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494.最後の時

 

 朝起きると、両隣に寝ているメリアとエレオノーラに軽く口づけをする。

 大き目の窓から差す朝日を浴びながら少し伸びをするとキングサイズのベッドから這い降る。


「おはようございます、陛下」

「おはよう、ウェリス」


 部屋の隅でいつも待機しているウェリスに朝の挨拶を交わすと、すぐに金庫に保管してあるLiSMを取り出す。

 こうやっていつも朝起きるとLiSMを起動することから始めている。


 理由は単にそのまま仕事に使う為でもあったが、最近ではそのことに加えて、いつ動かなくなってしまうかわからなかったので、その確認の意味もあった。


 そして、ついに“その日”がやって来た。


「今日がとうとう最後か……」


 俺はLiSMをつけて画面を見た瞬間、ため息とともに落胆の言葉を口にする。

 画面には大きく「本日を以って日付が変更されたと同時に機能を完全停止いたします。これまでのご利用誠にありがとうございました。この世界でもどうかお元気で」と書かれていたからだ。

 ショックのあまりに裸のまま近くにあった椅子に腰かけたまましばらく固まっていた。


「陛下。いかがされましたか?」


 そんな俺にいつも通りウェリスは着替えを持って来てくれていた。

 しかし、いつもと違い椅子の上に座ったまま動こうとしない様子に、ウェリスは心配そうに声を掛ける。


 俺が起きた事に気付いた、メリアとエレオノーラはベッドから降りてきて、心配そうに俺の背中からLiSMの画面をのぞき込む。


「ああ、とうとう来てしまったわね……」

「これで、もう最後なのですね」

「ああ……」


 俺はショックのあまり言葉を失っていた。

 この時受けたショックは単にLiSMがなくなる事によってこれまでの召喚が行えなくなることではない。

 そんなことよりも俺にとっては元居た世界と唯一繋がりを感じていたものが無くなったからだ。


 二人はそんな俺の状態を察し、エレオノーラは後ろから優しく抱きしめ、メリアは俺の隣に椅子を持ってきて座り、頭を優しくなでてくれていた。


「もうLiSMは使えなくなったけど、今はLiSMを必要としないぐらい軍も国も私たちもワタのおかげで強くなったから心配することはないわ」

「そうです、陛下のおかげでここまで来られたのです、そう悲観なさらないでください」


 二人の励ましに思わず涙腺が緩みかけるが、何時までもくよくよしていては情けないと自身を鼓舞し、これから何としてでも元の世界に戻ってやるという気持ちに切り替え何とか奮い立たせる。


「二人ともありがとう。元居た世界との繋がりのようなものが無くなるのはちょっとショックだったけど、今度は自分で本当の意味での繋がりを実現させようと思えば少しは気がまぎれるから」

「そうね、ワタならやれる気がする!」


 メリアは俺が元の世界に戻る事を模索し続ける事で、これからLiSMが使えなくなった事を忘れていられるという言葉に笑顔で応援の言葉をかける。

 ただ、メリアのその笑顔は少し曇っているように見えた。




毎度投稿が遅れてしまい申し訳ございません。

書き溜めがなくなってしまった事もあり、突然ではありますが当面の間月曜日投稿とさせていただきます。


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