459.女帝との会談へ
恐ろしい味のカレーを食べさせられ意識を失った俺が目覚めたのは次の日の早朝だった。
俺は俺専用の部屋にあるベッドの上に寝かされていた。
気付けば俺の隣には眠っているエレオノーラの姿があった。
その姿は白いレース調のネグリジェに包まれていて、とても神秘的にも見えるが、エレオノーラの抜群のプロポーションによってより扇情的に見える。
「んんっ……、はっ!ご主人様!ようやくお目覚めになられたんですね!」
「おはよう、エレオノーラ」
「はいっ、おはようございます!えへへ」
俺が目を覚ました事に気が付いたエレオノーラは目覚めた瞬間俺に抱きつく。
少々驚きはしたものの俺はそのまま彼女の頭を優しく撫でる。
「あれから何日たった?」
「えっと……、一日しか経っていないですよ?」
レナのカレーもどきを食べさせられて倒れてから俺は数日たっていたのだと思ったが、そこまでひどいものではなかったようで普通に寝て起きたら回復していた。
エレオノーラにあの後の顛末を聞くと、あの後俺はすぐに後宮医務局のICUに運び込まれたらしい。
しかし、処置を施そうとした駆け付けた医者は俺の症状などを見る為採血や各種検査をしたが、特に異常は見つけられず、その後も心肺機能にも異常が見られないことから、そのまま寝室へと運びしばらく様子を見るようにと指示したらしい。
最終的に医者は「恐らく気絶しただけでしょう」と判断していたそうだ。
何とも情けない。
話を聞きながらしばらく彼女の頭を撫で続けていると、撫でてもらって嬉しいのか、エレオノーラは顔を俺の胸にぐりぐりと押し付けていた。
よく見ればエルフの特徴的な長い耳がピコピコ上下している。
「陛下、おはようございます」
エレオノーラを愛でていると突如扉の近くから聞きなれない声が聞こえて来た。
「ああ、おはよう……、ええっと君は?」
「申し遅れました、私昨夜から陛下の傍付メイドの任を仰せつかった、アルゴ・ウェリスと申します。以後お見知りおきを」
声のする方向に顔を向けると、そこには胸元の大きく開いた白黒のメイド服に身を包んだ一人の女性が立っていた。
そして俺の顔が確認できたと同時に彼女はスカートを両手で持ち上げ頭を垂れる。
「君は確か、ガンテにつかまっていたこのうちの一人だったよね?」
最初は誰だか分らなかったが、彼女の顔を以前見たことがあることを俺は思い出した。
以前彼女は以前ウルス城に奴隷として囚われていたうちの一人で、ウルス城へ強襲した際にレナと俺達によって救い出していた。
救出する際に俺がその時抱いた彼女の印象は、少々言い方が乱暴だが、かなり劣悪な環境にいたという事もあり服がボロボロで髪も皮脂がこびりついている上にボサボサで薄汚れた女性という程度だった。
しかし、そんな彼女は今では見違えるほどに綺麗になっており支給された新品なメイド服に身を包み、その時は薄暗くよくわからなかったがロールアップされた髪は鮮やかな赤色をしている。
当然化粧もしているので、当時と比べて別人のように感じ気付かないのは無理もない。
その後、彼女は少し前この後宮の防衛をするための訓練やメイドとしての作法を学んでいたようだ。
こうして彼女が傍付の任務を受け配属されたという事は、その課程を修了したという事だろう。
恐らく、彼女だけでなく他のメンバーも修了したはずなので、今後入れ替わりで来るのかもしれない。
「ええ、その際は救ってくださり誠にありがとうございました。今もその御恩は忘れておりません」
「元気だったようで何よりだよ」
「この“穢れた身”ではありますが、精一杯ワタ様に一生ご奉仕いたしますのでどうぞよろしくお願いいたします」
彼女が言う“穢れた”というのはガンテの奴隷として過ごしていたことをさすのだろう。
「そんな、穢れただなんて言わなくてもいいよ、もちろんその事実や記憶は消えないかもしれないけれど、これからはそんな過去のことをなるべく忘れて生まれ変わったつもりでやって欲しい」
「素敵なお言葉をかけていただき誠にありがとうございます。早速ですが陛下、朝食をご用意しているのですが、こちらで召し上がりになりますか?」
「ああ、そうさせてもらうよ。エレオノーラもたべるよね」
「はい!」
「では、すぐにお持ちいたしますので、お待ちください」
そういうとウェリスは扉の外に出ていった。
しばらくするとウェリスはエミリアと一緒に二人分の食事を運び込んできてくれた。




