39.作戦会議
時は少し遡り、アルダート城内の会議室ではハミルトンへの援軍について会議していた。
作戦会議にはメリア、ヴァーテ(総参謀長)、ウェルシュ(陸軍総司令官)、リメリア、セレナ(近衛師団長)、ポーラ(陸軍情報部長)、ベルが参加した。
席につくとまず陸軍情報部長のポーラが恐縮した様子で話し出す。
「で、では、情報部から……ほ、報告させていただきます。現在ハミルトン城は帝国軍4万によって北の方角から侵攻を受けています。対するハミルトン城防衛隊はハミルトン・エレシア様が率いるハミルトン親衛隊1万と商人ギルド支部長率いる義勇兵が2千の総計1万2千とこちら側は数の上では劣勢です」
「“数の上では”とはどういう事なの?」
「はっ、はい、え~と、彼の帝国軍は全体的に傭兵や狩猟民俗を取り込んだため指令系統があまり機能しておらず、集団戦闘ではこちらに分があります。しかし、侮れないのが元々傭兵や狩猟民俗であったので個人戦闘ではあちらに軍配が上がります。ですので、戦術の使い方・攻め方等でも優劣が決まってくるかと思います。以上です」
「増援については誰だ?」
「ハッ!わたくしが話させて頂きます」
すると、俺の隣に座っていたウェルシュが立ち上がる。
「今、増援の準備が完了しているのは、リメリア中将の率いる近衛師団の約3万、ベル准将率いる騎兵3千です、以上の部隊で総勢約3万3千です、敵の増援がない限りはこちらが優勢になります」
「他には、何か有るか?」
「ないと思うわ……いつもだとここでエレシア姉さんが訂正とかをするんだけどね、今姉さんはきっと城を守るのに手一杯なんだろうな……そうだ、ウェルシュ!余っている部隊ない?」
「今はもう何処の部隊も国境地域防衛に遠征してしまって特に……残っている部隊は、今女王陛下のまわりを守る従軍侍女と護衛メイドのみです」
「そうね、そうよね、ごめんなさい」
「大丈夫だ、俺に良い案がある、というよりそもそも俺を期待していたんだろう?」
そういうと、自分のポケットからLiSMをとりだして銃器の項目を開き、あるものを探し出す。
探している間、皆何をしているのか分からずじっとこちらを見つめていた、ただ、急に話を中断し訳のわからないことをし始めたことに対して怒っているのか、約1名は憤怒の形相でこちらを威嚇している。
このときワタは何を探していたのかと言うと、約80年以上に渡って使用し続けられてきた“ブローニングM2重機関銃”だ。この銃は12.7×99㎜ NATO弾を使用し有効射程が2000mも有り、他の機関銃に比べると発射速度は遅いが毎分約500~600ぐらいの速さで弾を発射し、音速の3倍程度の弾丸を撃ち出し、約800m先にも正確に命中する。
前回の防衛作戦で使っていたM240でもよかったが、今回は作戦の都合上、長射程で高威力M2を選んだ。
俺は選び終えると机の上にM2を召喚してみる。
M240を召喚した時と同じように淡い光を放った後にM2が現れる。
「ワタ様、これはこの間の銃と何が違うのですか?」
「いい質問だベル、この銃はこの間の銃よりより遠く、ある程度正確に撃つことができる。これによって遠くを狙撃することも可能だし、前みたいにばらまくことも可能だ」
「では、この間のように私も活躍できるのですね!」
「そ、そうだな、ただ、ベルには本来の……と言うより別の指令があるからそっちを頑張ってくれ」
「……はい」
ベルは残念そうな顔をするが気にせず続ける。
「それとポーラ、敵はいつ動き出しそうだ?」
「ハッ、情報によりますと現地敵部隊は補給部隊と増援部隊を待ってから攻撃しそうだとのことなので約一週間後には攻勢が始まるかと思われます!」
「ここからどのぐらいでハミルトンに着く?」
「補給をしながらだと1週間、途中での補給を無視し、補給をハミルトンでするならば5日で到達可能です」
「補給のことは任せた、今すぐハミルトン救出のために全救援部隊に出撃命令を伝達!出撃は今夜!」
その言葉を聞いた各々は最敬礼をした後、早々と部屋を出ていき各部署に戻ってゆく、会議室には俺とメリアだけが残る。
メリアは顔を手で覆い動かなくなっていた。




