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401.明らかになった課題

 

 帝国魔法兵と召喚された大量のモンスターによる襲撃から一夜が明け、何事もなかったかのように日が昇る。

 戦闘があった場所に陽が当たると、そこにはおびただしい量の兵やモンスターの死体がそこかしこに散らばっていた。

 その中には王国軍兵士も含まれており、夜が明けた今でも死体の回収が行われている。


 王国兵達は戦闘後数時間の睡眠をとり、日が昇ると共にまたいつ攻めてくるかわからない帝国軍をいつでも迎撃できるように、昨夜壊された陣地の修理や周囲の偵察を始める。

 王国兵達はこれまで連続して襲撃を受けてきているため、睡眠時間も休憩時間も満足にとれておらず、明らかに疲れが見えていた。


 その頃、指揮所では朝から立て続けに昨夜の被害状況や帝国軍兵が使用していた魔法等の報告が上がってきており、情報参謀や後方参謀、またその部下達は忙しそうに動き回っている。

 もちろん、この部隊を指揮するウィンストン大将やリレイも例外ではなく、集計された被害報告を聞くことや今後想定されうる帝国の攻撃の対策案の策定等をしなければならない。


「ウィンストン閣下、リレイ閣下、ご報告です」

「なんだ?」

「まず、我が方の昨夜の人的被害状況に関してのご報告ですが、戦死者514名、戦傷者1250名内軽傷者120名、重傷者1130名。続いて車両等の被害ですが、レオパルド2A6 戦車12両、M2A3 ブラッドレイ歩兵戦闘車5両、ハンヴィー3両となっております。もう一点は第四近衛師団からです」

「続けてくれ」

「はっ、ウルラ殿の救出に向かった際、ネイサンという人物を捕らえ損ねたとのことです」

「そうか、報告ご苦労」


 車両の被害はそこまでひどくなく、ハンヴィーは魔法の爆破に耐えられず完全に破壊されてしまっていたが、戦車や歩兵戦闘車に関しては、履帯破損や衝撃による電子機器の故障や露出している各種部品、一部装甲が破壊されている等といった軽微な被害にとどまっていたため、工兵による応急処置で戦線復帰させている。


 対して人的被害はかなりのもので、その多くが魔法攻撃よる被害であった。

 特に被害が多かったのは戦車隊の丁度前方に位置していた防御陣地だった。

 その場所の被害状況は酷いもので、爆発魔法や風属性魔法にやられたのかほとんど人の原形を留めていない遺体も多かったようだ。


 被害が拡大した一番の原因として、一般兵は現代兵器による装備のみにシフトしすぎたため、魔法に対する防御がおろそかになってしまった事。さらに、兵の多くが魔法にほとんど関わらず知識もほとんどないような徴兵された一般国民という事もあり、そもそも魔法戦に不慣れだという事もこういった被害を拡大させた要因の一つと考えられる。



「魔法に対する脆弱性を露呈させてしまったどころか、帝国にその弱点をいいように突かれてしまったな」

「はい、これまで帝国軍がこちらに魔法による攻撃をしてこなかった事にこちらが油断しすぎていたのも原因ですね、ウルラ殿が以前仰っていた通りでした」


 リレイが言うように、まさにウルラが危惧していた事が奇しくも彼が来たタイミングで実際に起きてしまっていた。

 ここまで被害が及んだ以上、王国軍は再度魔法の有用性を認識しなおさなければならず、さらに、一般兵の魔法防御能力を何らかの形で付与させるか、対魔法戦闘訓練等も取り入れなければならない。

 今後の王国軍、さらに魔法教育機関にとっての大きな課題だ。


「それとリレイ、今回突然魔物と帝国軍兵が現れたと報告では上がってきていたが、原因はなんだ?」

「はい、まず帝国兵が急に現れたという点についてですが、現地の調査を行った結果、魔法によって隠された地下通路から地上に出た事によって、わが軍が予想していなかった場所から出現したように見えたというのが真相です」


 これは、魔法化歩兵師団に所属する専門の兵によって明らかにされた事で、魔法の使えない一般人が一見しただけでは何の変哲もない地面のようにしか見えないように魔法で結界を張られていたようなのだ。


「さらに魔物の出現についてですが、これらは帝国軍に所属する上級召喚士が魔物を大量に召喚したからだそうです。これは現地に残されていた召喚士の死体から明らかになっています」


 ウルラによれば、あそこまで強力で巨大な魔物を大量に召喚するにはかなりの魔力量と知識が必要のようで、帝国の魔法教育や研究がいかに進んでいるかが垣間見えたそうだ。

 さらに続けてウルラは「今後本気で魔法研究や魔法教育を進めてもすぐに追いつく事は難しいが、早急に進めねば今度は魔法を使った帝国による猛攻が始まったら防ぎきれず、侵攻中の王国軍が本国に押し戻されかねない」と警鐘を鳴らした。


「今回は念のためという事でウルラ殿と魔法化歩兵師団の連中を呼んでいたからこれで済んでいたが、いなかったらこれでは済まされないだろうな。下手したら包囲を崩されるところだった」

「魔法の対策を急がせなくてはなりませんね」

「これも早急に本国と各戦線指揮官に情報を上げておかないとな」



 帝国軍から魔法攻撃を受けた今回の戦闘の報告がきっかけとなり、王国軍内部では対魔法戦略や戦術の策定、さらに対魔法研究を加速させるきっかけとなった


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