438.ディア砂漠の戦い
作戦会議が終ると、エンペリア王国ローレリアの町付近に作られたコンダート王国空軍基地に対してウィルアスは爆撃要請をしていた。
この基地にはB-52やB-2といった爆撃機やA-10、AC-130Uといった近接航空支援機が配備されており、今回の爆撃要請を受けこの全てが出撃する事になった。
飛び立った爆撃機と近接航空支援機の300を超える大編隊は、要請から僅か40分で敵基地上空に到着し、要請通り爆撃機部隊はナパーム弾や1000㎏の誘導爆弾を基地内に投下し、基地外には燃料気化爆弾を投下していった。
残る近接航空支援機のA-10は爆撃の合間を縫って低空で基地上空を何度も往復し自慢の30㎜機関砲での機銃掃射や500㎏誘導爆弾の投下を行い、AC-130Uは機体中央右に装備された105㎜りゅう弾砲と40㎜機関砲を基地の周囲を左旋回しながら攻撃を行っていった。
「ローレリア空軍基地司令より報告『要請通り敵前線基地に全力出撃させ爆撃を敢行。敵基地にかなりの損害を与えた模様。なお基地周辺にあるとされる地雷の誘爆とみられる爆発も確認されている事から、ある程度は処理出来たと思われる』とのことです」
爆撃が終るとローレリア空軍基地司令からローザの元に報告が来ていた。
空軍はこちらの空爆要請に全力で答えてくれたようで、基地に配備されていた機体の8割を投入した。
その効果は絶大で、基地にあった対空陣地や砲兵陣地等は爆撃によってそのほとんどが破壊され、周辺に敷設されていた地雷もある程度除去できたようだ。
「良し、効果はあったようね。砲兵部隊と機動自走砲連隊に砲撃開始させてちょうだい」
「了解」
報告を受けたローザは部下に後方で待機している機動自走砲連隊と応援にやって来た第5砲兵師団に砲撃開始を命じた。
同時に弾着観測の為に第2戦闘ヘリコプター連隊所属機10機も出撃した。
砲撃要請を受けた4個機動自走砲連隊は配備されているM107A7パラディン×2744両による一斉射撃を開始。
さらに、後方に待機していた第5砲兵師団の203㎜りゅう弾砲×120門による一斉射撃も行われた。
この一斉砲撃によって、基地から離れた位置にいるはずのローザ達の指揮所が揺れるほどであった。
この砲撃は10分連続して行われた。
「報告!砲撃終了!この砲撃によって敵弾薬庫が誘爆した模様、さらに塹壕の約半数以上が破壊されたとのことです」
「これで、安心して進撃させることが出来るわね……、全基地攻略部隊進撃開始。ウィルアス、アス、後は頼んだわよ」
「「了解」」
こうして激しい砲爆撃で基地の防御能力を大きく削いだ事によって、攻撃部隊の侵攻開始が決まった。
「出撃準備は出来ているか?」
「既に全部隊の出撃準備は完了しております。いつでも行けます」
「地雷処理ローラーも装備させただろうな?」
「はっ、先頭を進む部隊の車両すべてに装着済みです」
司令部からの命令通り、先頭を進む事が決まっている戦車の車両全てに地雷処理ローラーの装備をさせていた。
「良し、ならば全部隊進軍開始!!」
出撃命令を受けた第26機甲師団はいつでも出撃できる状態であったので、命令を受けてすぐに出撃を開始した。
進軍開始から半日ほどで帝国陣地との距離1㎞まで近づくことが出来た。
帝国軍が空軍の攻撃によってかなりの戦力を損耗していたようで、この距離まで近づいたが全く攻撃を受けることはなかった。
「師団長!報告がございます」
「なんだ?」
「基地周辺を偵察していた戦闘ヘリコプター部隊より、砂嵐の発生と地形の変化がみられるという報告が入っております」
しかし、進軍開始命令から僅か数分で再度砂嵐が発生し地形の変化がみられるという報告が入って来た。
「なんだと?!すぐに進軍を停止させて引き返させろ!」
この報告を受けた第26機甲師団長は、進軍を急遽断念し撤退させた。
万が一砂嵐に巻き込まれてしまえば、部隊が完全に身動きできなくなってしまうからだ。
「クソッ!あと一歩のところで……、何故だ!」
後一歩のところで敵に直接攻撃出来る直前での断念を決断しなくてはならなくなったことに、師団長は苛立ちを隠せずにいた。




