481.スーパーマーケットウォーズ(前編)
1回戦目、俺達審査員と観客の前には巨大なモニターが置かれており、そこから映像が映し出されている。
そこにアルダート駅の近くにあるスーパーマーケットが映っていた。
「では1回戦はここ、ボーナスマーケットで行います!」
4人のシェフはスーパーマーケットの入り口で腕を組んで立っている。
どうやらこの料理対決の為に貸し切りにしたみたいだ。
「最初のお題は……“庶民の家庭料理一品”です!誰でも店で買える食材で作れる料理を作って頂きます!!皆さん自信はありますか?」
「もちろんデース」
「余裕ですね」
「……」
「え、えーと頑張ります!」
4人はそれぞれの思いを抱き、入口の自動ドアが開かれる。
「まずは1時間以内に各自食材を購入して料理を作ってください!購入したらここに戻って来て会場に向かいます。尚、制限時間に戻ってこなかったり、料理が未完成の場合はその時点で失格になりますのでご注意を、それではスタートです!!」
トリックスの合図と共に4人は走り出した。
「……この映像を見ている人達はスーパーで走ったりしないでくださいね!」
野菜、魚、肉と食材が置かれているコーナーに行き各自買い物カゴに食材を入れていき、レジに向かっていく。そして購入してスタート地点に戻ると青く輝く魔法陣が展開されている。この魔法陣に入ると会場に転移する事が出来るみたいだ。
「お先デース」
マスルは魔法陣に入り会場のキッチンに転移すると早速、手を洗って買ってきた玉ねぎをみじん切りにしていく。
一方、エビファイは包丁ではなくサバイバルナイフで食材を切っていく。
そのサバイバルナイフ捌きはあまりにも速く目では追えない。エレオノーラやエレザ、マリー女皇の後ろにいる鬼人は見えているみたいだ。
トリックスがエビファイに質問をする。
「何故包丁ではなく、サバイバルナイフを使用するんですか?」
「サバイバルナイフは肉や野菜を切ったり、魚を捌いたりと料理をするときにも使用できます。食材を切るのは包丁というイメージがあるかもしれませんが包丁は食材を切る以外に用途がありません。料理以外でも食材を包んでいるビニール袋や料理糸等を切るときにキッチンバサミにいちいち切り替えるのがめんどいので、サバイバルナイフを使うのもおすすめです」
「ほうほう!ありがとうございます」
そして料理長は鯛を丁寧に薄切りにして皿に盛っていく。
最後の仕上げにオリーブ油とレモン汁と塩胡椒を掛ける。
「おっと!料理長選手はもう完成しましたか!?」
「はい、鯛のカルパッチョでございます」
おそらく一番使用する食材と調味料が少なく短時間で完成するこの料理は文字通り誰でも作れる家庭料理とも言える。
一方、バサリオンはボウルに卵黄、生クリーム、粉チーズ、黒コショウを入れ混ぜフライパンに細かく刻んだ玉ねぎとベーコンを炒めている。
(これは……カルボナーラかな?)
そう思った次の瞬間、バサリオンは中華鍋を取り出して先程炒めた具材とボウルに入ったソースをぶちまけある程度熱したらご飯を強引に突っ込んで鍋を振り始めた。
てっきりパスタだと思ったのは俺だけではなく、観客とトリックスも驚いている。
この予想斜め上の発想がここにいる全員に衝撃を与えた。
そして4人ともお題の一品が完成する。この中で脱落するのは1人、はたして誰だろうか……。




