493.治安部隊のさらなる強化
俺の手元にあるのは反体制派や王族貴族打倒強硬派といった集団の動きが活発化し始めているという内容の報告書だ。
彼らが活発化し始めた背景として挙げられるのは、まず帝国との休戦だ。
それに対しての彼らは「休戦をするほど今の国王は腰抜けだ!」「帝国も倒せないのか!」などという主張をしており、さらに過激派の主張は国王を処刑し過激派の指導者を新たに国のトップとしてたて女王を娶り新たな国をつくるという。
もう一点活発化させてしまった要因としてあるのは、占領地と中央諸国連合領内の治安維持に各法執行機関から捻出して向かわせてしまっていることも含まれる。
王都や副都、地方主要都市を管轄する部署からはあまり引き抜かず、元から治安の比較的良い場所から集中的に引き抜いた為、それが今回彼ら活発化を助長させてしまっていた。
彼らは戦争で余剰となり警備も手薄だったところから武器を盗み出し、その武器で武装し各地で現政権・体制を支持する地方自治体の首長や地方・下院議員・貴族等の拉致、監禁、殺害等を行い、さらに公共施設や商業ビルの破壊。資金調達の為の人身売買や薬物取引、銀行強盗といった各種犯罪行為が行われている。
これらによって一部地域では著しい治安悪化が起きてしまっており、その影響で国民の生活インフラまで脅かされる事態に発展していた。
質の悪い事にこの組織の裏には地方警察の一部警官や反体制派の上下院議員や地主、闇ギルドの有力クラン迄が関係されているとされていた。
各種犯罪を取締や鎮圧する為に担当の法執行機関は総出で対応しているが、かなり広範囲に渡って頻発してしまっていることから国家憲兵隊、国境警備隊等といった準軍事組織や陸軍、近衛軍までもが投入されている。
とはいえ各軍も占領地の管理や治安維持も担っている為、満足に法執行機関への手助けも上手くいっていない。
それに対して俺がこれからする事はこれまで悪化してしまった治安を回復させさらにそれらの過激派たちを“強制的”に壊滅させる為の各種指示を出すための書類を作ることだ。
これに対して単純に海兵隊や海軍特殊部隊の投入も考えていたがそれに加えて俺は前々から考えていた、過激派集団鎮圧専任の重装甲重武装の警察執行部隊の創設だ。
現在も国家警察庁には警備局機動総隊、王立警視庁内には警備部首都機動隊といった軍と遜色ない部隊が存在しているが、彼らは暴動やデモ隊が起こった時の鎮圧や主要政府機関又は王都市街地警備が任務となる為、今回のような状況に対して多くの人員を割けないというのが実情だった。
そういったことから、内務省特別高等警察庁配下に“特別機動隊”と呼ばれる部隊を4個連隊編成した。
彼らは通常時は国家警察庁や王立警視庁の機動隊と同じ任務を行うが、今回のように大規模かつ広範囲に渡る凶悪犯罪や軍が出動する一歩手前若しくは軍が出動してもおかしくない治安状態において、犯罪集団の拠点や現場に強行突入し殲滅する任務を遂行する。
かなり危険な任務なので、全隊員の全身を黒い防弾防爆強化装甲で防御し、顔も黒い防弾防毒マスクで覆い、FASTタイプの防弾ヘルメットには四眼式暗視装置を装着。個人武装としてバックパックからの給弾方式のミニガン若しくはMG3を装備する。
彼らには今後過激派によって悪化してしまった治安を改善するために、海軍特殊部隊や海兵隊と共にすぐに投入させる。
それらの指示書を俺は数時間で書きまとめ、早速国内治安担当の秘書官に手渡す。
こうして俺の溜まっていた公務は一旦なくなった。
ようやく俺もこれまで取れなかった長期休暇やトレーニングの時間がとれるようになる。
それまでにはかなりきついイベントが残っているが……。




