389.ベンデンの戦い
ベンデンへの攻撃前に、帝国軍側へはこの町を攻撃することを事前に通告してある。
その町に住む一般市民と非戦闘員に逃げてもらう時間を設けるためでもあるからだ。
念のため攻撃開始初日には町の近くに数発砲弾を落とし、こちらが攻撃をするという意思表示と共に最終通告をした。
王国軍としては、これまで自国民に帝国軍との戦闘で被害が出ている分、出来るだけ非戦闘員や一般市民に死傷者が出てほしくないのだ。
偽善者だと言われればそこまでだが、軍に所属していない無防備な人を無差別に傷つける行為はどうにも心に響く。
ベンデンの町の中での戦闘を考えていた王国軍は途中、ほぼ無警戒で町に向かって進軍していた。
情報によれば町を守る帝国軍は200名程度という事があったので、この時王国軍側は敵の戦力を過小評価していた。
そんな中、街の手前丁度切通しのようになっているところに差し掛かった時。
突然雄叫びが上がったかと思うと、両側から弓矢や投石、新型銃と思われるもので攻撃された。
「グハッ!」
「ウグッ!」
ほぼ無警戒だった王国兵に次々と帝国兵が放った矢や銃弾が直撃し、死傷者が多発した。
ほんの数分で十数名が死傷してしまった。
突然のことに王国側は狼狽し、混乱していた。
「敵襲!敵襲!」
「敵はどこにいる!?」
この時帝国兵達は崖に近いような丘の上に塹壕を掘って、そこから上半身だけを出して攻撃してきており。
さらにここら辺一帯は樹木が生い茂っていることもあって、容易に敵の位置を特定できずにいた。
「衛生兵!衛生兵!」
「車両を盾に後退しろ!」
「戦車隊!攻撃開始!目標は曳光弾で示す!」
「各個射撃開始!」
王国側は混乱の中でも何とか、兵を落ち着かせ戦局の安定を図る。
一先ず敵が見えない以上は効果的な攻撃が期待できないので、戦車隊の機銃や砲撃によって牽制する。
暫くして戦車が放った砲弾が数発着弾し、着弾地点に土煙が上がっていた。
「退却!退却!」
そのまま王国軍は一旦体制を整えるため退却した。
退却する王国軍の姿を見た帝国兵は大きく湧いた、これまで煮え湯を飲まされてきた帝国軍にとって王国軍の退却していく様は気分がいいだろう。
一旦撤退した王国軍は一度偵察部隊を送り込みある程度敵の陣地の情報を得たのち、歩兵を後ろに下げ、戦車部隊や歩兵戦闘車を前進させ、戦車の主砲や後方から重迫撃砲で徹底的に砲撃する作戦に切り替えた。
王国軍のこの動きに対して、帝国軍は塹壕とは別に用意していたのトンネルに隠れやり過ごす作戦を取った。
ほとんどの兵がこのトンネルのおかげで難を逃れたが、逃げ遅れた兵や司令部に死傷者が出てしまっていた。
その後数日間にわたって、帝国軍の塹壕や林等地形を存分に生かしたゲリラ戦術を取り王国兵を疲弊させ、同時に足止めすることに成功していた。
ハミルトン統合基地内
「まだ、ベンデンの町は落とせないのか!」
数日間にわたって膠着した状況が続き、全く進展の見えないことに苛立ちが募っていたガレア・ウィンストン大将は声を荒らげ、報告に来た部下に対して怒鳴り声を上げていた。
「ええ、依然としてベンデンの町周辺にて敵の抵抗にあっており、町を占領出来ていないのは事実です」
「空軍は何をやっている?」
「空軍は町の近くという事もあって、無用位に空爆が出来ない状況ときいております」
さらに空軍は樹木に遮られ視界が不良という事もあって、同士撃ちを懸念して近接航空支援も渋っているようだ。
「……やってしまえ」
「閣下、それは……」
「よい、もう数日も経っているのだ、ナパーム弾を大量投下して林ごと燃やし尽くせ、その前に前線に出ている全部隊を再度前哨基地に収容せよ。これ以上時間をかけては全体の計画が崩れてしまう。すぐにやれ、異論は認めん!」
「はっ!」
「それと、シエルを前線から下げてガレア北検問所の留守役にでもさせるんだ。もう彼女は十分にやった、これ以上はシエルにとって精神的に負担をかけるだけだ。あとはリレイ大将とベル少将がいれば大丈夫だろう」
「承知いたしました」
従来の攻撃では中々落とせないことを悟ったウィンストン大将は、現在の攻撃を停止させ、絨毯爆撃によって敵を殲滅する作戦に切り替えさせた。
さらに自走榴弾砲での砲撃も追加し、遠距離から徹底的に叩くようにも指示した。
すぐに、その作戦を取ればよかったじゃないかとぼそりといった部下がウィンストン大将の周辺に数人いたが、今回の作戦行動をとるにあたっての全部隊に向けた行動要領に「不用意に民間人を殺害するな」「市街地を攻撃する際には民間人が避難したと確認されてから」という項目があった為、それが出来なかったのだ。
しかし、戦闘開始から数日も経ち、避難する猶予を十分に与えただろうという判断の元、今回ようやく大規模な作戦行動に踏み切ったのだ。
加えてウィンストン大将は、シエル少将が大規模な戦闘に不慣れなこともあって、判断がうまくいっていないと判断し後方に下げる事にした。




