448.執務室での激務
コンダート王国アルダート城国王執務室
帝国各地で王国軍の作戦が進む中、俺と首相のユリアと国防総省長官と統合参謀本部情報総局長、KCIA長官、財務大臣のイリアは国王執務室に集まっていた。
ここで俺は各戦線の状況報告と国内情勢等といった報告を受けていた。
これまでは各軍の大臣や総司令官といった面々から別々の報告を受けていたが、昨今の戦争における情報量の増大と統括が必要との理由から、国内外の軍事情報については統合参謀本部情報総局が、国内外の軍事情報以外については王国中央情報局又は内務省が収集と分析を行い、それらをまとめたものを国王若しくは首相、国防総省長官といった意思決定権限を持つものに報告する事に変更した(一部例外あり)。
これにより非常に多く不正確なものが含まれる情報をいちいち国王等が自身で抽出するといった事をする必要もなくなり、簡潔にまとめられた報告書を参考に迅速に判断する事ができるようになる。
また情報を一挙にまとめ、役割分担をしっかりと定める事によって無駄な部分がなくなり、効率的に運用管理が出来る。
統合参謀本部情報総局は各軍の情報部隊を指揮・統制する事を踏まえてかなり権力が強い組織になった為、上層部の職権乱用や離反、その他背徳的な行動をとれないように、内務省やKCIA等で監視をしていく方針だ。
「以上が東部、西部、北部戦線の状況です」
「ありがとう」
まず初めに帝国領土内の各戦線について統合参謀本部情報総局長から報告を受ける。
内容はこうだ。
東部戦線では巨大なモンスターが現れ一時苦戦強いられたが、イスフェシアの勇者とエレザと二人を援護した第8機甲師団と第17機械化歩兵師団によって倒すことに成功していた。
ただ、戦いの後に原因不明の大爆発が起きてしまい活躍した両師団の7割が消し飛ぶという大惨事となっていしまった。
アレクシドロ攻略作戦では予想外の抵抗によって多大な犠牲を出したものの、上陸作戦を強行しさらに合流した第40機甲師団によって戦況が一気に好転し、そのまま占領に成功。
東部戦線では住民に対しての攻撃や被害が出ないことを徹底させたことが原因で指揮や作戦を混乱させていた。
その結果、アレクシドロ攻略作戦以外でも王国軍側にかなりの犠牲が出てしまっていた。
帝国各地の住民の避難をさせる為、王国軍はビラ作戦や拡声器等による勧告を行ったが場所によって効果が限定的なことが多く、戦闘が開始されるとようやく避難をし始めるといったことが散見されたからだ。
これらの原因を統合参謀本部情報総局第1副総局第3局(軍内部情報担当)が避難民から得た情報をもとに調査し分析したところ、過去に帝国が他国からの侵略を受けてこなかったことで自分たちがまさか戦闘に巻き込まれるとは思わず行動が遅れたといった事や、そもそも王国軍が攻めてきているという情報自体知らなかった等といった話が調査対象の大部分を占めていた。
さらに捕虜となった帝国軍兵士によると、王国軍と真正面から戦う事は難しいのであえて住民をそのままにして所謂“肉壁”にせよという命令が上層部から来ていたという証言や帝国軍は元から勝てないと分かっていたので、この状況を利用して自分たちが少しでも有利になるようにして時間を稼ごうとしていた証言から、それがさらに王国軍を苦しめたという事も判明した。
この対策として、統合参謀本部情報総局指揮の元、王国軍各情報部隊は工作員を投入し兵士の戦意低下や住民達には危機感をあおるような内容の情報を流し、加えてこれまで帝国国内の町や村のより詳細な情報がなかったのでそういった情報収集をより重点的に行うこととした。
王国中央情報局はこの工作の効果が出れば住民はこれまでよりも避難しやすくなり、帝国兵士たちはより降伏しやすくなるであろうという分析結果を出していた。
次にローザ率いるエンペリア・コンダート混成軍はエンペリア王国陸軍から帝国軍が戦車や戦闘機を盗み出され、さらにエンペリア王国軍内部に内通者が多発するなどといった不祥事が立て続けに発生したことに加え、混成軍隷下のエンペリア軍内部にも帝国軍内通者がいたことが発覚したことが大きく影響してしまい、進軍が予定より大きく遅れてしまった。
さらに猛烈な砂嵐や地殻変動、巨大モンスターの群れとの遭遇といった想定されていなかった様々な事象に見舞われてしまったが、無事エンペリア王国国内にいた帝国軍を撃滅させる事が出来た。
エンペリア王国海軍と同様エンペリア陸軍も兵器管理体制が整っておらず、供与された兵器の内10%ほどが盗まれる事態に陥っており、さらに戦闘では上手く兵器を運用しきれず敗退することがしばしばあり、その時に兵器をそのまま残して敗走してしまっているので鹵獲されてしまっているという情報もある。
この問題に対して、今後は武器や兵器を保管している施設や基地に統合参謀本部情報総局第3副総局第5局(エンペリア王国担当)や国家憲兵軍の派遣しより強固な監視体制を敷かせるように命じ、ネズミ一匹すら通すことを許さないようにする。




