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430.遅すぎた報告


 エンペリア・コンダート混成集団コンダート王国軍指揮所


 ローザはガルド中将からかなり沈んだ声で「今から大事なお話がありますのでそちらにお伺いさせて頂きます」という内容の電話で聞いたので、指揮所に併設している会議用のテントへと向かっていた。


 「ガルド、急に呼び出して、一体何の用?」


 ローザは会議用のテントに入るとガルドに呼んだ理由を問いかける。


 「王女殿下急にお呼び立てしてしまい申し訳ございません。こうしてお伺いしたのは…」

 「御託はいいから、用件だけ言ってちょうだい」

 「はっ!失礼いたしました。簡単に申し上げます……、供与して頂いた戦車計20両及び155㎜りゅう弾砲12門が盗難に遭い、それ以外にも燃料や弾薬、輸送用のトラック等といったものも同じく盗まれてしまっております。現在これは帝国軍による仕業だとみています。とは言えこれは我々の管理の杜撰さが招いたことです、大変申し訳ございません」


 ガルドは簡単に報告すると、深々と頭を下げた。


 「ガルド。あなたこれ、一体どうするつもり?」


 ローザは彼のその様子を一瞥すると、彼に対してこの後のどうするかを問う。

その一言によって元々重苦しい空気だった会議用テント内が凍り付いてしまう。

 心なしかローザの周囲には冷気が漂っているようにも見える。


 「もちろんこれは帝国軍が盗んだ事だからそこに関しては彼らが悪い。それはわかるの。でもこれらを管理していたのは誰?」

 「我々エンペリア王国陸軍です、大変申し訳ございません」

 「そうよね。一体どんな管理をしていたのかしら?……そんな事を聞いてもしょうがないわね。これからどうすればこの杜撰さと甘さが治るかしら?」


ここで起きた原因を追及しても話が長くなり彼らを余計に追い込んでしまうと考えたローザは、ガルドに今後の対応策の考えがあるか聞いた。


「はっ、改善策としては、今回の事件は夜間に起きたと聞いておりますので、夜間の警備を増強させようと思います」

「それだけ?」

「はっ、これ以上増やしてしまうと正面戦力が……」

「違うでしょ?」

 「あ、えと」


 正直警備強化以外考えていなかったガルドはローザの追及に言葉を詰まらせる。


 「もう、いいわ。これから話すことをよく聞いて。そもそも、昨夜の時点でこの情報は私の元に入っていたの、そのあと当然母上とコンダート王国国防総省に一報入れているわ。この時点であなた方は遅すぎるの。これは何故なの?通信機器も供与されているはずよね?使い方をまだ知らないかしら?問題はこれだけじゃないわ」


 その後ローザは彼らだけではなくこれまでに露呈したエンペリア王国軍全体の問題を話し始めた。


 一つ目は通信設備が上手く機能していないこと、これはエンペリア王国軍に兵器が供与される前から指摘されてきた事で、一部部隊では狼煙と旗の配置だけで意思疎通しあっていたほど部隊間連絡を軽視していた。

 そういったことから習慣的に煙と旗が視認できない夜間には通信しないということが起きていた。


 二つ目はエンペリア王国軍兵士の中に帝国軍の内通者とエンペリア王国軍に扮した工作員が相当数いるという事だ、これに関しては近現代化されたころから顕著になっていたようで、これが原因で兵器の場所や操作マニュアルといった軍事機密が駄々洩れ状態になっていたのだ。

 この内通者と工作員をあぶりださない限りこれは続いてしまい、エンペリア王国軍が骨抜きにされてしまう。

 さらにこういった兵器を盗み出し技術まで流出することによって帝国軍がコピー品やこれ以上のものを作り出してしまう危険性さえある。

 実際既にエンペリア王国海軍から軍艦の設計図や部品が盗み出され、帝国はそれをもとに新しい鉄製軍艦を就役させてしまっているのだ。


 「これがどういう事かわかる?これはエンペリア王国だけではなくコンダート王国にも影響することなのよ?」

 「はい、その責任をとるために私だけでなく管理していた師団長の首をこの場で陛下に刎ねて頂こうと思っております」


 この様に彼らが首を刎ねるようにお願いすることは、主君に対して失礼な事をしてしまった事や政治的に大きな失敗をしてしまった時にエンペリア王国軍だけではなく官僚にも伝わる最上級の謝罪方法なのだ。


 「馬鹿者!貴様らがここで命を落としたらそれこそこの後の指揮は誰が執るって言いうんだ!生きて最後まで責任をとれ!」

 



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