452.インフラと新組織
次の仕事は各地域のインフラ整備計画や教育施策、新兵器開発案(戦車、歩兵戦闘車、装甲兵員輸送車、対空戦車、空中空母等)、鉄道建設計画等々、国王として成さねばならぬ仕事だ。
さらにこれまでの魔法に対する弱点を補い、そして国内の魔法の管理や技術の向上といった目的で「魔法総省」という行政機関を新たに発足させる事になったので、それらに関する事の仕事もあった。
新しく出来る魔法総省の簡単な組織図は以下の通り。
魔法総省
魔法研究省
魔法を用いた軍事以外の研究を司る(例 魔法医学 魔法科学 魔法技術等)
魔法教育省
魔法教育を管理
魔法保安省
魔法犯罪の取締と魔法情報の管理
魔法商務省
魔法書や魔法関連製品の取引に関する事を管理
魔法総省の設立に合わせて、魔法に関する特に研究と教育費の予算を大幅に増額することになっている。
当然そのままの国家予算でやろうとすると、これによって他の予算が圧迫されてしまうので、研究教育特別国債を発行して賄う事になっている。
こういったものに関しても俺の仕事になるので、さらに俺の仕事は増えていく一方だ。
加えて現代戦略研究も行っているためここ1~2週間3時間ほどの睡眠しかとれておらず、無理やりエナジードリンクで体を動かしている。
まるでどこぞのブラック企業のようだ。
そんな事もあって最近は執務室に籠りきりで、先程の報告以外でほとんど人と顔を合わせることがなく、メリアとは時折顔を合わせる事はあるが、レナやアリサ、エリサ達に至っては最近一切合う事がなくなっていた。
「そういえば、オゼットに付いていったエレザやレナ、エレオノーラはもう戻って来ただろうか?」
当然各戦線に出ていった面々とも会えていない。
さらに自由な時間と休日が皆無という事もあって、かなりうっぷんが溜まって来ていた。
「あー!たまには出かけたい!温泉にも行きたい!もっとイチャイチャしたい!デート行きたい!!」
俺のフラストレーションは限界に達し、かなりストレスが溜まっているという事もあって執務室の外まで聞こえるほどの声で絶叫していた。
「ああああああああ!」
溜まりに溜まっていたため大爆発してしまった。
「へ、陛下如何なさいました?」
「どうしたの?」
その声を聴いて慌ててメイド長のエミリアとメリアが執務室に入って来た。
突然の発狂に完全に俺が病気にでもなったのではないかと心配そうな顔をしている。
「あ、ああ、ごめん、その疲れていてつい……」
二人が入って来たことによって正気を取り戻した俺は急に恥ずかしくなってしまい、椅子ごと窓側に回転させて顔をそらす。
「確かに大変ね、でも、あともう少しの辛抱よ、もう少ししたら私の仕事が終わるから。そうしたらワタの仕事を手伝えるようになるから」
心配になって駆け付けてきてくれたメリアだったが、彼女も女王としての執務が溜まっており、彼女もここ最近ほとんど休んでいないのだ。
それでも俺の事を助けようとしてくれるというので、心が痛む。
「それから速攻で仕事を終わらせて、また二人きりでデートに行きましょう?ね?それまで頑張ってちょうだい!」
とはいえメリアのその言葉に少し勇気をもらえた。
そらしたままではしっかりとその気持ちを受け止められないと思い、静かにメリアとエミリアの方向に体の向きを向ける。
「うん、ありがとう。メリアも大変なのに気を使わせちゃって。いやそんなこと言ってる場合じゃないね、もう少し頑張ってみる!」
「お互い頑張りましょう。じゃあ、またね!」
そう言い残すとメリアは俺とは別に用意されている女王専用執務室へと戻っていった。
メリアが執務室を出ると、残っていたエミリアが俺の机に近づいてきた。
「あ、あの陛下?」
「どうしたエミリア」
「もし、よろしければマッサージいたしましょうか?特に首でしたり腰が凝っていると思いますので」
「え!いいの?」
「ええ、私のマッサージは前国王からも評判だったんですよ!」
「じゃあ、ぜひお願いしようかな!」
「では、失礼しますね」
俺は机から離れソファーに移るとうつぶせになり、エミリアに首や背中、腰付近をマッサージしてもらった。
前国王からも褒められているだけあって、かなり丁寧でそして気持ちが良い。
あまりにも気持ちがいいので、俺はそのまま眠ってしまっていた。
「陛下?陛下!終わりましたよ!起きてください!」
「あ?うん?ありがとう。ついつい寝てしまったよ」
俺はエミリアに揺さぶられて目を覚ます。
どれぐらい寝ていたのかわからないが、少し頭がすっきりしていた。
これで短い睡眠でも、脳を休めるには大事だと改めてわかる。
「すこし楽になられましたか?」
「ああ、おかげさまで。本当にエミリアはマッサージ上手なんだね」
ほぐしてもらった肩も腰も随分と楽だ。
「お褒めにあずかり光栄です。私のマッサージでよろしければいつでもお申し付けくださいませ。それ以外にもご要望があれば何でもおっしゃってくださいね」
得意のマッサージを褒められて余程嬉しかったのか、エミリアは満面の笑みを浮かべる。
「わかったよ、ありがとう」
「では、失礼いたします」
満足したような顔のままエミリアは執務室を後にした。
「結構楽になったな、また頼もう!良しすっきりしたことだしさっさとやるか!」
身も心もすっきりした俺は、またきつく長い仕事を再開させるのであった。




