501.ダンジョン近況
そのテキストを要約すると、何者かが地下通路を作りアルダート城内か後宮につながるように工作していたと思われる痕跡を発見。
その痕跡というのは、転移魔法陣若しくは装置が破壊されたようなものだ、もしこれが転移に使われていたものであると断定されればこのダンジョンが偶発的な発生ではなく、意図的に発生させたものという事になる。
但し、まだ確たる証拠がないので現在専門チームが調査中とのことだ。
先発隊は20階層迄到達しているそうだが、ダンジョン構造はかなり複雑で深く、未探索の箇所が多く残っているとされダンジョンマスターの発見は出来ていない。
さらにダンジョンの魔物も当然ながら階層が深くなるにつれ強くなっている為、先発隊の探索速度が極端に落ちてきている。中には銃弾も剣も弾くような厄介な魔物も確認されている為、ロケットランチャーや無反動砲といった重火器の供給も始まっている。
ただ、補給路が長くなってきたという事に加え負傷者も少しずつではあるが増え始めて来たという状況なので、無理はせず一旦小休止と先発隊とレナ達主力部隊と応援としてやってきてくれているエレザのクラン「ローズナイツ」が合流してから本格的なダンジョンマスター討伐を開始することになる。
「エレシア、ダンジョン内の様子はどんな感じかな?聞いている限りでいいから今報告があった以外の情報を教えて欲しいんだけど・・・」
俺はエレシアにも近衛軍経由で報告が届いていると聞いていたので、他にないかと聞く。
「承知いたしました。えー、今いる20階層までは先行している第1小隊から第5小隊までの隊員達が魔物を掃討しながら順調に進んでいるようでして。ただ、21階層から30階層にかけては敵の強さも格段に上がる為、弾薬消費が激しくなってきています。それと、負傷する者も出てくるようになったと聞いています」
「それ以外に何か情報はないか?」
「いえ、今のところはそれだけです」
「そうか、わかった。ありがとうエレシア」
「それより陛下、今日は此処までにされてはいかがでしょうか?先ほども申し上げましたが、現状そこまで情報が上がってきていない以上は適切な判断も下せないかと思われます。現場には経験豊富なユリア総理に加えて近衛軍のセレナもいるのでここは二人に一旦任せましょう」
「そうだね……エレシアの言う通りだ、今考えても仕方ない、報告を待とう。とりあえず今はゆっくり休んで疲れを取る事にしようか」
ここで考えたところで、現場の状況を完全に理解しているわけでもないので、ここは明日以降の報告を待ってから考えることにする。
それよりも今は体の調子を整え正しい判断が出来るようにしておく事の方が重要だ。
その後、レナ達やローズナイツの面々によって無事ダンジョン攻略を成功させるのだが、それはまた別の機会に語られるであろう。
「そうね、でもまずはその前に食事にしましょう?私もうお腹ペコペコよ」
「ワタ様、私も空腹です」
「そうですね、では準備させましょう」
エレシアの提案でまずは食事をする事にした俺たちは、メイドたちに指示を出し食事の準備を始めた。
「ワタ様、お飲み物は何にいたしますか?」
「じゃあデカフェコーヒーをお願いするよ」
「かしこまりました」
俺達は運ばれてきた料理を食べながら、今日一日の出来事を報告し合い会話を楽しんだ。




