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413.漂流

 

 追っ手を撒くべく、散り散りになってしまった隊員たちは必死に合流地点である上陸地点に向かった。


 数分後。

 食糧倉庫から逃れて来た隊員たちは、何とか上陸地点付近にたどり着き、全員が無事合流。

 合流できた皆は安堵の表情を浮かべていたが、最初にここについていたアランドロス大佐の表情だけは険しかった。


「みんな、あれを見るんだ」


 アランドロス大佐が指さす先には帝国軍兵士達だけでなく、先程襲ってきた人ではない何かが蠢いていた。

 死体を隠したときの小屋に人気がある事から、彼らは周辺に襲ってきた連中がいる事に気付いているというのがわかる。


「きっと、彼らはさっきの戦闘音も聞いて俺達を探し回っているんだろう」

「しかも、あれでは上陸地点に置いてきたゴムボートにも近づけませんね」


 逃げる為のボートに乗る為には敵が集結している中を突破しなければならない。


「ああ、しかも、さっきの食糧庫で艦隊と連絡を取るための通信機も破壊されてしまっている。これでは救援も呼べない」

「さらに両側からも敵が迫ってきています、ここは正面突破するしかないですね」


 浜と城壁に沿うようにある道には他の奴らがこちらに近づいてくる様子も見られる。

 まるでチーム3を追い込むように。


「どうやら我々は奴らに追い込まれてしまったようだな。……強行突破するしかないな」

「そのようですね」

「良し、お前ら覚悟はいいか?」


 逃げ場がないと判断したアランドロス大佐はボートがある場所まで強引に突破することを決意。

 アランドロス大佐の言葉を聞いた隊員たちも覚悟を決め、その言葉の返事の代わりに持っていたHK416に着剣していた。


「アランドロス大佐、皆、準備出来ております」

「俺に続け!行くぞ!突撃ぃぃ!!」

「「「うおーーーー!!」」」


 隊員たちの準備が終わった事を確認したアランドロス大佐は合図を大声で発し、自らが先頭に立ち敵集団に向けて走り出す。

 アランドロス大佐の背中を追うようなかたちで、隊員たちは雄叫びを上げ走り出した。


 食糧倉庫での戦闘でメインウェポンの弾をかなり消費してしまっていたので、白兵戦に移る前に残弾を全て使い切ってしまい、白兵戦に移ってからはハンドガンや着剣した銃を振り回して戦闘を行った。


 白兵戦になってからは彼らの人数差に押されてしまい、3人が負傷してしまったが何とか敵を倒しながら道を切り開き上陸地点までたどり着いた。


「アランドロス大佐!ボートがありません!」

「なんだと!」


 命からがら浜にたどり着いたかと思えば、頼みの綱であったゴムボートがなくなっていた。


「隠しておいてもダメだったか……」

「アランドロス大佐!ここは飛び込むしかありません!」


 サブリーダーはボートがなくなったとしても海へと逃げるしかないとアランドロス大佐に迫った。


「そうだな、皆このコードをどこかに巻き付けろ!海に飛び込むぞ!」

「「「「了解」」」」


 これ以上ここにいても犠牲者を出すだけだとそのサブリーダーの意見をのみ、隊員の背中に背負っていたパラコードで皆をつなぎはぐれないようにしたうえで、海へと身を投げた。




 翌日


 海に身を投げてから彼等は目標であった第11艦隊がいる場所までたどり着けず、漂流していた。

 見渡すとはるか遠くに小さく艦が見えている。

 どうやら海流によって予想していた地点よりはるか先にまで流されてしまっていようだ。


「おい!みんなしっかりしろ!味方の艦はあそこにいるぞ、踏ん張れ!」

「もう少しだ!」


 アランドロス大佐や元気のある隊員たちはそういって近くにいる味方を励ます。

 しかし、いくら精鋭部隊の隊員とはいえ、夜の激戦の後、ほぼ一日中寝ずに海に浮いていることもあって、疲れている様子だ。

 戦闘時に足に重傷を負った隊員は衛生兵の持っていた担架とペットボトルで作った応急的ないかだにあおむけの状態で乗っている。


「「「はいっ!」」」


 それでも隊員たちは今も気力で持ちこたえ、皆元気なようにふるまっている。



 しばらくすると、回転翼機の特徴的な飛行音が聞こえて来た。

 音に反応した隊員たちはすぐに空を見回し、対象を探し出す。


「アランドロス大佐!あれを!」


 そこには編隊を組んで飛んでくるCH-47の姿があった。


「味方のヘリだ!おい!発煙筒をつけろ!」


 それをみたアランドロス大佐はすかさず味方のヘリにこの場所を知ってもらう為に、隊員に救助信号用の発煙筒をつける。

 その発煙筒の煙に気付いてくれたのか、編隊の一部がこちらに飛んできてくれた。

 その様子を見て隊員たちは大喜びをしていたが、アランドロス大佐だけは静かに眺めているだけだった。


「やったぞ!これで俺達は助かる!」

「いや、そう思うのはまだ早そうだ」


 しかし、近づいてきたヘリは助けてくれるのかと思いきや、そのままヘリは陸地の方へと飛んで行ってしまった。

 アランドロス大佐が静観していたのはこのことを予想していたからだ。



「アランドロス大佐、我々は見捨てられたのでしょうか?」

 ヘリの編隊が去っていくのを見て、一番重傷で体力が消耗しかなり悲観的になっていた隊員がぼそりとつぶやいた。


「いや、そんなはずはない、必ず助けに来てくれる。あれは海兵隊のヘリだから今頃近くにいる海軍艦艇に救助要請をしてくれているはずさ。もう少し頑張れ!」


 それから十数分後。

 周囲を警戒していた第5遠征打撃群所属のイージス巡洋艦レイク・シャンプレインが駆けつけ無事チーム3は救助された。


 ただ、残念なことに収容された時にはいかだに乗っていた重傷の隊員1名は救助が来た事に安心して力が抜けたのか、そのまま息を引き取った。



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