50名ぐらいだという。しかもすべての負傷兵が怪我をした理由が矢で射掛けられた時の怪我のみであった、しかし、矢傷が深い負傷兵が多いため治療には少し時間がかかるらしく、忙しそうにしていたのだという。


 城での損害は比較的軽微なものであったが、城付近に暮らす住民には大きな損害が出ており、村一つ分ぐらいの死者は出てしまっていた。そうなってしまったのは一種の民兵のような考えに基づき、武力を持っている村は自分たちで帝国軍に抵抗したため大きな被害が出てしまった。


 とはいえ抵抗した村は数少なく、ほとんどはここの城に避難してきている。

 このテントにはギリギリのところで逃れてきた村人たちもいて、その人たちも治療を受けている。


 その野戦病院もどきと人の流れを横目に見ながら門をくぐっていく。

 ここまで案内してくれた女性兵士とはここで別れハミルトン城の居館に入ると、大広間にひと際目を引く二人の女性が待ち構えていた。


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