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410.帝国の新たな一手

 

「は、はい、では……。まず一つはコンダート王国海軍に最新鋭の軍艦が就役したことです」

「就役?それがどうしたっていうの?」

「ええ、それが我々にとってかなり脅威になる軍艦でして、報告によるとその軍艦はまるで小さな島ほどある巨大な軍艦だそうで、なんでもその軍艦はこれまでにないほどの大量の飛行機を運用することが可能のようで、さらに巨大な砲が何基も装備されているようです」


 これまでも帝国海軍はコンダート王国海軍の次々繰り出してくる最新鋭艦に対して幾度となく惨敗を喫してきたが、今回就役したコンダート王国海軍の最新鋭艦はそれらをはるかに超える巨大艦で、王国海軍はこの巨大艦でこれまで以上に激しい攻撃をしてくるとみていた。


「それはかなりの脅威ね。やはり正攻法では奴らには勝てないってことよね。それともう一つは何?」

「ええ、もう一つはその最新鋭の軍艦が無数の軍艦を従えて我が国の東と南両方に向かってきているという事です。恐らく王国海軍は沿岸の都市を海から攻めるはずです」

「ついに、海からも来たのね。それで?海軍はなにやっているの?」


「はっ、海軍は最近就役させた軍艦と寄せ集めた船で艦隊を組ませ既に迎撃に向かっています!」

「あんた、バカなの?エンペリア王国海軍ならともかく、コンダートの奴らの巨大な軍艦にそんな正攻法で勝てるわけないでしょ?」


 レレーナは軍務卿がこれまで帝国海軍がほぼ無抵抗でやられてきた事を全くわかっていない命令をしたと思い、激怒する。


「いいんです、お母さま、それは私が命じたことですわ」

「ディエナ、あなた一体なにを考えているの!」


 その言葉に怒りが頂点に達したレレーナは、さらに大声でディエナに怒鳴る。

 しかし、ディエナは怒り狂う母に感情的にならず、努めてゆっくりと静かに話す。


「大丈夫です、私の“計画”の為には必要なことなのですわ。それとある作戦も用意しているので心配ありませんわ」


 レレーナはディエナの言う“計画”という言葉を聞いた瞬間、これまでの怒りは嘘のように消え失せ、冷静さを取り戻していた。

 それほど“計画”というのが重要でかなり有効的なのだという事がわかる。


「そ、そう。後は上陸してきた敵をどうするかね」

「それも心配いりませんわ、もうすでに命じておりますもの」

「どういう命令を下したの?」

「上陸してくるであろう場所に“住民”を逃がさず留めて置く事ですわ」


 ディエナは予めコンダート王国軍がとる行動パターンの情報を得ており、それをもとに王国軍が簡単に攻めてこれないよう、残酷ではあるが住民を盾として利用するように命令を下していた。それに加えてとあるものの使用も命じていた。


「あんた、それ……」


 当然レレーナは娘の考えに絶句してしまう。


「これで彼等は攻めることも遠くから攻撃することもできなくなりますわ」

「そ、そう。あんたがそういうならいいでしょう」


「し、失礼します!」


 息を切らしてやって来たのは、いかにも魔導士が着そうなローブと帽子をかぶった白髪の男だった。


「何事?」

「遅れて申し訳ございません、ようやく報告書が出来上がったもので」


 白髪の男の両手には大事そうに分厚い報告書を抱えていた。

 彼の目の下に隈が出来ていることから報告書を書くことに相当苦労したことがうかがえる。

 しかし、部屋の中にいた大多数はそんな彼の努力などどうでもよく、話し合いの途中に現れた彼に怒号を浴びせる。


「陛下の御前であるぞ!無礼者!遅れてくるとは何事だ!」

「即刻この場で首を刎ねてしまおうか!」


 激昂した一人の軍人は腰に佩いていた剣を勢いよく引き抜き、慌ててやってきた男の首に刃を当てる。


「ひぃっ!」


 当然刃を首に突き付けられた男は短く悲鳴を上げたかと思うと、少しのけぞった状態で固まってしまう。

 彼は死を悟ったのか目をゆっくり閉じその時を待つ。

 そして、軍人は不届きものの首を斬るべく剣を振り上げた。


「やめたまえ!」


 剣を振り上げ今にも斬りかかる直前。

 それを制止する声が上がる。


「陛下の御前であるぞ!貴様こそ場をわきまえよ!」


 制止すべく声を上げたのは陸軍元帥兼軍最高顧問を務めるハルト・アルセウスだ。

 アルセウスは齢70なのだが、彼の纏う覇気のようなものがそれを感じさせない。


「しかし!」

「しかしではない!これは命令だ!」

「……、し、失礼いたしました」


 それでもなお食い下がろうとする軍人をアルセウスは一喝し、黙らせた。


「陛下、見苦しい所をお見せしてしまい申し訳ございません」

「いいの、これは私が終わったら来るようにと命じていたことだから。エスタダ話してちょうだい」

「はっ、では早速」


 エスタダと呼ばれた白髪の男はディエナに促され報告を始めた。

 対王国用に発明していた魔法というのは超長距離誘導魔法というもので、対地対空対艦の三つに分かれる。

 対地誘導魔法と特徴として目標上空で加害半径が2kmにも及ぶ爆風を浴びせる事が可能で、対空は誘導性能が高く王国軍の戦闘機に追いつけるよう速度も音の速さの2倍出すことが可能でさらに急制動にも対応できるようになっている、そして対艦用は戦艦等といった固い装甲を突き破れるように貫通力が高くなっている。


 これら三つの魔法に対して最終試験では実弾で迎撃行った結果。

 魔法自体を一切止めることも誘爆させることもが出来なかったので、魔法を使わず実体弾だけで戦う事が多い王国軍にとってかなり脅威になる事は間違いないだろうとされている。


「これを既に前線に向かった魔導兵に伝授してあるので、この後の戦闘で一時的に王国の優位に立てることでしょう」

「これなら間違いないわね、よくやったわエスタダ」

「はっ、お褒め頂き恐悦至極でございます」


 こうしてこれまで苦しめられてきた帝国軍であったが、この画期的な魔法の開発によってようやく反撃の狼煙を上げる事が出来た。


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