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433.ディア砂漠にて

 

 問題のあったエンペリア王国第1・2機械化騎兵師団は首都ベリアまで後退させたローザは新たに王国軍の部隊を編入させた“コンダート・エンペリア混成集団”(以下混成集団)に進軍命令を出した。


 命令を受けた混成集団は、盗んだ戦車と榴弾砲で構成され砂漠の中心で待ち受ける帝国軍部隊を攻撃すべく前線基地から進軍を始めた。


 編入された部隊はコンダート王国陸軍第26機甲師団と第27機甲師団、近衛第5師団、第3機械化歩兵軍団だ。

 中でも先鋒を務める第26機甲師団の各戦車大隊にはメルカバⅣが配備されている。


 空軍第7戦略偵察航空団所属のSR-71高高度偵察機が撮った写真から、混成集団前線基地からおよそ12km先に帝国軍の部隊が陣地形成しているという事がわかっていた。

 そこには情報通り多数の戦車や輸送トラック、榴弾砲といった帝国軍には不釣り合いな「近代兵器」の姿があった。




 進軍してから4日後。

 帝国軍陣地まで6㎞地点。


 いち早く情報通りの地点までたどり着いていた第26機甲師団であったが、帝国軍がすぐ目の前にいるにも関わらず、昼夜問わず続く砂嵐という悪天候の影響で身動きが取れない状態にあった。


 普段であれば砂嵐程度の天候であればメルカバⅣに標準搭載している赤外線カメラを使えば問題なく戦闘は行えるのだが、そんなメルカバⅣですら動くことすら出来ずにいた。

 それは、砂丘がまるで生き物のように動き、“地形ごと”数分単位で変わってゆく為だ。


 砂丘の位置が変化するだけであればヘリコプターや偵察機を飛ばせば済む話だが、激しい砂嵐がそれを許さない。

 最終手段として、随伴する第3機械化歩兵軍団の歩兵戦闘車部隊による偵察もあるにはあるが、この状況では自殺行為だと判断され動けずにいた。

 こうした中でも高高度(高度2万m)を飛び砂嵐の影響を受けない空軍第7戦略偵察航空団所属のSR-71からは情報を絶えず送ってきてくれている為、近くに展開しているはずの帝国軍の位置だけは確認出来ていた。


 ここまで現代兵器をフル活用した王国軍でさえも動けずにいるので、そういったものを全く持たない帝国軍はもっとひどい状態だろう。

 とはいえデスニア帝国は魔法技術がコンダート王国より進んでいるので、完全に油断できないとローザ含め麾下の部隊長や幹部たちは考えていた。



 進軍してから5日後。


 砂嵐も地形変化もようやく落ち着つき、強風も収まり航空機が飛ばせる状況になったので、近衛第5師団隷下第2戦闘ヘリコプター連隊第521戦闘ヘリコプター団(AH-64E×12)に敵の位置を探らせる目的で再度偵察に向かわせていた。

 この部隊を行かせたのは偵察と同時に威力偵察を行わせるためでもある。


 偵察部隊が向かったと同時に第26機甲師団も前進を始めた。


『団長!昨日送られてきた航空写真と全く同じ位置に帝国軍が陣地を構築しています!』


 現地上空に到着したAH-64Eは即座に第521戦闘ヘリコプター団指揮所に情報を知らせる。


「ああ、見えている。なるべく全容がわかるように飛行してくれ」

『了解』


 指揮所に用意された大型ディスプレイには四方八方に張り巡らされた塹壕やコンクリートのようなもので作られた指揮所、対空陣地等が設置され、かなり強固な陣地が作られているようすが映し出されていた。


「良し、本隊が攻撃する前に出来るだけ数を減らすんだ、特に戦車を潰せ。全機攻撃開始!」

『了解!』


 攻撃命令を受けた12機のAH-64Eは一斉に地上にいる戦車や各陣地に向けて襲い掛かった。




「敵襲!敵襲!対空陣地に付け!!」

「あれなら俺らでも堕とせる!撃ちまくれ!」


 対して帝国軍兵士たちは対空陣地に設置してあった二連装のM2 重機関銃やM4シャーマンの屋根に付いているM2重機関銃やM1919機関銃で反撃を開始。


『2番機被弾!』

『3番機も被弾!』


 低空を飛行していた為2機が被弾してしまった。


『大丈夫か?』

『こちら、2番機、燃料タンクとチェーンガンに被弾した模様。飛行には問題ありません!』

『3番機はどうか?』

『3番機は右スタブウィングと機首ターレットに被弾。こちらも飛行には問題ありません』

『了解、被弾した2番、3番機は攻撃を直ちに終了し帰投せよ』

『2番機、了解』

『3番機、了解、帰投します』


 被弾してしまった2機であったが、メインローターといった飛行に必要な場所は被害がなかったためそのまま攻撃を中止させ帰還させた。


 残った10機はM2重機関銃が届かない高度まで上昇し、上空からハイドラ70ロケット弾や30㎜チェーンガンをばらまき撤退した。





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