486.勝利の栄光は誰が手に入れる?
2人が作ったデザート、そのどちらか勝てばアーガイル・ブランド……この大陸一のシェフが決まる。
「ではまずはマスルさんからお願いします!」
「ワタシの料理はクレーム・ブリュレでゴザイマス」
クレーム・ブリュレは、プリンと似たデザートだが、クレーム・ブリュレは生クリームがベースで混ぜ合わせたカスタードクリームを、ココット皿等の耐熱容器に入れてオーブンで湯煎焼きして固める。その後に砂糖をふりかけてバーナーなどで焦げ目をつければ完成するデザート。
プリンは牛乳がベースで混ぜ合わせて卵液をつくり、先に耐熱容器にカラメルソースを流し入れてから卵液を入れて、オーブンやフライパンにお湯を張り蒸して作るデザートと材料は同じでも作り方が違うことで出来上がる料理も違うと料理は奥深いと思い知らされる。
味もプリンと似てはいるが、表面にある焦がしたカラメルがカスタードに絡めやすく甘さがちょうど良い味わいとなっている。
そしてこのデザートは出来立てで提供されている為に温かい状態で試食することで胃を冷やさない配慮がしてあるのが素晴らしい。
「まさに優しい味と言えるデザートですね」
「ありがとうゴザイマス」
続いてエビファイが作ったデザートだ。
「バニラパルフェでございます」
パルフェ……一見聞くとパフェの間違いじゃないかと言いたくなるが、実は現代においてパフェもパルフェもそこまで違いはなく、カレーのことをカリーと言っているようなもの。
細かく言うなら昔パフェはアイスクリームに生クリームや果物が添えられているデザートと認識されておりパルフェには卵黄、グラニュー糖(または砂糖)、生クリームを混ぜて冷やし固めたアイスクリームに似たものになるという。
「調べるといろんな説が出てくるから信じるか信じないかはあなた次第です」
「ワタ、誰に言っているの?」
「いや気にしないで」
メリアは俺のことを心配するが別に狂ったわけではないのでこの話は忘れよう。
早速パルフェを食べるとその凝縮されたバニラはとても濃厚で、今まで食べたアイスクリームとかが水っぽいとさえ思えてくる。まるで口の中に入れて溶かした瞬間、味と香りが爆発して広がってくる爆弾みたいだ。
どちらのデザートも同じ材料なのにこんなにも違う味を引き出すとは流石プロは違うなと思ってしまう。
さて、ここからそのどちらかの料理を選ばなくてはいけないのだが、メリアもマリー女皇も悩んでいる。
(ここまでくると個人の価値観と好みの問題となってしまうな……)
マリー女皇はマスルのクレーム・ブリュレを推す。温かいデザートのおかげでお腹を冷やさずに済み、フルコースで出せばお腹を壊すことがないので誰でも食べられる優しいデザートだと言う。
メリアはエビファイのパルフェをお気にいったらしい。濃厚の味わいで冷たいデザートでも香りを楽しみながら食べられる。これも子供から大人まで食べられるデザートでこの国で流行ること間違いないと言う。
(いったいどちらかのデザートがこの戦いの勝者に相応しいか……)
確かに両者とも誰でも食べられる様に配慮している。違いがあるとすれば見た目と食感と温度ぐらいだ。
俺は悩んだ末にマスルのクレーム・ブリュレを選んだ。これで多数決的に勝者はマスルになる。
トリックスはマイク越しで叫んだ
「今、決断が決まりました!今回アーガイル・ブランドを手にしたのは、マスル・マチョ選手です!!」
観客の声が会場に響き渡る。マスルはステージの上に立って表彰式が行われる。
しかしこの後まさかの展開になるとはこの時、誰も思いもしなかったのだ……。




