471.大使館追加設置
一連の事件後、俺はまた執務室で仕事に追われていた。
しかし、これまでよりは少し楽になっていた。
楽になったのは書類関連の全てデータ化が完了し、さらにVPNの構築が完了したので、デスクトップパソコンを使うことに切り替える事が出来たからだ。
今回の変更は俺の執務だけではなく、各官公庁や法執行機関、軍といったほぼ全ての政府機関の事務作業や情報管理を全て電子化している。
これによって各大臣や軍部からの報告の確認作業や追加報告依頼等といったことや、法律や軍関連の指示書や原案を制作する際の速度と能率が格段に向上し、徹夜をするような事が格段に減った。
電子化によって俺の仕事時間は短くなり、これまでは王宮内で寝泊まりしていたところを最近では後宮に戻ることが増えたので、地下室に行って各種トレーニングした後にみんなと一緒に夕飯をとり、ゆっくり大浴場で過ごすといったことが出来るようになったのでかなり気が楽になっていた。
ただ、その代わりパソコンを使って夜遅くまでやっていると元居た世界での嫌な事が時折フラッシュバックするのが難点だが。
閑話休題
今の俺の仕事の中で一番大きいものは「各国の大使館又は外交事務局を国内と国外に設置する」事と各国に送る特命全権大使の任命、在外公館の防衛に付く部隊の創設に関する発案、駐在武官の任命、「各国間在外公館設置における国家間条約」の締結等といった5つ。
一つ目の「各国の大使館又は外交事務局を国内と国外に設置する」友好国であるエンペリア王国や出雲国には既に在外公館を設置しているが、この二国に限らずデスニア帝国(外交事務局)や中央諸国連合に大使館を相互に設置しようというものだ(テレン聖教皇国とイスフェシア皇国については政情が不安定とされる為一時凍結)。
これが実現されることによって大使館又は外交事務局設置国との外交拠点になり、接受国(派遣先の国)における国民への各種支援(パスポートの発行やビザの発給、自国民の保護等)が可能になる。
大使館設置については中央諸国連合とデスニア帝国にコンダート王国首相ユリアと外務大臣カイルが説明に赴き、中央諸国連合は二つ返事で了承してくれ、デスニア帝国からも一定の理解を得て設置の運びとなったが、当然休戦協定を結んだ国同士が国交締結できるはずがないので、外交事務局という形でお互いの首都に設置することとなった。
設置にはこぎつけたが、お互いの国内で大使館や外交事務局の保護は元より、それらに所属する特命全権大使を筆頭に公使、参事官、駐在武官等といった職員の権利の保護やその国における外交特権や免除といった事の取り決めをしなくてはまともに機能しないのでそれらに関する国家間条約の締結をしなくてはならない。
またこれまで出雲国とエンペリア王国内の在コンダート王国大使館と国内にある在コンダート出雲国大使館(+3領事館)と在コンダートエンペリア王国大使館(+5領事館)には暫定的な条約によって権利等を保証していたが、今回の動きに合わせてこちらを廃止して新しく締結される「各国間在外公館設置における国家間条約」に切り替える。
条約の内容は元居た世界の「外交に関するウィーン条約」がベースに作られた。
そしてこれを各国の代表が集まりハミルトンにて締結した為この条約は「ハミルトン条約」と呼ばれるようになった。
さらに二か国に新たに送り出す特命全権大使の任命をする必要があったので、これまでカイルの元で外交官を務めて来た経験のある二人を任命した。
残る駐在武官は海軍参謀本部から中将が1名と陸軍参謀本部から中将が1名、国防総省情報参謀総局から2名ずつ派遣し平時における軍人同士の文化交流と情報共有等を行う。
この大使館を含む外交関連の仕事を終えると、残すは軍事関連の仕事のみとなった。




