419.アレクシドロ市街地戦3
第一防衛線を突破する際に建物に隠れていた帝国兵に狙撃され負傷者は出たものの、戦死者は全く出すことなく第二陣地の目前まで各大隊は進軍することができていた。
各大隊は手筈通り、敵陣地の座標を確認し一度後退し、状況報告を連隊本部へと送った。
「報告!攻略中の各大隊は予定通り敵第二陣地迄到達したとのこと」
第五海兵連隊本部の元に届いた吉報に、ウェルフェン大佐は少し喜んだ表情をしていた。
「良し、ここまでは順調のようだな」
「ええ、予定通り重迫撃砲中隊に砲撃開始命令を出しましょう」
対して副官や参謀たちは慎重な態度を崩さないでいる。
「あ、ああ、そうだな。通信!重迫撃砲中隊に砲撃開始せよと伝えろ」
「了解!」
連隊本部から各大隊後方に待機している重迫撃砲中隊に砲撃開始命令を送った。
目標は敵の第二防衛線だ。
「こちら5RHQ(第5連隊本部)からHMC(重迫撃砲中隊)、持ち場に着いた、繰り返す、持ち場に着いた」
『HMC了解、座標を送れ』
「了解、座標はN34E24,N65E45,N34E97、繰り返すN34E24,N65E45,N34E97だ」
『……HMC了解、これより各座標にを』
座標が本部から送られてくると重迫撃砲中隊中隊長は隷下小隊に指示を出す。
「第1小隊はN34E24、第2小隊はN65E45、第3小隊はN34E97に座標を合わせて試射せよ!」
「「「了解!」」」
命令を受けた各小隊はすぐに砲撃準備に取り掛かった。
「HMCから各大隊本部へ、これより各座標へ試射を行う着弾位置観測報告を求む」
『『『了解』』』
効果的な砲撃を行う為、重迫撃砲中隊隷下の各小隊は試射を行う。
「装填良し!」
「座標良し!」
「用意……!てっ!」
バシュ!
「弾ちゃーく……今!」
『51BHQ(第1大隊本部)、修正右30引け140』
『52BHQ、修正左20引け120』
『53BHQ、修正左10』
「了解」
各大隊から送られてきた着弾観測情報をもとに修正射に移行する。
「修正良し!」
「装填良し!」
「てっ!」
バシュ!
「弾ちゃーく!今!」
『命中!効力射に移行せよ』
「了解、効力射に移ります」
修正射によって指定座標に着弾させた各小隊は効力射へと移行する。
「各小隊、効力射に移行せよ。弾がなくなるまで撃ちまくれ!」
「「「了解!」」」
特徴的な風切り音が攻略中の大隊隊員たちの頭上でなったかと思うと、すぐに目標であった敵のバリケードに次々と着弾、大きな爆発音が鳴り響く。
爆発の勢いでバリケードの構造物や武器等が吹き飛ばされ、いくつかの迫撃砲弾は陣地近くにあった建物に着弾し、大きな音を立てて崩れていった。
迫撃砲弾の中には一部白リン弾が含まれており、着弾した付近にいた敵兵は白リンが付着し燃え上り悲鳴を上げていた。
そして砲撃開始から僅か一分ほどで数十発の120㎜迫撃砲弾がうちこまれた敵の防御陣地は破壊しつくされ、今や見る影もない。
周囲は爆発によって舞い上がった土埃が漂っていた。
『こちら、HMC射撃終了』
「了解……、突撃!」
敵陣地が破壊された事が確認されると、最前線にいた中隊長の掛け声と共に一斉に敵陣地へと突撃していった。
迫撃砲による攻撃で敵はかなり減っていたので、大きな抵抗を受けることもなく敵の第三防衛線付近へと無事到達。
しかし、第三防衛線に近づいた途端、海兵中隊の隊員たちの全員が体の異常を訴え始めた。
「ゴホッゴホッ」
「目が!目がー!」
隊員たちは目やのどの痛みを訴え、その場でうずくまり苦しんでいた。
「今だ!侵入者どもを討ち取れ!!」
進軍が止まった事を見るや否や帝国兵達は一斉に弓矢や銃で攻撃を開始。
突如として視界や思考能力が奪われた最前列の海兵隊員たちは、帝国兵の攻撃に対して全く抵抗することが出来ず、次々と放たれた矢や銃弾によって負傷者が続出してしまう。
「状況ガス!」
「ガスマスクをつけろ!」
「盾を前に!」
「衛生兵!!衛生兵!!」
苦しんでいる原因が毒ガスだと判断した隊員たちはすぐにガスマスクを着け、被害がひどい最前列の味方の救助に向かった。




