460.女帝との会合
「陛下、回復してそうそう申し訳ございませんが、帝国との会談の日程が明日に迫っております、すぐに関係各所との会談を行わなければなりません」
朝食を食べ終えた俺は後宮の寝室にやって来たユリアに次の予定が迫っていることが告げられる。
「そうだった、すぐに着替えて執務室に向かうよ、ユリアも一緒に行くだろう?」
「ええ、陛下の身支度が終るまで廊下でお待ちしております」
「わかった、少し待っていてくれ、すぐ戻る。エレオノーラも身支度してくれるかい?」
「はい、ご主人様」
ユリアを待たせてはならないと思い、すぐに俺は自室に戻り着替えを済ませ、ロッカーからP320と予備マガジンを取り出しホルスタとマガジンポーチをつけ彼女が待つ場所へと向かう。
廊下に出るとそこには既に装備を身に着けたエレオノーラも待っていた。
「さぁ、行こうか」
「「はいっ!」」
俺とユリアは王宮の執務室に入り、この後迎賓館にて行われるデスニア帝国との会談に向けて最終調整を始めた。
「まず、今回帝国からくる方々ですが、デスニア帝国女帝エメキア・ディエナ陛下と宰相エメキア・レレーナ、ハルト・アルセウスと他各政務官が来訪される予定です」
「そうか、こちらからの休戦協定を締結するうえでの提示条件は?」
「はい、そちらもぬかりなく。こちらをご覧ください」
ユリアから手渡された書類には、占領地に関する事や旧中央諸国連合の主権回復について、休戦中の非武装地帯の設定について、捕虜の取り扱い等が長々と書かれていた。
「旧中央諸国連合の主権回復と我が国の帝国占領地の扱いに関しては抵抗が予想されるな」
これが帝国への降伏勧告であれば、文句を言わせず強引に出来るが、今回はあくまでも休戦である。
「旧中央諸国連合と我が国が戦闘時に占領した各地域に関しては、帝国側の条件を多少呑んでもこちらが有利になるように交渉いたしますので、ご安心ください」
ここは交渉事に長けているユリアに任せておこう。
「我が国の国民の反応はどうだ?何か怪しい動きはないか?」
この質問をした理由は、まだ国内には戦争継続強硬派がいるためで、その中でもある地域の権力を握る上院議員等も含まれているのでそういった地域の権力者が国民を扇動し、今回の帝国との休戦協定を妨害してくる可能性が考えられたからだ。
「陛下が懸念されているとおり、国家憲兵軍や特別高等警察庁等が既にその兆候を察知し、現在までに扇動罪等で数人が逮捕されています。最近は言った情報にはとある地方有力貴族が外患誘致罪の嫌疑が掛かっているというものもありこちらも油断が出来ません」
それ以外にも国王暗殺計画や首相暗殺計画等といった過激な計画を立案し動いている組織や集団が存在しているという情報が各法執行機関や各情報部から上がってきているそうなので、身の安全を常に万全なものにしておかなければならない。
このようにかなり危険な動きが確認されているという事は良くないことではあるが、そういった人の動きが追えているというのは法執行機関等が動けている証拠でもあるので、ほんの少し安心できる。
「それで“お客さん”はいつ来るんだ?」
「明日朝にはセレンデンス基地に到着されるそうなので、昼過ぎには迎賓館に着くものと思われます」
「よし、明日の為に各大臣たちと話さないとな」
そういって立ち上がると、俺はユリアを伴って王立議会へと向かった。




