483.決められた食材で(前編)
続いて2回戦目、選手達の目の前には“?”が書かれた箱が置いてある。
「では2回戦目の説明です。ルールは簡単!この箱の中にある食材を使って皆さんにはディナーを作ってもらいます。制限時間は40分です。3、2、1、GO!!」
一斉に箱を開けると中には鶏もも肉、人参、玉ねぎ、マッシュルームが入っている。
そしてこれ以外の食材や調味料はもはや工場の倉庫と呼べるレベルの巨大な冷蔵庫に入っているので各自で調達しなければならないらしい。
(いつの間に作ったんだよ……)
いろいろツッコミをしたいのは山々だが、選手達は巨大な冷蔵庫に入って行き使いたい食材を探していく。
「んーしょ、んーしょ、届かないなぁ」
料理長が欲しい食材に手を伸ばしたが高過ぎて届かないでいる。それを見たマスルは食材を取って料理長に渡した。
「はいドーゾ」
「あ、ありがとうございます」
一方、エビファイは欲しい食材を手に入れて厨房に戻り、早速食材を切り始める。
鶏もも肉の両面にカイエンペッパーをふり、ボウルにハチミツ、ウスターソース、マスタードを合わせ混ぜる。そしてフライパンを良く熱して鶏もも肉を焼いていく。
マスルも厨房に戻って鶏もも肉の余分な脂を切り取って皮を十字に切り目を入れ始めた。
サバの塩焼きとか味噌煮とかで見たことがあるけど切り目を入れると火が通りやすく、味が染み込みやすくなるのだ。
そして小麦粉をまぶしてフライパンに鶏もも肉を焼いていく。
その後、鶏もも肉が焼けたら一度バッドに戻し、人参、玉ねぎ、マッシュルームを焼いていく。同じフライパンで焼くことによって鶏もも肉の肉汁が旨味と香りを出してくれる。
続いて料理長は鶏もも肉を焼いた後、同じフライパンでバターと薄力粉を入れて木ベラでひとまとめにすると牛乳を複数回に分けて少しずつ入れ混ぜながらとろみをつける。そしてデミグラスソース、トマトケチャップ、醬油、牛乳を加えて煮込み始めた。
戻ってエビファイは先程ボウルで作ったソースを鶏もも肉に塗ってパン粉をまぶす。その後、炎の魔法でパン粉を炙り始めた。
マスルはフライパンにウィスキーを入れてフランベする。飛ばしたウィスキーの香りは審査員がいる場所に届く。そして赤ワイン、トマトペースト、ローリエ加えて鶏もも肉を戻して煮込んだ。
いよいよ3人のシェフが作った料理が完成される。
ここまででこの3人に不審な動きはなかった。そして脱落したバサリオンにも監視を付けているが特に目立った動きはないらしい。
(このまま無事に終わってくれればよいのだが……)
マリー女皇の後ろにいた白衣の女性が何かに反応する。ポケットから魔石を取り出すと何か声が聞こえるがここからだと聞き取れない。
魔石の声が聞こえなくなると白衣の女性はマリー女皇に話をして何かを報告している。その報告を聞いたマリー女皇は少し困った顔になる。
「どうかしましたか?」
「はい、私の城にいるお友達からお土産持って帰って欲しいと連絡がありまして……でも私達はこの国のお土産屋さんが何処にあるのか場所がわからないので困りましたわ。もし良ければ後でおすすめのお土産屋さんを教えていただけますか?」
「え?……ええ、いいですよ」
俺はてっきり何処かで民間人がモンスター化になって暴れているか、イスフェシアの勇者を使って何か情報を探っているのかと思ったが全然違った。
「そういえば、オゼットはここに来ていないのですか?」
「彼ならこの国でおつかいを頼んでいます。あ、そうだ。追加で彼にお土産屋さんを調べてもらいましょう!アルメリア、彼にそう伝えてちょうだい」
「かしこまりました」
アルメリアと呼ばれた白衣の女性は早速、魔法石で連絡をして要件を伝える。その後に「マリー様のお願いを聞けないのであれば今すぐに凍らせにいくわ」と脅している。
(……あいつも苦労しているんだな)
お互い立場が違うけどその苦労さを思わず共感してしまう。
そうしている間に3人の料理が出来上がったみたいだ。いよいよ2回戦目の審査が始まる。




