442.ディア砂漠の戦い5
一方その頃帝国軍陣地
砂嵐が落ち着き、突然大きく地面が揺れたかと思えば、巨大な数体のサンドワームに襲われてしまい帝国陣地内は騒然としていた。
それでも、これまで王国軍からの奇襲や強襲がいつでも来ていいようにと訓練と準備がなされていた事もあって、すぐに立て直し陣地にいる帝国兵は、榴弾砲や戦車砲、対空機銃といったあらゆる兵器でもって何とか陣地に近づかせないようにとサンドワームに対して攻撃を開始していた。
「守備司令!サンドワームに我が戦車部隊と榴弾砲が全く効く様子を見せず、止めることが出来ません!」
しかし、帝国軍の攻撃はサンドワームに全く効果がないようで、陣地内最大火砲である105㎜砲でさえも硬い外骨格のような部分で弾いてしまうサンドワームは止まることなく陣地に向けてゆっくりと進んでいた。
守備司令は予想もしなかった“来客”に冷静さや判断力といったものが大きく欠如してしまったのか、その結果、参謀に無理やりにでも倒すように命じてしまう。
「クソッ!何故王国軍が目の前にいるのに、こいつらにやられなければいけないんだ!攻撃を続行して何とか倒せ!」
「そうなると、貴重な弾を使い切ってしまいます!それでも倒せるとは思いません!」
しかし、この状況にあっても冷静さを失っていない参謀は守備司令を何とか思いとどまらせる為に警告を発する。
ただでさえ余分な砲弾が用意されてないうえ補給が途絶した状態だというのに、本来の王国軍を攻撃する為に用意していたものをここで使ってしまえば、王国軍に対して全く攻撃することも出来ず、ただただこの陣地を受け渡すようなことになってしまうからだ。
たとえここで攻撃を続行したところで、今の兵器ではサンドワームに全く歯が立たないのだから、無意味であることも参謀を含め副守備司令も理解していた。
「なら、どうすればいい!」
「それが……」
とはいえ、参謀も副守備司令も対応策は全く持ち合わせておらず、守備司令の問いに何も答えられなかった。
「報告!」
一時、指揮所を沈黙が支配していたが、報告にやって来た通信兵によって元に戻った。
「なんだ!」
「第5防御陣地がサンドワームによって破壊され、戦死行方不明者多数!防御陣地隊隊長も戦死!さらに負傷者50名とのこと!」
サンドワームの進攻を止められない帝国軍は防御陣地を一つ破壊され、さらに陣地内への侵入を許してしまった。
そのさなか甚大な人的被害がでてしまい、さらに指揮官の一人までもが戦死してしまうという報告まであった。
「すぐに副隊長に第5陣地を放棄させて、残存兵力を第11防御陣地まで後退させるように言ってくれ。それと残存兵力の数をなるべく正確に数えてこい」
「了解!」
守備司令は報告にやって来た通信兵に素早く新たな命令を託す。
その様子に周辺にいた指揮所幹部たちは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。
「守備司令……」
「なんだ?お前たちはさっき俺が自暴自棄になっていたといいたそうだな?しかし、考えてもみろ、君らが答えられなかったように、もう我々には攻撃続行しか残されていなかったのだ。それこそ参謀が言っていた事は百も承知だ」
つまりこれまで一番冷静にこの戦局をみて、次出るべき行動を考えていたのは守備司令であった。
「そんなことより、貴重な砲兵と戦車を喪失することが一番よくない、サンドワームの進行スピードに合わせて徐々に後退させるように各部隊に伝えてくれ!」
「「「了解!」」」




