402.ヤクトブルグ城塞都市陥落
「それと、リレイ、ヤクトブルグ城塞都市内の情報はどうなっている?」
続いて、ウィンストン大将は籠城する帝国軍についての話題に触れた。
「今、潜入しているブラックベレーの情報によれば、城塞都市内には住民はおらず、門の守備兵とわずかな帝国軍兵士が町を巡回しているのみだそうです」
リレイは少し前に城塞都市内部の情報を得る為、陸軍特殊部隊である“ブラックベレー”を潜入させていた。
住民達が暮らす区画はかなり閑散とした様子になっているようだが、肝心なヤクトブルグ城は依然として数百人規模の兵によって守られているようだ。
「では、もう簡単にヤクトブルグを落とせると?」
「いえ、これには続きがありまして、ブラックベレーの情報によれば、ヤクトブルグ城塞都市直下には地下避難施設と地下軍事施設がもうけられていて、そこに避難した住民と兵達がいることが確認されています」
「なるほど、これは恐らくわが軍の空爆と砲撃を恐れ、被害が出ないように地下に避難させたという事だな。彼らが今後取りそうな作戦として一つ、わざと王国軍を攻め込ませ、町の中心部まで入って来たところを地下と城から出て来た帝国兵によって挟み撃ちを仕掛けるという事も考えられるな」
「そうですね、その作戦も有り得ます。ただ、もう一つ情報が入ってきていまして、先程お伝えした地下に避難している兵達とは別の地下空間に、どこからか連れてこられた奴隷たちが約5千近く集められていて、さらに同じ場所には増援部隊が約2万集結しています。その集結した勢力は武装しこちらに突撃する様子を見せているそうです」
「これから考えられるのは、恐らく、帝国側はその奴隷を肉壁にしながら増援にやって来た兵達がこちらに突撃してくるという事だな……。それは不味い、すぐに警戒している兵を陣地に戻らせて、迎撃の準備をとらせろ!」
「おい!通信兵!」
兵達に命令をつたえる為、リレイは通信兵を呼びよせた。
ウィンストンの命令が兵達に通達され、すぐに防御陣地へ戻る事小一時間後。
彼の読み通り敵は一斉にこちらに雄叫びをあげながら突撃して来た。
ウィンストンとリレイは指揮所にあるモニター画面に映る敵の様子と今も絶えず上がってくる報告によって、敵情を分析していた。
「やはり来たか、流石に今回が最後の攻撃になるだろう。この突撃を撃退できればようやく城塞都市を落とすことが出来る」
「ウィンストン閣下のおっしゃる通りこれが最後の突撃になるのは間違いなさそうです。ブラックベレーの情報では『城塞都市内及び地下施設の敵極少数』と上がってきているので、間違いなかと」
「とはいえ、油断するな、帝国はまだ何かを隠し持っている可能性が十分にあるからな」
「そうですね、その可能性がないかブラックベレーに探らせてみましょう」
「頼む」




