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446.一時休戦2

 

「師団長、彼らは一時休戦を申し出たようです」

「わかった、なら予定通り彼らの陣地に第3機械化歩兵軍団の野戦病院を送り込むよう要請する事と我が師団の備蓄から半日分の水を帝国軍陣地へと送り込め」

「了解」


 帝国軍守備司令官から一時休戦受諾の報を受けた第26機甲師団は第3機械化歩兵軍団に所属している二個野戦病院を彼らの元へと送るように要請。


 ここまでやって来た帝国軍副守備司令は人質として第26機甲師団司令部に拘束された。

 戦車小隊は第26機甲師団長から手渡された手紙を手に守備陣地へと戻っていった。

 その手紙には「一時休戦の提案受け入れ感謝する、これよりそちらに野戦病院と半日分の水を送る。そして休戦は明日の正午まで」と書かれていた。


 この帝国軍に提示した提案は彼らにとってのメリットしかないように見えるが、混成集団としても一時休戦してうけるメリットが存在する。

 それはこれまでこの守備陣地までほぼ休みなく進軍や戦闘を行ってきていたことによる兵員の疲労蓄積だ。

 いくら補給が万全であって治療や兵器の修理といった各種後方支援が充実していたとしても、兵員の休養が行えていなければ本当の意味での力を発揮できない。

 それが今の混成集団の兵員の大きな問題になりつつあった。

 今回は少しでも解消したいというのが混成集団側の目的なのだ。


 ただ、たった半日で兵員の十分な休養がとれるかという問いには大きな疑問が残る。

 休養をしっかりととるのであれば、半日ではなく少なくとも2日ないしは3日は取らせる必要がある。

 しかし、混成集団としてそれを実現するには現状難しい。

 それは、この混成集団が遅れることによってエンペリア王国や帝国国内に既に展開しているコンダート王国軍西部戦線や北部戦線に悪い影響を与えてしまうからだ。


 そもそもこのような事が起きてしまっている原因の一つにエンペリア王国陸軍の不祥事がある。

 エンペリア王国軍が正常に機能していれば、コンダート王国軍と交代しながら戦闘を行う事によってお互いの兵士の疲弊が防げた。


 それではただの言い訳にしかならないので、その中でも何とか捻出したのがこの半日というものだった。




 一時休戦の報が混成集団へと届けられてから1時間後。


 第3機械化歩兵軍団所属の二個衛生病院は負傷している帝国軍兵士の治療を開始した。

 その中にはサンドワームの攻撃によって負傷した兵士と、それ以外には当然これまでコンダート王国軍が行ってきた攻撃によって負傷した兵士、計1345名いた。

 帝国軍陣地は医療品が十分でなく、軍属の医者も4名しかいない為、治療が満足に受けることが出来ず、軽傷だったのにも関わらず重傷者と変らない状態までに悪化している者さえいる状況だった。

 さらに、重傷者に至ってはほとんど息をしていないものや既に心肺停止の状態の兵士がいるありさまだった。

 それほどディア砂漠帝国軍陣地は追い込まれていたという事だ。


 しかし、そんな極めて劣悪な環境にあった帝国軍負傷兵を野戦病院の軍医と看護師や衛生兵(准看護師)たちの懸命な処置によって、9割は快方に向かっていき、そのうち2割は戦線復帰が出来るほどにまで回復。

 それでも残りの1割は残念なことに命を落としていってしまった。


 治療後、重傷によって動けない帝国軍兵士はそのまま明日以降も治療を受ける事を選択し、コンダート王国軍の捕虜となった。


 一方第26機甲師団師団長は、身柄を一時拘束されている副守備司令から先ほど現れたサンドワームのことについて情報提供してもらっていた。

 彼が言うにはこれまでの砂嵐や地震は全てサンドワームが起こしていたのだという。

 これを帝国軍では通常のサンドワームと差別化する為、ジャイアントサンドワームと呼称しているそうだ。

 さらに地形を大きく変化させていた原因も間違いなくこのジャイアントサンドワームのせいであった。



 野戦病院の治療と水の搬入も終わり、日が落ちた頃


 一時休戦になったこの一夜限定でお互いの食糧を持ち合って宴会をする事になった。

 中でも帝国軍の持って来たエールはコンダート王国では味わえないような上品な味わいのものだったようで王国軍兵士に非常に好評だった。

 対して王国軍は自慢の野外炊事装置をフル活用して豊富な料理を帝国軍側に提供した。

 これには同じ保存食を連日食べていた帝国軍に非常に好評だった。


 そして夜遅くまで宴会は続いた。




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