387.帰郷
カルロゼ北検問所を越えた先の一番近い帝国の町
こちらへ向かってくる帝国軍をガレア北検問所から北側に少し進んだところにある、ベンデンという町の近くの平原で向かえ撃つことが既に立案されていたので、それに従いシエル少将は自身の配下である第3山岳師団を前進させていた。
ベンデンの町の周辺は丘陵地帯になっており、かなりアップダウンの激しいところが多く、見通しが悪い。
その為、師団を前進する際に常に偵察を放って警戒する必要があった。
シエル少将の部隊に加え、今回の主力となるベルキア・リレイ“大将”の北部侵攻戦車軍とヘカーテ・ベル少将の近衛第4師団が増援としてやってきていた。
ベルは
新たに編成された北部侵攻戦車軍とは、本作戦の主力となるために臨時に編成されたもので、隷下に12個の機甲師団(1~12)と、さらに近接航空支援戦力として陸軍第121航空隊を、随伴歩兵として4個機械化歩兵師団を配した軍になっている。
この指揮を任されると共に戦車軍司令官となったリレイは、大将に昇格していた。
リレイは定時連絡と今後の予定のすり合わせを行うため、シエル少将がいる第3山岳師団の仮設指揮所に足を運んでいた。
「久々だな、我が故郷」
乗って来たハンヴィーから降り立つと、リレイは周りを懐かしそうに見渡しながら、ぼそりとつぶやく。
元は帝国出身の彼女は、此の地に久々に来て懐かしいと思う気持ちと同時に、侵略者としてこの地を踏んでいるという実感も沸き、非常に複雑な思いがこみ上げ、表情もその思いとリンクしたかのように曇らせていた。
「リレイ閣下が入られます!」
「起立!敬礼!」
リレイが指揮所となっているテントに入ると、シエル少将の掛け声と共に師団の幕僚や通信兵たちが一斉に立ち上がり出迎える。
中に入ると、リレイもそっと答礼する。
今日のリレイはハミルトン城近くの平原で戦車に乗って突撃したときと同じ黒い士官服を着用し、金色の意匠が施された黒い制帽をかぶり、金色の長い髪は団子上に結って付け根に黒いリボンをつけていた。そして腰には愛用しているP226がホルスタに収まっている。
「楽にしてくれ」
「はっ!着席!」
部下が一斉に座る中、シエルだけは敬礼した状態でリレイを見つめたまま固まっていた。
そんなシエルを見てリレイは不思議そうに見つめ返す。
「ん?私の顔に何かついているのか?」
「……」
リレイは固まったままの彼女に問いかける。
しかし、目を爛々と輝かせこちらを見る一方だ。
その周りにいる幕僚たちは、普段見かけない上官の様子を見てどうすればいいのかと困った顔をしながら、お互いの顔を見合わせていた。
「おい!どうした?シエル少将?」
「はっ!失礼いたしました。つい凛々しくもお美しい姿に見とれてしまいまして……、ハハッ、私は何を行っているんでしょうね……」
「私のどこが美しいというんだ?」
「何と言いましょうか……、その……」
その問いかけにシエルは急に少し恥じらいを見せながらもじもじしはじめた。
リレイはそんな彼女の様子を見て、身の毛がよだつ思いをした。
(この子、もしかしてそういう……)
「ま、まぁ、よい。とにかく座れ」
「は、はい!」
シエルに慣れない視線を送られ落ち着かない様子のリレイは、一先ず彼女を座らせる。
リレイの言葉に素直に応じ、シエルはすぐに座り最初の状態に戻っていた。
ようやく最初の状況に戻り、リレイはホッと胸をなでおろす。




