423.アレクシドロ最終決戦
毒ガス攻撃を受けて一時的に進軍が中断されていた各大隊であったが、すぐに立て直し再度第三防衛線に到達。
この防衛線も第二防衛線同様バリケードや障害物によって容易には進めないようになっていた為、再び後方に待機する重迫撃砲中隊による火力支援を受けていた。
迫撃砲の攻撃が終ると、毒ガス攻撃後に受けたときのような不意打ちを警戒して、敵の潜んでいそうな建物に対してAT-4やカールグスタフM4という無反動砲による攻撃、M249機関銃やハンヴィーに搭載されたM2重機関銃による機銃掃射を徹底的に行った。
対する守備隊はこれほどまでの王国海兵隊の猛攻に第三防衛線は耐え切れず、無抵抗のままアレクシドロ城へと撤退。
こうして王国海兵隊はようやくアレクシドロ城手前まで部隊を進めることに成功した。
「そうか、では後少しだな」
アレクシドロ城まで攻略が進んでいるという報告にロンダルキア中将は少し嬉しそうであった。
「しかし、まだ油断はできません。これまでは兵器の差で圧倒してきましたが、魔法や大量の魔物を使役されては耐えられないかもしれません」
嬉しそうにしていたロンダルキア中将はレミリアの言葉に険しい顔つきに戻す。
「それは私とてわかっている、これから想定されるのは敵の攻撃で厄介なのは君の言う通りのものだ。しかし、残念な事に王国軍は魔法攻撃にたいして非常に脆い、それはこれらを召喚した陛下がお生まれになった“世界”にこういったものが存在しないからだ、それは君もわかっているだろう?」
「はい」
「これまでは何とか火力によってその弱点を補ってきたが、今回はそれも上手くいくかわからん。それに魔法を得意とする我が国の部隊は既に中央戦線に出払ってしまっているから彼らを呼び寄せることも叶わないだろう」
王国陸軍には以前からあった魔法部隊が今も存在しており、多少の増強が行われたものの、帝国軍に比べるとそれは大したことがない。
しかも、その部隊のほぼ全てが中央戦線に出て行ってしまっているので、彼らからの支援は全く期待できない。
「では、この後はさらに厳しい戦いになるという事ですね」
「ああ、そうだ。これまでも犠牲が出てしまっているが、これからはさらに出てしまうだろう。しかし、これは命令だ。やれと言われたら最後までやるのが軍人だ。無理だからといって引くわけにはいかない」
「そうですね……」
アレクシドロ城前に到達した第5連隊海兵各大隊と第51海兵連隊は予定通り一旦後退し、第11艦隊に支援砲撃要請を行った。
「5RHQ、11FTQ、檻の外に出た、繰り返す、檻の外に出た」
「こちら11FTQ(第11艦隊司令部)、了解。これより対地攻撃を開始する」
通信が終ると第11艦隊の統合戦艦2隻と護衛艦艇14隻による激しい対地攻撃が開始された。
統合戦艦は砲撃前に120機のCF-1戦闘機とAH-64E 40機を飛び立たせた後に、50口径51㎝砲24門の主砲で城の海側に向けて激しい砲撃とVLSからトマホークミサイルを100発発射した。
さらに、護衛艦隊の重巡洋艦の主砲20.3㎝連装砲2基の砲撃とそれ以外の艦艇全てから400発を越えるトマホークミサイル 城の山側に対して発射された。
その砲撃音は艦隊から20㎞離れた陸上に待機している両海兵連隊の司令部まで鳴り響き。
凄まじい量の砲弾やミサイルが着弾するとさながら雷や火山噴火のように空気を激しく振動させ、同時に地面も激しく揺さぶった。
砲撃とミサイルによる攻撃は5分後には終了した。
激しい攻撃に晒されたアレクシドロ城は、今は跡形もなくかろうじて城を支えていた盛り土が残るのみだ。
しかし、艦隊からの攻撃が終ったとみるやさらに続けて上空からAH-64Eによるロケット砲やヘルファイアミサイルによる爆撃が倒壊しなかった城の一部に対して開始され、毒ガスを隠し持っている可能性があるという事でCF-1戦闘機によってナパーム弾を計240発投下した。
そのナパーム弾の火炎に包まれた光景はまさに地獄のようだ。
“汚物を消毒”というのはこのことを言うのだろう。
ここまで徹底して砲爆撃を行ったので、海兵隊と艦隊の指揮官たちは流石にこれでアレクシドロの抵抗は終わるだろうと思っていた。




