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414.思惑

 

 一週間前のアレクシドロ城会議室。


 ここにはアレクシドロ地方領主であるアレクシドロ・ハフマンと幹部たちが集まっていた。

 アレクシドロ・ハフマンは“行方不明”となっているアレクシドロ・メテスの兄である。


 そして彼は、中央からやって来た陸軍参謀部付大尉のアリーセという女から渡された数枚の報告書と中央からの通達書を読み、苦虫を噛み潰したような顔になっていた。


「中央は本当にこういってきているのか?」

「ええ、確かに」


 通達書には対王国軍に対しての絶対防衛線を帝国北部地域まで下げるという事が書かれていた。

 つまり、これはこの地を見捨てるという意味とほぼ同義なのだ。


「正気か?」

「ええ、最後に女帝陛下の魔法印もついているので、まず間違いないかと」


 さらに続けて通達書にはこう書かれていた。


「『貴殿はその城にて、籠城し王国軍をできるだけひきつけた上で、時間稼ぎをしてほしい』だと、要は捨て石という事だな?」

「領主様のおっしゃる通りでございます」


 防衛線を下げたのは王国軍の恐ろしいまでに早い侵攻速度もあるが、それ以上に旧中央諸国連合の裏切る可能性が出て来た事が原因だ。


 帝国からの最後の物資には王国軍が使う毒ガスに耐えられるようになる“白い薬”が全住民分と全兵士分が入っていた。


 報告書には王国海軍が数日中に沖合に接近してくるとされ、早ければ一週間以内には上陸が開始されるとのこと。

 さらに内陸部では ウェルフェナーダまで王国軍とイスフェシアの勇者の連合部隊が破竹の勢いで進撃してきており、ウェルフェナーダが陥落するのも時間の問題。


 加えてアレクシドロから40㎞地点に王国陸軍が進軍してきていることが確認されていることから、もしここで籠城しても2週間以内にはここまでやってくるので、王国軍を釘付けにすることが出来るのは長くて一週間。

 しかし、それでも釘付けにできる部隊はほんの少しだろうと城の防衛軍団長は見積もっている。


「城下町の住民を逃がすことは出来るか?」


 ハフマンは住民達を逃がすことが可能か真っ先に軍団長に問う。


「領主様、一度脱出計画を検討しましたが、残念ながら、今の兵力では住民を安全な場所まで避難させるのは難しいという結論に至りました」


 軍団長はその問いに俯き気味に答えた。

 軍団長も住民達を逃がそうと思案したが、この城の周辺環境が原因でそれが容易に行えないのだ。


「やはり、北と西にある魔物の森は通過できない……、か……。では、籠城したとして、王国軍に少しでも痛手を負わすことは出来るのか?」

「それについては、女帝陛下から“秘策”を送るのでそれで解決できると」


 ハフマンの問いにアリーセは間髪入れず答えを返した。


「“秘策”とはなんだ?」

「そのことについては私の口からは申し上げられません」

「貴様!中央から来たからといって調子に乗るなよ!」


 近くに座っていた軍団長はアリーセの胸倉をつかみかかった。

 対して掴みかかられた本人は、軍団長に全くひるむ様子を見せぬまま無表情で彼を見つめる。


「やめたまえ。ここで罵声を浴びせても状況は何も変わらない」

「し、しかし!」

「君の気持はよくわかる、だが、今は落ち着きたまえ」

「はっ……」


 ハフマンに諭され軍団長は渋々アリーセの胸倉から手を放す。

 しかし、どうしても気に食わない軍団長は顔を彼女の耳元に寄せ一言囁く。


「貴様、覚えておけよ?貴様をここでは好きにはさせんからな?」

「肝に銘じておきます」



 アリーセの話が終ると、他の報告や各部署への指示を行い、会議は終わった。





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